第201話:な、何を言ってんだよ!?(ヒロ視点)

「それで? 他に私が雅君と別れた方が良い理由はあるのかしら? 無いのならもう帰るけど?」

「えっ!? え、えぇっと、それは、その……」


 氷のように凍てついた紗枝の視線を感じて俺は動揺しながらも、何か他に別れた方が良い理由は無いか考えていった。


「い、いや、で、でも……アイツって元々は不良だった男だろ? それじゃあまたアイツが不良に戻る可能性だってあるじゃねぇか。そんなリスクのある男と付き合うなんておかしいだろ?」

「好きな人と付き合うのにリスクの可能性を考える人なんていないでしょ。というかヒロのその理論で言ったらさ、昔にヤンチャしてた人達はどんなに反省をした所で再犯する可能性があるから付き合ったり結婚したりしたら絶対駄目って理論にならない? それは流石に暴論過ぎるでしょ。だって昔ヤンチャしてたけど今は更生して結婚して幸せに過ごしてる人なんて普通にそこら中にいるでしょ?」

「そ、それはまぁ、そうだけど……」


 紗枝は飄々とした顔をしながら俺の言葉を瞬時に論破していった。俺は焦りながらも他に何か言えないか考えていった。


「い、いや、でも……や、やっぱりアイツと紗枝は絶対に合わないって! だって紗枝は滅茶苦茶真面目な女じゃん! それでアイツは今までずっと不良だったんだろ? そんな水と油みたいな男女が付き合って上手くいくわけないって!」

「別にそんな事もないわよ。だって雅君、私と同じ大学を受験するって本気で言ってくれたし。だからヒロが思っている以上に雅君ってすっごい真面目だから私達相性ピッタリだと思うけど?」

「……は? い、いやいや! 流石にそれはあり得ねぇだろ!? だって紗枝の目指してる大学ってかなり偏差値高いだろ? そ、そんな大学にアイツみたいな不良が受かるわけねぇって……」

「うん、そうかもしれないわね。それでも雅君は私に向かって同じ大学を目指して猛勉強するって言ってくれたのよ。塾にも通うって言ってくれたし。ふふ、雅君はね、本気で私と同じ大学に行こうと思って頑張ってくれてるのよ?」

「え……あ、あんな不良が塾に……?」

「うん、そうよ。まぁでもね……正直私は同じ大学に受かるかどうかなんてどうでもいいの。そんな事よりも私は過程の方が大事だって思うから。だから大学に受かるために勉強したり塾に通おうと努力をする雅君は誰よりも素敵でカッコ良いと思うわ。そしてそんな頑張ってる雅君の事を私は誰よりも大好きだと思っているし応援もしてるの。ふふ、これが私の素直な気持ちよ」

「なっ……」


 紗枝は顔をちょっと赤くしながら葛原の話を語ってきた。全くもって腹立たしい。何としても紗枝の洗脳を解かなきゃだ……!


「という事で私はそんな頑張ってる雅君の事が大好きなの。だから雅君が不良だとか不良じゃないとか、そんなの私にとっては何も関係無いのよ。だからこれ以上彼の事を貶すのは止めてくれないかしら?」

「い、いや貶すって……お、俺は紗枝の事が心配でそう言ってるだけなんだよ! だってアイツは今まで不良男じゃんか! そんなヤツ絶対にヤベェヤツに決まってんじゃん! ってか何でそんなヤベェヤツの事を応援をしてんだよ! もしかして洗脳でもされてんじゃねぇのか? あ、わかった! きっとアイツは紗枝の身体が目当てなんだよ! アイツは紗枝を誑かして紗枝の身体を無理矢理抱こうとしてるだけなんだって!」

「え? 私の身体? それってつまり……エッチとかそういう話? でもアンタさ、いつも私の事をチンチクリ女だとか、女としての魅力がない貧相な子供体型だとか、筋肉ゴリラ女だとか今まで色々と言ってきたじゃない? そんなチンチクリな私の身体に雅君が欲情するのかしら?」

「あ……そ、それは……」


 そういえば俺は紗枝に向かってそんな軽口めいた事をしょっちゅう言ってたっけ……。


 だって本当は紗枝って物凄く魅力的な身体付きをしてるんだ。でもそんな紗枝の魅力的な身体や素肌を誰にも見せて欲しく無くていつもそんな軽口を紗枝に叩いてしまっていたんだ。


(あ、そういえばちょっと前にも紗枝は大人っぽくて身体のラインがしっかりと見て取れるニットワンピースを着てた時があったよな)


 でもあんな滅茶苦茶似合ってる色っぽいニットワンピース姿を俺以外の男に見せたくなくて……それで俺は紗枝に向かって“ガキっぽいからそんな服着るな”って言ってしまった事もあったっけ。


 まぁそんなわけでこれは完全に俺のせいだけど……どうやら紗枝は自分が魅力的な身体付きをしているという事を全く理解してないようだ。


(だけど今の紗枝の言葉からしてさ……紗枝の処女ってまだアイツに奪われてないって事だよな!!)


 その事実が確認出来て本当に良かった。だって紗枝の処女があんな不良男に奪われるなんて最悪過ぎるからな。


 ってか紗枝の処女をあんな不良男に奪われてたまるか! 紗枝の処女が奪われる前にあんな不良男と絶対に別れさせてやるんだ!!


「い、いや、ま、まぁ確かに紗枝の身体は全然魅力的じゃないチンチクリンな身体だけど……で、でも不良男にとってはそんなの関係ないよ! 不良男なんてもんはエッチが出来るんだったら誰でも良いって考えてるんだよ! だからアイツは紗枝の事をただの都合の良いセフレとしか考えてないって! だ、だから絶対に別れた方が――」

「ふぅん? そっかそっか。それじゃあ雅君は……私みたいな身体でもエッチしたくなるって事かな?」

「別れた方が良いに……って、え? い、いや何呑気な事をいってんだよ? このままだとあの不良男にエッチさせられる事になるかもしれないんだぞ! だから早く別れろって! 紗枝だってあんな不良男とエッチなんてしたくないだろ!?」

「? いや、別に良いけど?」

「……は? い、いや、何を言って……」

「何を言ってるって……いや雅こそ何言ってんのよ? エッチしたくもない相手だったらそもそも私は付き合ったりなんかしないわよ。だからもし雅君が私とエッチしたいって言ってきてくれたらさ……私はいつでも受け入れるつもりよ。まぁ女の子の初めては凄く痛いって聞くけど……ふふ、でも大好きな雅君とのエッチなら我慢出来るだろうしね……」

「え……って、なっ!? は、はぁっ!?」


 紗枝は顔を真っ赤にしながらそんな爆弾級の発言を俺に向けてぶっこんできた。そしてそれを聞いて俺の脳が破壊される音がゆっくりと聞こえてきた気がした……。

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