第3話 買い物の今とあの頃
「……やっぱり安売りの時を狙うべきだよな」
数分後、俺は近所のスーパーまで来ていた。駅近な上にそれなりに大きく、ショッピングモールも併設されているために利便性も高い。だから、お客さんの数も多いし、俺も利用する機会は結構多いのだ。
「さて、安売り商品以外には何を買うかな。安売り商品で残りの二食を作る事にするとして、他には保存食とか……」
カゴを取りながら独り言ちていたその時、俺の脳裏に当時の様子が浮かんだ。
「……そういえば、今はこんな風に普通に買い物が出来るけど、あの時って買い物すら満足には出来なかったよな」
震災直後、各家庭でも飲食物は不足気味になっていただろうが、それはこういったスーパーや小売店でも同じようだった。当時、俺は家族と一緒に当面の飲食物を買いにこことは違うスーパーに行った。
そのスーパーは24時間営業をしているところで、当時の家から近かった上にそこそこ大きかったため、そこに買いに行く事にしたのだと思う。けれど、そこで見たのは想像していなかった非日常だった。
当然のようにスーパーは停電していて暗かった上に電気で動くレジが稼働していなかった事で外で会計をする光景が広がり、商品なども個数制限がなされていた上に屋内にあったはずの商品達も外に出されていた。
当然、買える商品の種類も少なく、同じように買いに来た人の数も多かったから満足に買えたわけではない。けれど、買い物が出来る事、それ自体がありがたく、その買い物が出来たからこそ今もこうして生きていると言っても過言ではない。それだけやっぱり買い物が出来るのは良いことだったのだ。
「忘れがちだけど、こういう店がある事や店員さんがいる事って大事だよな。どっちかだけあっても成り立たないし、ほんとに感謝だよ」
そうして買い物をしていた時、ふと俺の目には花屋が映った。
「花、か……そろそろ代え時だよな」
呟いた後、俺は買い物を早々に済ませて花屋に向かった。そして買い物袋を持ったまま俺は一先ず家に帰る事にした。もう片方の手に菊の花束を持ったままで。
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