別れ、旅立ち、出会い

そうして数日が経ち、遂に旅立ちの日が来る。じん達はフィルロッテに別れの挨拶をしに行く。

「───ではフィルロッテさん。今までお世話になりました」

深くお辞儀をするじん

「お世話になりました!」

「お、お世話になりました...!!」

じんの後にそらとテイはお辞儀する。

「いえいえ、こちらこそありがとうございました」

フィルロッテはそう言いながらお辞儀をする。数秒後頭を上げ、笑顔になり

「私が門までお送り致しますよ」

そうフィルロッテはじん達に言う。

「ではお言葉に甘えさせていただきます」

するとそらは勢いよく頭を上げ

「行こ!テイ!」

とテイの手を引っ張る。

「は、はい!!」

「あの人はいつも元気ですね」

そうフィルロッテはニコニコしながらまるで孫を見るように言う。

そらは、昔からあんな感じなんですよね...。無邪気でお転婆で...。目が離せませんでした」

フィルロッテとそんな事を話しながら門へと向かう。


「───ところで次の目的地はあるのですか?」

フィルロッテはそんなことを聞く。

「あー...そうですね...ここから1番近い国ってどこにあるか分かりますかね?」

(土地勘がないのに無計画に出ていくところだった...危ない...。)

冷や汗をかきながら聞くと、フィルロッテは考える

「そうですね...ここから1番近い、となると門を出て、左をずっと真っ直ぐ行くと、国に着くと思います。」

と、まるでタクシー運転手ばりの丁寧な説明を受けるじん

「なるほど...」

(結構簡単な道だな...)

「ただ...」

そう言った瞬間フィルロッテの顔が曇る。

「ん...?」

(ただ...?)

「モンスターがとてつもなく強いです。」

と苦笑いをするフィルロッテ。

「...そうですか」

強いモンスター出るのかぁ...と深く絶望するじん

「1番近い国。で言うならその国ですが、次向かうべきの国、であれば...んー、そうですね...ウシャグスと言う国ですかね」

「ウシャ...グス...」

(ふむ...うん。当たり前だが聞いたことがない。)

「そのウシャグスとは何処にあるんですかね?」

そう質問すると、フィルロッテはすぐに答える。

「先ほど説明した国とは真逆の方向ですね。門を出て右側にあります。」

と話していると、門前に着く。

「ウシャグスは、基本的に初心者の冒険者が多い国ですので、じん様達も安心して良いと思います」

フィルロッテは笑顔でそう言う。

「次の国決まったのー?にぃ」

そうそらじんに問いかける。

「ウシャグスって国に行くぞ」

「はーい!!」

「ウシャグス...どんな国なんでしょう...」

「気になるねー!」

そう2人がワクワクしている。が、ふとフィルロッテの言葉に引っかかるじん

(ん...?待て。ウシャグスが初心者の冒険者が多い国なのであれば、いわばその国はチュートリアルの国ってことだ...だが、俺たちが転生してきたのはこの国...。そして1番近い国は敵がとてつもなく強い国...この街って中級者が妥当レベルなんじゃないか...?)

と言う結論になり、フィルロッテに話しかける。

「も、もしかしてここで初めて冒険者受ける人って、とてつもなくレアですかね...」

冷や汗をダラダラと流すじん

「え、はい...そうですね...。とてつもなくレア。と言うより、限りなく0に近いですね。」

キョトンとした顔で言うフィルロッテ。

「...Oh」

膝から崩れ落ちるじん

(それなら合点が行く。ここら辺に冒険者が来ることが無いこと。初めの街にしてはやけに物静かな国な事。そして何より王が居ないこと。)

「...なるほどなぁ...」

(今更初心者の冒険者が集まる国に行ったってなぁ...いやまぁ...ここより栄えてるなら何か売ってるかもしれないから、それ目当てで行くか...。)

そう思いながら立ち上がると。

「どうしたの?にぃ」

「何かあったのですか...?」

そう2人は聞いてくる。

「とりあえずウシャグス行くか...」

としょぼんとした顔で2人に言うじん


「では、私の最後の贈り物をさせていただきます。」

(え?最後の贈り物?)

