第173話:お土産コーナーにて

 それから数時間後。


 時刻は夕方になった頃合いだ。そしてそろそろ遊園地から帰る時間に差し迫っていた。という事で……。


「うーん、お土産はどれが良いかしらね……」

「うーん、そうだなぁ……」


 という事で俺達はお土産コーナーを物色していっていた。


 俺は家族と友達の黒木、それとバイト先のお土産を購入しようとしていた。そして紗枝も自分の家族と友達用にお土産を購入しようとしていた。


「うーん、それじゃあ俺はこのチョコとビスケットにしようかな。綾子はチョコがいいって言ってたしこれでいいか」

「そっか。それじゃあ私も同じやつにしようかな? どっちも美味しそうだしね」


 俺がそう言うと紗枝も同じお菓子にすると決めていって、そのままチョコとクッキーを買い物かごの中に入れていった。


「そっかそっか。それじゃあ紗枝は他に何か買う物とかあるか?」

「うーん、私はこれで全部だから大丈夫かなぁ……って、あ」

「うん? どうしたよ?」


 紗枝は話していると急に何故か固まってしまった。どうやら何かを見つけたような感じだったので俺も紗枝の見ている方向に視線を送っていった。


 するとその視線の先にはこの遊園地のマスコットキャラのぬいぐるみが沢山陳列していた。


「あぁ、あっちはぬいぐるみのコーナーみたいだな。あ、そういえば祐奈にぬいぐるみを買ってきて欲しいって頼まれてるからちょっとだけ見てもいいか?」

「え? あぁ、うん、もちろん良いわよ」

「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて……えぇっと、どれにしようかな……」


 という事で俺は棚に陳列されているマスコットキャラのぬいぐるみを見ながら祐奈の好きそうなぬいぐるみを一つ選び取って買い物かごに入れていった。


「うん、これでよし……って、あれ?」

「……」


 するとその時、隣にいた紗枝が目を輝かせながらぬいぐるみの棚をジッと眺めている事に気が付いた。その様子からしてもしかして……。


「もしかして……紗枝ってぬいぐるみとか好きなのか?」

「え……って、えっ!? あ、い、いや、それはその、えぇっと……」

「へぇ、そうなんだ? よし、それじゃあ俺が紗枝にプレゼントとしてぬいぐるみを一個プレゼントしてあげるよ!」

「え……って、え?」


 羨んだ眼差しでぬいぐるみを見ている紗枝に向かって俺はそんな事を言っていった。


「え、い、いやでも……遊園地を無料で招待して貰ったようなものなのに、さらにプレゼントまで貰うなんて……それはちょっと、流石に図々しいというかおこがましいというか……」

「はは、そんなの気にすんなよ。ってか遊園地のチケットだって黒木に貰ったわけだしさ。それに彼女が欲しがっている物をプレゼントしたいって思うのは彼氏として当然の気持ちだぜ? だって彼女に喜んで貰えるのが彼氏としては一番嬉しいんだからさ」

「う……そ、そう言ってくれるのは嬉しいけどさ……」


 俺がそんな事をいうと途端に紗枝の顔は赤くなっていった。どうやら照れているようだ。


 でも紗枝としてもそんなに無料で色々とプレゼントを貰うのは多少の負い目を感じるんだろうな。だって紗枝って凄く生真面目な女の子だからさ。


 という事で俺は……。


「うーん、そうだなぁ……あ、そうだ。それじゃあこうしないか?」

「ん? こうするって?」

「あぁ、今度クリスマスに俺の家でパーティを開くだろ? だからその時にまた紗枝の手作りの料理を食べさせてくれないか? その代わりに俺から感謝の気持ちとしてぬいぐるみをプレゼントさせてくれよ。感謝の先払いって事でさ」

「え? い、いや、確かにまた料理をしたいとは言ったけど……でもクリスマスは流石に早過ぎよ。私はまだ料理なんて全然下手なのよ?」

「いやそんなの気にしなくていいよ。ってか今日のサンドイッチはめっちゃ美味しかったしさ。それに俺は紗枝の作る料理だったら何でも食うよ。だって好きな女の子の料理なんて一番美味しいに決まってんだからさ」

「うっ……そ、そんな……も、もう! 恥ずかしい事を言うのは禁止よ禁止!」


 そう言って紗枝は顔を赤くしながら腕をクロスさせながらバツのポーズを取ってきた。


「はは、悪い悪い。でも本当の事なんだから仕方ないだろ?」

「も、もう……わ、わかったわよ。そこまで言うのなら、それじゃあ今度のクリスマスにも何か料理を作ってあげるわよ」

「マジか? はは、それは嬉しいな! ありがとう、紗枝!」

「えぇ。あ、でも不味くても知らないからね! あとちゃんと全部食べきって貰うからね!」

「あぁ、もちろんわかってるよ。よし、それじゃあそのお礼の先払いって事で、今日は俺から紗枝にぬいぐるみをプレゼントさせて貰うよ。何でも好きなの選んでいいぜ?」

「うん、わかったわ。ふふ、それじゃあすっごく高級なぬいぐるみをお願いしちゃおうかしらねー?」


 紗枝はちょっとだけ小悪魔っぽく意地悪そうな笑みを浮かべながら俺にそう言ってきた。


「え? い、いや、まぁそこは財布との相談になるから……ま、まぁお手柔らかにな?」

「ふふん。アナタはいつも私の事を困らせてくるんだから、今日は私がアナタを困らせてやるわよ。ふふ」


 そう言ってまた紗枝は凄く嬉しそうに笑みを浮かべながらそう言ってきた。


 これは財布の中身がちょっと大変な事になりそうだけど……まぁでも紗枝が楽しそうにしてくれるなら別にいっか。

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