第171話:遊園地デート当日

 12月初旬。


 今日はいよいよ遊園地デート当日だ。


 という事で俺は遊園地の最寄り駅で紗枝の事を待っていた。


「うーん、もうそろそろかな?」


 俺はスマホを開いて現在時刻を確認してみた。すると今は待ち合わせ時刻の10分前になった所だった。そろそろ紗枝もやってきそうかな?


「あ、お、お待たせ……」

「ん? あぁ、おはよう、紗枝」


 すると後ろから声をかけられたので俺は後ろを振り返ってみた。そこには紗枝が立っていた。


 今日の紗枝の服装はジーパンにシャツとボアブルゾンを羽織ったカジュアルで動きやすいコーディネートだった。遊園地で動き回るから今日は動きやすさを重視したんだろうな。


 そして髪の毛は普段の学校ではポニーテール姿によく見ているんだけど、今日は可愛い感じの三つ編みヘアにしていた。


(やっぱり紗枝ってオシャレだよなぁ)


 俺はそんな事を思いながら紗枝の姿をジっと見つめていった。


「ど、どうしたのよ、そんなにジロジロと見ちゃって? あ、も、もしかして……結構待っちゃったとか……?」

「いや、全然待ってないよ。ってか俺もさっき到着したばかりだしさ」

「そ、そっか。それなら良かったわ……」


 俺がジロジロと紗枝の事を見ていたせいで少し不安にさせてしまったようだ。なので俺も今到着した所だと伝えていった。すると紗枝はホッと安堵していった。


「それにしても何だか凄い荷物だな?」

「え? あぁ、うん。まぁお弁当が入ってるだけだけどね」


 紗枝の肩にはちょっと大きめなバッグが肩にかけていた。どうやらその中には今日のお弁当が入っているらしい。


「そっか。それじゃあ俺が持つよ。ほら、そのバッグをこっちに貸してくれ」

「え? い、いや……でも私の荷物を持たせるのはちょっと申し訳ないというか……」

「はは、何言ってんだよ? 彼女の荷物を持つくらい当たり前だろ? だから、ほら」

「え? あ……う、うん。それじゃあその……ありがと、雅君……」


 俺がそう言いながら手を紗枝の方に見していくと、紗枝はちょっと顔を赤くしながらも俺にそのバッグを渡してきてくれた。俺はそのまま荷物を肩にかけていった。


「あ、そういえば今日のお弁当の中身は何なんだ?」


 俺は紗枝にそんな事を尋ねていった。実は今日のお弁当の中身はまだ紗枝に聞かされていなかった。好きな食べ物とかはちょくちょく尋ねられたりしたから、何か俺の好きな料理でも入ってるのかな?