「ウシャグス行きの馬車を贈らせて頂きます」

「馬車だぁああ!!!!」

「す、凄い...」

2人は超絶笑顔になる。が、じん

「...どれだけ用意してるの...フィルロッテさん...」

とドン引きする。

「ウシャグスは遠いですからね...この馬車に乗って行ってください。」

フィルロッテはいつものように笑顔でそう言う。

(こんなんに乗ったら、只者では無いって思われるでしょ...まぁ親切心を無下にできないし乗るけど...)

そう思いながら乗ろうとすると

「早く乗ろー!にぃ!」

「凄い...!!」

「って、もう2人乗ってるし」

と何故かもう乗っているそらとテイにツッコミを入れる。

「では御三方、この数日間誠にありがとうございました」

そう言い、深々とお辞儀をするフィルロッテさんを背にこの街から離れていく。


「馬車なんて初めて乗ったかも〜!!」

「テ、テイもです!!」

2人は初めての馬車に興奮している。

(ほんと、似た者同士だな...)

興奮している2人を見てそんな事を思うじん

「次の国楽しみだねー!テイっ♪」

「はい!!楽しみです!」

ニコニコ笑顔の2人を見て思わず

「ふふっ」

と笑ってしまうじん

「何笑ってるのー!」

眉をわざとしかめながらそらに聞かれる。

「いや、会話が可愛いなって思って」

思ったことを言うじん

「...会話が可愛い?」

「そ、そうなのですか?」

何処に可愛い要素があったのか分かっていない2人。

「いや、分かんなくていいよ」

じんは優しい顔でそんな事を言う。

「そっか!じゃあいいや!」

「え、いいのですか!?」

「うん!」

「にぃが分からないのならそれでいいの!」

テイにそんな事を言うそら。そうなんだ...とテイも納得する。そんなほのぼのとしたことをしていると、突然馬車が止まる。

「お...?」

「急に止まったな...」

「何かあったのですかね...」

変に思い、馬車の扉を開け前を見ると、盗賊に襲われている馬車があった。

「見るからに大丈夫じゃなさそうだな...!」

「うん!そうだね...!」

「わっ!?お、お2人共!!」

喋りながら前へ向かう2人。そしてその後を追うテイ。


「っへへ!この娘、やっぱ金目のモン持ってたなぁ!?」

ナイフを持っている1人の盗賊はニヤニヤとした顔でネックレスを手に取る。

「...っそれは!!」

と、捕えられた子は盗賊が取ったネックレスを取り返そうとするが、別のガタイのいい盗賊に抑えられる。

「大人しくしなぁ...お嬢ちゃん」

「おっと...危ねぇな...?」

そう言いながら、ネックレスを持っている盗賊は高貴そうな子に顔を近づける。

「それだけはダメなの...」

その捕えられている子は悲しい顔でそう盗賊に言う。すると盗賊は

「...交換条件だな...俺らの奴隷となるならこのネックレス返してやろう...ならないのならこれは俺らのモンだなぁ?」

と条件を突きつけてくる。

「そんな...」

その子は絶望する。しかし続けて盗賊を喋る。

「奴隷になる?ならない?どっちだァ!?」

盗賊はその子の目の前でそう叫ぶ。

「わ、わたくしは...」

迷っていると横から人が飛んでくる。

「なる訳ないでしょッ!!」

そして、そのネックレスを持っていた盗賊を思い切り蹴り飛ばし、遠くへ吹き飛ばす。盗賊は痛みのあまり、ネックレスを離し、そしてそらがそのネックレスを取る。

「...えっ」

捕えられた子は呆気にとられていると

「はい、これ!貴女のネックレスでしょ?」

満面の笑みでネックレスを渡そうとする。が。

「あ、ありがとうご───」

「おい、仲間に何してくれんだ小娘...」

まだ残っている盗賊がブチギレる。

「っ!!」

その盗賊を見、怯える女の子。

「...は?何?ガタイがいいだけのけがらわしいオッサン。悪いのはそっちでしょ?何制裁されてキレてんの?頭お花畑?」

と、先程とは真反対の表情をするそら。どうやら相当ブチギレているようだ。

「お前...早すぎだろ...はぁ...はぁ...」

「大丈夫ですか...?じん様...」

そうこうしている間にじんとテイが到着する。

「お前、あいつの仲間か?」

盗賊が聞くと

「...だから何?」

とずっと嫌悪感ダダ漏れのそら

「ふっ、見たところ弱そうだな...さっきのはまぐれだろうし、あの男もヒョロいしな。殺すのに時間はかからねぇ...」

盗賊がそんな事を呟くと

「...今、にぃ、殺すって言った?」

「ヒッ」

瞳孔が完全に開いた状態で盗賊に質問するそら。それに恐怖する盗賊に捕えられた子。

「んぁ?あぁ、そうだ...あいつの方が弱そうだから先に殺すか」

盗賊はニヤッと笑いながらそんな事を言うと、そらの怒りが頂点に達する。

(あ、マズイ...!!)

