第174話:遊園地からの帰り道

「いやー、今日は凄く楽しかったな!」

「えぇ、本当に凄く楽しかったわね!」


 遊園地からの帰り道。俺と紗枝は一緒に駅前に向かって歩いている所だった。


「でも本当にありがとね。こんな素敵なぬいぐるみをプレゼントに貰っちゃってさ」

「全然良いよ。でもちゃんと大切にしてくれよな?」

「うん、もちろん。絶対に一生大切にするわよ」


 紗枝は俺が買ってあげた遊園地のマスコットキャラの大きなぬいぐるみをギュっと抱き抱えながら俺にそう感謝の言葉を伝えてきてくれた。


「あぁ、それなら良かった。それじゃあ俺も紗枝から手作りのクリスマス料理を楽しみにしてるからな?」

「う……あ、あんまりハードルを上げられても困るけどね。まぁでも……ちゃんとアナタの好きな料理を作ってあげるわね」

「はは、それは嬉しいな。ま、でもそんな気負わずシンプルな料理を作ってくれるだけでも俺は凄く嬉しいからな? だから俺の好きな物とかじゃなくて全然良いぞ?」

「う、ううん、ちゃんとアナタの好きな物を作るわよ。だってその……す、好きな彼氏のために食べたい料理を作ってあげたいって思うのだって当然の気持ちでしょ?」

「え?」


 紗枝は恥ずかしそうな表情をしながらも俺に向かってそんな事を言ってきた。それは俺にとっては物凄く嬉しい言葉だった。


「そっか。うん、そう言ってくれるのは嬉しいよ。だけど紗枝がそうやって俺の事を好きだってちゃんと言ってくれるようになったのは……はは、何だか凄く嬉しいな」

「え? どういう事よ?」

「いや、俺はいつも紗枝の事を好きだとか可愛いとか言ってるけどさ、でも紗枝の方からはあんまりそういう事を言って貰ってなかっただろ? だから今日のデートで紗枝がそういう事をちゃんと口に出して言ってくれたのが何だか嬉しかったんだよ」

「え? あ、そ、そっか……そういえば確かに……私は恥ずかしいって思ってあまりそう言う事は言ってなかったかもね。うん、それは反省しなきゃだわ……」

「え? いや、別に反省だなんて大仰な事を言わなくても良いんじゃないか?」

「い、いや、そうはいかないわよ。だ、だってその……カップルが別れる時ってお互いのコミュニケーション不足が原因になる事の割合が多いんだからね。だからその……こ、これからはちゃんと……アナタに伝えるわよ。だ、だからその、えぇっと……す、好きよ、雅君」

「っ!?」


 紗枝は顔を真っ赤にしながらも俺の名前を呼んでもう一度好きだと言ってきてくれた。これは流石に破壊力抜群過ぎるわ……。


 そして俺もそんな紗枝の言葉を受けてから顔がどんどんと熱くなってきてしまった。もしかしたら顔も真っ赤になっているかもしれない。


 でも俺は顔が赤くなってるのを恥ずかしがるなんて事はせずに、俺は紗枝に向かって優しく笑みを浮かべながらこう言っていった。


「そっか。うん、それじゃあ俺も……好きだよ、紗枝」

「……うん。私もよ。大好き」

「あぁ」


 という事で俺達はお互いにお互いの事が好きだと言い合いながら駅前へと歩いて向かって行った。


◇◇◇◇


 それから程なくして。


「ふぅ、ようやく駅に着いたな」

「えぇ、そうね」


 俺達は駅前へと戻って来た。という事で今日はこれにて解散となる。


「あ、そうだ。それじゃあ……はい、これ。祐奈ちゃんにこれを渡しといて貰えるかしら?」

「ん? これって? キーホルダーか?」


 そう言って紗枝は遊園地のマスコットキャラのキーホルダーを俺に渡してきた。


「うん、そうそう。私も祐奈ちゃんにお土産をあげたいなって思ってたのよ。だから帰ったら祐奈ちゃんにこれをプレゼントに渡しておいてくれるかしら?」

「あぁ、わかった。きっと祐奈も喜ぶと思うよ。だって祐奈は紗枝の事が大好きだからな」

「ふふ、そう言ってくれると凄く嬉しいわ。だって私も祐奈ちゃんの事は大好きだからね」


 俺がそう言うと紗枝はとても嬉しそうに微笑んできた。


「はは、そっかそっか。それじゃあこのキーホルダーは祐奈に渡しておくよ。あ、そういえばさ、祐奈の身体だいぶ柔らかくなってたぜ。きっと紗枝が教えてくれた柔軟体操を毎日やってるおかげだな」

「へぇ、そうなんだ? 祐奈ちゃんは頑張り屋さんだものね。それじゃあいつかは私よりも軟体になっちゃいそうね」

「あぁ、そうかもな。ま、今度また家に来た時は祐奈の柔軟の成果を見てやってくれよ」

「えぇ、わかったわ。あ、そうだ。それじゃあせっかくだしそろそろアナタも一緒にストレッチしましょうよ?」

「えっ? い、いや、流石にそれは……前にも言ったと思うけど祐奈のストレッチを見てると俺みたいな身体が固いヤツには無理だっていつも思うもん」

「ううん、大丈夫よ。私がしっかりとサポートしてあげるからさ。すっごく優しい力でアナタの背中を押してあげるわよ? ほら、それなら全然無理じゃないでしょ? だから試しに一度やってみましょうよ?」

「ま、まぁそんな手厚いサポートをしてくれるのであれば良いけど……う、うーん、それじゃあ痛くしないでくれよな?」

「ふふ、善処するわ。まぁアナタが痛がっても私は背中を押すのは止めないかもしれないけどね。くすくす」

「えっ? い、いや流石にそれは止めてくれよ!?」

「ふふ、わかったわよ。残念だけどしょうがないわね」


 俺がそう言うと紗枝は小悪魔っぽい笑みを浮かべながらそう言っていった。


 それにしても付き合いだしてからの紗枝は二人きりの時にはこうやって冗談めいた軽口をする事がどんどんと増えてきてる気がするな。


(もしも付き合うようになって俺にだけこういう軽口を叩く特別な姿を見せてくれてるんだったら凄く嬉しいな)


 俺はそんな事を思いつつも、そろそろ帰る頃合いだと思ったので紗枝にこう言っていった。


「よし、それじゃあ帰りが遅くなると紗枝の親御さんも心配するだろうし、今日はそろそろ解散にしようぜ」

「えぇ、わかったわ。それじゃあ……また学校でね」

「あぁ、わかった。それじゃあ、またな」


 俺はそう言って紗枝が改札に入って行くのを見送ってから、俺も自分が利用してる路線の改札へと向かって行った。


 今日は本当に凄く楽しいデートだった。そして出来る事ならこれからも紗枝と一緒に楽しいデートを沢山やっていきたいな。

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