第202話:紗枝にこんな事を言われる……(ヒロ視点)

「え……って、なっ!?」


 紗枝は顔を赤らめながらそんな爆弾級の発言をぶっこんできたせいで、俺の脳は一気にぶっ壊れかけていった。


 そして俺はそのまま膝から崩れ落ちそうになりそうな程に酷く動揺をし始めていってしまった。


「? どうしたのよヒロ?」

「え? あ、い、いや、その……」


 俺の酷く動揺した姿を見て紗枝はキョトンとした表情を浮かべながらそう尋ねてきた。


 俺の頭の中はまだ何も整理がついてない状態だったけど、それでも俺は紗枝を引き留めるべく全力でこう言っていった。


「い、いや、あんなヤツに身体を許そうとするなんて……そ、そんなの絶対に間違ってるだろ!」

「え? 何でよ?」

「だ、だってその……紗枝が幾ら信じた所でアイツは今までずっと不良だったんだぞ!? そ、そんなヤツが簡単に真面目に更生するわけねぇって! 絶対に紗枝の身体目当てで真面目なフリをしてるだけだって! 紗枝は洗脳されてるだけなんだよ! だから早く目を覚ませって!」

「そんな訳ないわよ。雅君は本当に真面目な男の子よ。というかヒロさ……雅君の事を何も見てないクセにそんな馬鹿にしたような事を言わないで欲しいんだけど」


 顔を赤くしていた紗枝は途端にまた冷たい表情に戻ってしまった。そしてそのまま紗枝は冷たい表情のまま俺に向かってそんな事を言ってきた。


「え……い、いや、何でそんな冷たい顔をするんだよ……? お、俺はただ……紗枝のためを思ってそう注意してあげてるだけなのに……」

「そんなのいい迷惑よ。私は他人の言葉を鵜吞みになんてせずに、ちゃんと自分の目で見て判断するって決めてるの。だからヒロになんと言われても私の雅君に対する評価は一切変わらないわ。彼は真面目で優しい普通の男の子よ」

「い、いや、そんなわけないって! アイツは今でも絶対に不良だよ! と、というかあんな不良相手に身体を許そうとするとか、今の紗枝は絶対にまともじゃねぇって! ちゃんと冷静になれよ!!」

「は、はぁ? 私はまともに決まってるでしょ? 急に何言ってんのよ?」

「そ、そんな訳ねぇって! だってアイツには女子生徒を孕ませたって噂あんだろ! 前に紗枝は誤魔化してたけど、その噂だってどうせ本当なんだよ! だからアイツは紗枝の身体目当てで近づいたんだよ! それで紗枝の身体を抱いたらすぐに本性表してゴミのように捨てるに決まってるよ! だからさっさと目を覚ましてあんなヤツとは別れろよこのバカ――」

「……ふざけるなっ!!」

「……って、えっ?」


 俺がそう言っていくと急に紗枝は本気で怒りだして俺の言葉を遮ってきた。


 俺はこんなにも滅茶苦茶にブチギレてる紗枝を生まれて初めて見たかもしれない……。


「え? な、何だよ……何でそんな怒るんだよ……?」

「はぁ? そんなの怒るに決まってるでしょ。というかヒロは何で私の彼氏に対してそこまで酷い事を言うのよ。ヒロは私の一体何なの? 私の彼氏に対してそこまで言う権利がヒロにはあるの?」

「い、いや、それは……だって俺は紗枝の幼馴染だから……。だから仲の良い幼馴染として紗枝の事を心配で……それでその……」

「うん、確かに私達は幼馴染よね? お互いに子供の頃から知ってるし私もヒロの事は仲の良い大切な幼馴染だと思ってるわよ。だからまぁ百歩譲って幼馴染の私の事を心配するってのは理解してあげるわよ」

「さ、紗枝……」


 俺は紗枝の事が幼馴染だから心配だと言うと、紗枝もその言葉には同意していってくれた。でもすぐに冷たい表情のまま紗枝は続けてこう言ってきた。


「それでも幾ら仲の良い幼馴染だとしても言っちゃ駄目な事くらいわかるでしょ? 子供の頃のヒロだったら今みたいな酷い事は絶対に言わなかったわよ。それなのに何で高校生にもなってそんな酷い事を言うようになっちゃったのよ?」

「い、いや、それは……だ、だってさ! 俺達はずっと一緒に過ごしてきた幼馴染じゃんか! 俺達は生まれてからこの17年近くずっと仲良く過ごしてきたじゃんか! だ、だから俺はその……紗枝の事が……そ、その……」

「? 私の事が一体何よ?」


―― 紗枝の事が好きなんだ。


 今すぐ俺は紗枝に向かって告白をしたかったんだけど……でもどうしても俺は“その言葉”を今すぐ口に出す事が出来なかった。


(でもそんなの当たり前だよな……)


 だって俺は今まで何度もその言葉を紗枝に伝えようと思った事があるのに、結局俺はヘタレてしまって一度もその言葉を紗枝に向かって口に出す事が出来なかったんだ。


 だから今この場になって急にその言葉を口に出そうと思っても無理があるというものだ……。


「え、えぇっと……その……俺は紗枝の事が……えっと……」

「? よくわからないけど私がどうしたのよ? 本当はこれ以上私に言う事なんて無いのにそう言ってるだけならもう帰るわよ?」

「えっ……って、えっ!? い、いや、ちょっと待ってくれよ!」


 この土壇場でも俺はヘタレてしまって紗枝に本当の気持ちを伝える事も出来ず、終始まごまごとしていると、紗枝は冷たい表情のまま俺に対してそう言ってきた。


 なので俺は慌てて紗枝が帰ってしまうのを引き止めるためにこんな事を言っていった。


「い、いや! 俺は幼馴染の紗枝に言いたい事はちゃんとあるんだよ! そ、そもそも何であんな不良を選んだんだよ? アイツなんかよりも良い男は世の中に大勢いるだろ! だから早く別れろた方が良いって!」

「……それを決めるのはヒロじゃないでしょ。というかそもそも私達は仲の良い幼馴染なんだからさ、そんな仲良しの幼馴染な私に恋人が出来たんならヒロは素直に祝福してくれても良いんじゃないの?」

「は、はぁ!? 祝福なんて出来るわけねぇだろ!? そもそもあんなクソヤベェ不良と付き合ってるなんてマジで紗枝は終わってるんだぞ! だから早く紗枝は正気に戻――」

「……そっか。やっぱりヒロはさ……子供の頃から比べて本当にすっごく変わっちゃったんだね……」

「正気に戻っ……って、えっ? な、何だよ、急に? 俺が変わったって……ど、どういう事だよ?」


 紗枝はため息を付いて少し悲しい表情をしながら俺にそう言ってきた。そしてそのまま紗枝は俺に向かって……。


「……私、子供の頃はずっとヒロの事が好きだったのよ」

「……え?」


 そのまま紗枝は俺の目を見つめながらそんな事を言ってきた。俺はその言葉を上手く理解する事が出来ず……その場で呆然と立ち尽くしてしまった。

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