そら!殺すな───」

そうじんが言った瞬間。そらの拳は既に動いており、じん達がいる場所からそらの所へ向かったとしても間に合わない。

(時すでに遅しだった...)

瞬きもしていない刹那、そらの15発の本気の拳が盗賊に当たり、盗賊は声も出さず吹き飛ぶ。

(そ、そら様を怒らせるとこうなるのですか...!?)

そらに恐怖を抱くテイ。それに怯えるテイの様子を見たじん

「俺達には怒らないから大丈夫だよ〜」

そう言いながらテイの頭を撫でる。

「そうなのですね...なら安心です〜...」

じんに頭を撫でられ、気持ちよさそうな顔をしながら安堵するテイ。


「フシューーー...」

そらの口から蒸気機関車のような音が出る。

「何やってんだ、そら。」

危うく人を殺めてしまう所だった。とそらを怒るじん

「ごめんよぉ、にぃ。にぃを殺すなんてかすから怒っちゃったのぉ...」

そんな事を言いながら涙目になるそら

「だからといって、怒りに身を任せちゃダメだろ...?まぁ、なんとか殺してなかったから良かったけど...」

そらの頭を撫でるじん

「ごめんなさい...。へへへっ...」

反省はしているが、じんに撫でられるのは嬉しいそら

「あ、あの!」

一段落終わったと思い、みんなで話していると、捕らえられていた子がじん達に話しかける。

「どうしたの?」

そらが質問する。

「助けて下さりありがとうございました...!」

と深々と礼をする。

「い、いやいや!私達は当然のことをしたまでで...」

そんな様子に困惑しているそら達。するとその子は

「あの良ければ、次の国までご一緒させてもよろしいでしょうか?」

と言い出す。

「えっ?」

「...どうする?」

「テイはお2人に任せます...!」

3人で悩み、ミニ会議を開く。

「私は別にいいよ!」

ニカッと超笑顔でそらは言う。

「2人が良いみたいですので、同行しても良いですよ」

と納得し、一緒に次の国へ向かうことに。

「じゃあ一緒に乗りましょうか」

そう言いじんは、馬車の扉を開け、どうぞ?3人を先に乗せる。

「あ、ありがとうございます」

「レディーファーストだ!」

「やっぱりじん様はお優しいですね!」

3人がじんに向けて感謝を述べ、馬車に乗り、じんもすぐに馬車に乗る。

「レッツゴー!!次の国ー!」

「おー!」

とこの人もノリノリのようだ。


「ところで、貴女の名前はなんて言うの?」

馬車に揺られながら、ずっと聞いてなかったと思い、質問をするそら

「ゴタゴタしてて聞いてなかったな」

「でしょ?」

いつも通りの絡みをする双子。するとその女の子は喋り出す。

わたくしの名はファルラ。ファルラ・アレキサンドライト・ステラと申します」

自身の胸にポンと手を当てながら名前を言うファルラ。

「綺麗な名前...ですね...」

と思わず言ってしまうテイ。

「あ、えぇと...す、すみません...っ!!」

口に出てしまい、慌てて謝るテイ。

「テイ!!大丈夫!実際綺麗な名前だよ!!」

目をキラキラさせてファルラの手を握りながら言うそら

「そ、そうでしょうか...」

照れながら笑うファルラ。

(...アレキサンドライトはロシア語。ステラはラテン語のはずだが...もしやこの世界は、元の世界にあった言語があるのか...?それとも...いや、だがポジットは聞いた事のない物だしな...。元の世界にないものには新たに作られるのか...?)