「ふふ、それはまぁ食べる時のお楽しみにって事で」


 すると俺の質問に対して紗枝は笑みを浮かべながらそんな事を言ってきた。


「わかったよ。それじゃあ今日のお昼を楽しみにしてるからな?」

「えぇ。あ、でも……アナタみたいに美味しいご飯は作れないから、そんなにハードルを上げないでよ?」

「大丈夫だよ。だって俺としては大好きな彼女の手料理を食えるってだけで十分に嬉しいからさ」

「う……そ、そういう事はあまり言わないでよね……は、恥ずかしいじゃないの」


 俺がそんな事を言っていくと紗枝は顔を真っ赤にしながら顔を俯けていっていた。


「ごめんごめん。でもそれくらいに今日のデートを楽しみにしてたって事だよ」

「も、もう……ま、まぁでも……うん、私もその……アナタとのデートを凄く楽しみにしてたわよ」

「はは、そっか。紗枝も楽しみにしてくれてたんだ?」

「あ、当たり前でしょ? だってその……わ、私も……好きな彼氏とのデートなんだもの……楽しみにしてたに決まってるでしょ……」


 紗枝は顔を赤くしながらも俺に向かってそんな事を言ってくれた。


「そっかそっか。紗枝にそう言って貰えると俺も嬉しいよ。それじゃあ今日は一緒に沢山遊ぼうな?」

「えぇ、そうね。せっかくの遊園地なんだものね。いっぱい遊びましょうね」

「あぁ、それじゃあ早速遊園地に行こうか」

「えぇ、わかったわ」


 という事で俺達は早速遊園地の入口へと向かって歩いて行った。


◇◇◇◇


「「おぉー」」


 それからすぐに遊園地に到着した俺達は周りの景色を見て感嘆の声を漏らしていった。


「いやー、何だかこの雰囲気懐かしいなぁ。遊園地に来るの凄く久々なんだけどやっぱり遊園地ってテンション上がるよな」

「ふふ、そうね。私も久々だから凄く楽しみだわ」

「そっか。あ、そういえば紗枝って好きなアトラクションとかはあるか?」

「うーん、そうね……まぁやっぱりあれかしら。ジェットコースターとか絶叫マシン系が割と好きかもしれないわね」

「へぇ、絶叫系が好きって何だか意外だな?」

「そう? まぁ何て言うかそういうのってどれも爽快感があって好きなのよね。アナタはどう? 絶叫系は大丈夫なのかしら?」

「んー、まぁ人並みには好きな方だとは思うよ。高所とか早い乗り物とか全部平気だしな」

「そっかそっか。ふふ、それじゃあ今日は一緒に沢山の絶叫系に乗れるわね?」

「いや、流石に何度もそんなのに乗ったら酔いそうだけどな」


 紗枝がニヤっと笑いながらそんな冗談めいた事を言ってきたので、俺も笑いながらそうツッコミを入れていった。


「あ、そうだ。それじゃあ逆に苦手なアトラクションとかはあるか?」

「苦手なアトラクションね……うーん、まぁその……ホラー系だけは死んでも無理ね……」

「ホラー系? お化け屋敷とかそういう類か?」

「そうそう。ああいうジトっとした怖さのある物は全般的に苦手なのよ……」


 紗枝は本気で嫌そうな顔をしながらそう語ってきた。まぁ確かにお化け屋敷とかホラー映画とかそういうの苦手な人は沢山いるよな。


「そっか。わかったよ。それじゃあ今日はそういう所は行かないようにして、楽しそうなアトラクションだけを回って行こうな」

「ん……ありがと。あ、でも……アナタがホラー系が好きなようなら全然行っても良いわよ?」

「え? 良いのかよ? だって紗枝は怖いの苦手なんだろ?」

「ま、まぁね。でもアナタが好きなようなら別に良いわよ。その代わりに中に入ってる間はアナタにずっとしがみつく事になるけど……」


 ずっとしがみつかれるのは男の身としては素敵なイベントになる気もするな。でも流石にホラー系が苦手な人をそういう所に連れて行くのは絶対に駄目だと思うので俺は断る事にしとこう。


「いや、それは止めとくわ。紗枝が苦手だって言ってんのにそこに連れてくのは駄目だろ。だからその分他のアトラクションを全力で楽しもうぜ?」

「ん、わかった。ありがとう、雅君」

「はは、いいっていいって。あ、でもさ……そのしがみつかれるってのはちょっと素敵なイベントだよな?」

「ん? どういう事? あ、もしかして……何かえっちな事でも考えてるの?」

「いやいや、そういう事じゃねぇよ。でも普通にそういう触れ合う感じってちょっと彼氏彼女っぽくないか? だからその……ほら」

「え……? あ……」


 俺はそう言って手を紗枝の方に差しだしていった。それを見て紗枝も俺の意図にはちゃんと気が付いたようだ。


「う、うん。それじゃあその……ん」


―― ぎゅっ……


 そう言って紗枝は俺の手をしっかりと握りしめていってくれた。


「はは、よし、それじゃあ早速ジェットコースターの方に行ってみようぜ?」

「えぇ、わかったわ。ふふ」


 そう言って俺達は手を繋ぎながら仲良くジェットコースターの方へと向かって歩みを進めていった。

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