第2話 通信の今とあの頃

「さて、どこに行こうかな」



 後片付けや着替えを終えて外に出た後、俺は鍵を閉めてから独り言ちた。色々比較する事にはしたが、俺が住んでいるのはあくまでも内陸の方だから実際の被災地がどのように戻っていったかは正直ニュースくらいでしか知らない。だから、自分が行ける範囲でしか比較出来ないのだ。



「こういう時こそ携帯電話の出番だな」



 服のポケットから携帯電話を取り出した後、俺は画面をスワイプしてどこかよさそうな所がないか調べていたが、その最中にふと気づいた。



「……そういえば、あの時って通信手段も満足に無かったよな」



 今や生活の必需品になっている携帯電話だが、あの時はまだガラパゴス携帯と言われる物が主流だったのもあり、正確な災害情報も中々得られなかったと後々聞いた事がある。


 その当時、俺はまだ携帯電話を持っていなかった。周りは持っていて自分は持っていないという状況に対して当時の俺はあっても良いかなと思っていても別に不便だとまでは思わず、高校三年生の終わり頃まで持つ事はなかった。


 けれど、今になって思えば、携帯電話は持っていた方が良かったのだろう。満足に災害情報も得られない上に他の人との連絡も中々出来なかった状況ではあったようだが、災害用伝言ダイヤルというサービスを使って安否を伝える事だって出来たのだから無いよりはある方が良かったのかもしれない。



「昔の自分に言いたくなるよな。いらないと思っても携帯電話は持っておけって。まあ持つのは良いけど、月額料金は自分で払えって言われてたから持たなかったのもあるんだけどな。まったく……当時高校生な上にバイトが卒業見込みまで許されてない息子にそんな事を言うなんて本当に……」


 そこまで言ってある事を改めて実感し、気持ちが軽く沈むのを感じた。けれど、道の真ん中でただボーッとしているのは良くないため、携帯電話でささっと調べ物をし、俺はゆっくりと歩き始めた。心の奥底に沈んだものから目を背けるように。

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