深く考えているとそらじんに対して喋り出す。

「ねぇ、にぃ」

「ん?どうした?」

「ファルラ、ちょっと高貴そうじゃない?」

静かにボソボソと喋るそら。それを聞き、ファルラの服を見つめるじん

「...確かにな。宝石類は首飾り、指輪、耳飾りにしかないが、どれも純度が高い。それに靴や衣服が綺麗で整っている。もしかしたら貴族とかの人かもな」

2人は、テイと楽しそうな話をするファルラを見ながら喋る。

「あ、皆さん、こちらを見てください」

ファルラは右手を窓の方へ向け景色を見せる。

「うぉぁあああ!!!」

「すごーい!!」

「綺麗だ...」

その風景は本当にTHE・ファンタジーの世界。地球では考えられない程に美しい空模様。名前の知らない花達。そして遠くに見えるまるで物理法則を無視したような空中都市。その光景を見て、感激する3人。

「あれ...浮いてる...!!」

「どういう原理で浮いてんだ...」

「あ、あそこに変な建物ありますよ!!」

テイは興奮した様子で2人にそう言い、指を指す。

「どこ...?」

そらが言ったその直後に、テイが言った建物を見つける。

「なんだあれ...」

「すごーい!!」

その建物の形は、まるで現代美術のような形をしている。が、とてつもなく遠いのに、じん達が見える高さということは、とてつもなく高く、そしてとてつもなくデカいわけで...。

「あれ...どのくらいデカいんだろ...」

そらはボソッと呟く。その呟きを聞いた瞬間。無言になり、顎に指を当てるじん

「じ、じん様...?」

テイがじんの様子がおかしいと思い、じんに話しかけるが

「しー。今計算してるの」

そらがテイを止める。

「なるほど!」

「...ここからの距離が分からないが、おそらく1500m以上はあるぞ...あれ」

冷や汗をかきながらそういうじん

「せ、1500!?」

そらじんが言ったことに驚くが。テイとファルラは

(そこまで計算が速いことに驚きますよ...聞いて10秒も経ってないですよ...)

じんの異次元なまでの計算速度に驚く。


「ところでウシャグスへ向かうのですよね?」

ファルラが話を切り出す。

「うん!そうだよ!」

満面の笑みで答えるそら。だが、それとは対象に表情が曇るファルラ。

「...ウシャグスに何かあったのか?」

真剣な面差しでファルラに質問するじん。するとファルラはウシャグスについて喋り出すが。

わたくしは、ウシャグスの王。ウィスダル国王の娘なのですが...」

と、王族であることを3人に言うファルラ。その事実にテイとそら

「えっ!?」

「お、王族なのですか!?」

(貴族かなぁとは思ってたけど、まさか王族とは思わなかった...)

と驚くが、じん

「道理で...」

身なりがそうだろうなと納得する。

「実は、数日前に父が何者かに殺されたのです」

「...え」

「そ、そうなのですか...」

じんは息を深く吸い

「そうか...」

と、ため息混じりに呟く。

「ですが...」

ファルラは表情が変わらないまま話し続ける。

「その死因が不可解で」

「不可解...?」

ファルラからそう聞き、疑問に思うじん

「はい...その不可解な点は...いえ、後日わたくしのお城に入ってから話しますね」

無理した笑顔でファルラは言う。そんなファルラに対して頷くことしか出来ないテイとそら

「そうだな。折角ウシャグスに初めて行くんだ。重い空気のままじゃダメだろ?」

ほんのりと優しい顔になるじん

「そうですね!」

「にぃの言う通りだ!!」

じんに言われ、テンションを戻す2人。すると

「...あ、もうそろそろ着きますね」

ファルラは外を見てそう言う。気になり3人は外を見る。

「すごい...」

「超でかい城がある!!!」

「かなり栄えてる国だな...」

各々がウシャグスを見て、驚愕する。するとそらが指を指し

「あ!!あれ見て2人共!!あそこに輪っかがある!!」

と超興奮しながらそらは3人に言う。

(何だ何だ?)

そう思いながら指を指している方を見ると、そこには、謎の環に囲まれている建物が見えた。

「何あれ...!」

「どういう原理で浮いてんだ...?」

(まるで、土星や海王星等のみたいな...)

2人が興奮し、じんが不思議がっているとファルラが説明をする。

「あの建物は、この世界に4箇所しかない大魔法学園、ニケロフィア大魔法学園です。周りにある浮いているは、ニケロフィア学園の学園長。マギルヴスさんの魔法。元素魔法によって作られた魔法で、国を守るために発動してます。」

「すごー!!!」

「そんな人がいるのですね!!」

ファルラからの説明で超絶感動する2人。しかしじん

「あのを常時発動しているのか?」

と質問をする。

わたくしが聞いた話では常に発動しているみたいですよ?」

ファルラはそう答えた為、じんは続けて質問をする。

「人力でずっと?」

そう聞くと、ファルラはこう答えた。

「あの魔法は1度発動すると自動化されていて、魔力を全く消費していないと、聞いたのですが...実際のところはどうなのか分かりませんね」

苦笑いでファルラは答えた。

(ファルラも姫とはいえ、知らないことは多いだろうな。いや姫だからか...)

「ありがとう。ファルラ。後は本人に聞いてみるよ」

「いえいえ、わたくしは大したことはしておりません。あ、そうです!」

ファルラは何かを思いついたのか、パンっと手を叩き

「この後、わたくしのお城、そしてニケロフィア学園に訪れるのであれば...」

そう言いながら自身の荷物を探る。すると荷物から出てきたのは、3つのリボン。

「リボン...?」

「これは?」

3人が謎に思っていながら受け取ると、ファルラはこのリボンについて説明する。

「このリボンは、王族が認めた方にしか送らない物でして、このリボンを持っていたらわたくしの国のどこへでも自由に入ることが出来ます。」

リボンの重要さを説明し終わるとそらとテイは

「はえー!!」

「なるほどです!!」

と、リボンに興味津々で目をきらきらとさせる。

「国家公認の人か...。ありがとうファルラ。これで多分、厄介事に巻き込まれないで済むと思う」

じんはファルラに感謝を述べる。

「いえいえ、わたくしを助けて頂いた上に、こうやって送って下さったので当然ですよ」

ファルラは、優しい笑顔でそんなことを言う。そんな中、横でテイとそらがリボンを着けて

「どう似合ってる?」

「とても似合ってます!!可愛いです!そら様!」

「いや〜!へへへ...それほどでも〜」

とイチャついていた。


「っし!着いた〜!!ウシャグス〜!!」

と3人は馬車から降りる。

「ではわたくしはお城に戻ります。」

ファルラはそう言い、馬車に残る。

「ばいばい〜!」

「じゃあまた。」

「ま、またお城で...!」

そう言い3人は手を振る。その3人を見て、ファルラは小さく手を振りながら別れる。じんは切り替えて

「さて、どうするか...」

と2人に言う。

「これからどうする!?テイ!」

「ま、まずは宿探しじゃないですか...?」

超まともなことを言うテイ。

「そうだ、宿を探さないとだな。賢いな、テイは」

そう言いながらテイの頭を撫でるじん。撫でられて、嬉しそうにするテイ。

「かわちぃねぇ...。テイちゃん...」

癒されたような顔をするそら

「よし、宿探すぞ〜」

ポジットを見、荷物がないかどうかを確認。そしてじんは歩き始める。

「ポジット、便利だね!」

「凄いですよね...この魔道具...。」

「重い荷物が無くなるからな...本当に凄いよ。この魔道具。」

3人は魔道具のポジットに再度感激する。するとそらが宿を見つける。

「あそこの宿、良さそうじゃない?!」

「宿と言うよりホテルに近いな」

「凄い高い...。」

「この国の建物、全体的に高いよね。」

と3人は建物を見上げ言う、そして宿の中へと入る。

「うぉぁ〜....」

「凄い綺麗です...」

「これ、ホテルだな...」

宿の中を見、感動していると、どこかでベルが鳴り、メニューボードがじん達の方へ飛んでくる。

「うぉ...なんだこれ...予約者記入...か」

目の前のメニューボードに自身の名前を書く。

「凄ーい!今の魔法!?」

「おそらくそうだ思います...!!」

2人がガヤガヤしていると、宿で働いている人がやってきた。

「当店の宿をご利用いただき、ありがとうございます」

そう宿の人は言い深々と礼をする。するとそれを真似したのか、テイとそらもお辞儀する。

「いや、この時は礼しなくていいんだよ」

笑いながらじんはそう言うと

「あ、え、そ、そうなんですか...!?」

と、とてつもなく動揺するテイ。

「あっはは!可愛いなぁテイは」

そんなテイにそらは超絶笑う。

「そ、そら様もお辞儀してたじゃないですかぁ!」

赤面したテイはそらにそう言うが

「私はしたかったからしたんだよ〜」

むふーんとした顔で言う。

「んむむぅ...」

頬を膨らませるテイ。

「ごめんって〜!テイ〜!ほんと可愛いなぁ〜」

超笑顔のまま、テイの頭を撫でて謝るそら

「許しません」

依然ムスッとしているテイ。その様子を見て、店員さんとの話を一旦やめ、テイを宥めるじん

「まぁまぁ、テイ。許してやってくれ。そらはこういうヤツだから」

とテイの頭を撫でながらそういうじん

「こういうヤツとはなんだ!」

眉をしかめるそら

「こういうヤツはこういうヤツだろ」

じんはジト目でそらを見ながらそういう。

「なんだと!?」

「...っふふふ」

じんそらが言い合いになっていると、テイが笑い出す。

「やっぱり仲良しですね...!」

「当たり前でしょ」

「双子だからね」

じんそらは笑顔でそう言う。すると周りがざわつく。

「...どうしたんだ?」

じんそらとテイに聞くが

「さぁ...?」

「テイにもさっぱりです...」

やはり分からない。

(何かいけない事でもしたのだろうか...。)

と思っていると驚いている店員からこう質問される。

「お二方は双子なのですか...?」

「...えっと、まぁ、そうですね...。」

様子がおかしいことは無視し、肯定するじん。すると店員たちの様子が変わり、急に大忙しになる。その後、店員全員が目の前に並ぶ。

「...えっと?」

「何これ...」

「どうしたのでしょう...?」

3人は困惑していると、店員の1人が喋り出す。

「予言の双子がこの国、ウシャグスに来ていただきました!!」

そう言うと、他の店員が一斉に

「ありがとうございます」

と文字通り息のあった感謝の言葉を告げる。

「???」

「何これ...」

テイとそらの2人は困惑しかしていないが、じんが理解する。

「...なるほど、予言か」

「ねぇ、にぃ。これどういう事?」

そらじんに質問する。が、じん

「まだ不確定要素だから、俺もこの店員さんに聞くよ」

そうじんは言い、店員の1人に質問する。

「予言って言うことはつまり、この国に何か恐ろしいことが起きるということですか?」

じんは真剣な眼差しで聞く。すると店長が

「...その通りです。近い内にこの国、ウシャグスが崩壊すると言う予言が...。」

と衝撃的な事を言う。

「っ!!」

「嘘...。」

2人はその予言の内容に驚愕する。

「崩壊...。その予言が嘘だとは思わなかったのですか?」

続けて質問を繰り返すじん。それに対しまた答える店長。

「最初は半信半疑でした。ですが、予言をしたのがニケロフィア学園、学園長であり大予言者マギルヴス様で...。」

とその名を聞き、瞳孔が動くじん

(マギルヴス...。さっきもファルラから聞いた名だ。それに大予言者だと...?)

そう考えていると、店長は更に衝撃的な事を言う。

「ですが、それを決定づけたのは、貴方たちが来た事。そして先日、予言の1つである国王暗殺が起きてしまった事です...。」

「えっ!?」

「あれって予言だったのですか!?」

2人は更に驚愕する。

「なるほど...。」

(この国には予言があり、近い内にこの国は崩壊する。だがそれは数ある予言の内の一つで、別の予言である国王暗殺は的中した...。)

「なるほど大体理解した。ありがとう店長さん。」

そうじんは言い。続けて

「部屋はどこですかね?」

と聞く。それに対し店長は

「あ、えと...1032号室です」

と答える。

「ありがとうございます。」

そう言うと、じんはそそくさと部屋へ向かう。

「あ、え、え?!ちょ、ちょっとにぃ!!」

「ま、待ってください...!じん様!」

2人は慌ててじんの後を追う。

「どうしたの?そんなに急いで」

そらは様子がおかしいじんを見、そう聞く。

「早く荷物を部屋に置くぞ」

じんはそう答える。その様子に

「な、なんでですか?」

とテイは質問すると

「大予言者マギルヴスに会いにいく。」

真剣な顔でじんは言う。

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