第167話:お母さんにお付き合いを始めた事を伝えていく(紗枝視点)
とある日の夕方。
「お母さん。あのね、ちょっとお願いがあるんだけど……」
「うん? どうしたの紗枝?」
リビングで読書を楽しんでいるお母さんに向かって私はそう声をかけていった。するとお母さんは読書を一旦止めて私の方に顔を向けてきてくれた。
「う、うん、あのね……実は来月の頭に遊園地に遊びに行くんだけどさ、それでその……私、その日にお弁当を作りたくてね……だからその日のお弁当作りをちょっと手伝って欲しいなって思って……」
「お弁当作り? そんなの全然幾らでも手伝うわよ? でも何でそんな緊張した様子になってるのよ?」
「えっ!? い、いや、それはその……」
「? まぁ別に良いんだけど……でも来月の頭に遊園地に行くなんてかなり急な話ね? 誰と行くのよ? 学校のお友達と行くのかしら? それとも塾のお友達と?」
「え? え、えっと、そ、それはその……実は彼氏と二人きりで遊びに行くんだ……」
「ふぅん、そうなん……って、えぇっ!? か、彼氏と二人きり!? そ、それってつまりデートって事!?」
「う、うん、そうなんだ……」
私がそう言うとお母さんはかなり驚愕とした表情を浮かべてきたけど、でもそれからすぐにパァっと明るい顔をして興奮気味にこんな事を言ってきた。
「へぇ、そうだったのね! それはおめでとう紗枝!」
「う、うん、ありがとう、お母さん」
「ふふ、紗枝に彼氏が出来たなんて凄く良い報せだわー! それでそれで? 紗枝の彼氏って一体誰なの? あ、もしかしてお隣のヒロ君なのかしら? 紗枝はヒロ君とすっごく仲良かったものね!」
「え、ヒロ? ううん、それは違うよ。まぁ確かにヒロとはそれなりに良い仲だったとは思うけど……でも別にヒロと私はお互いに付き合いたいとかそういう感情は特になかったしね」
お母さんにヒロが彼氏なのかと尋ねられたので私はすぐにそれを否定していった。やっぱり付き合ってる男の子が間違われるのは普通に嫌な気持ちになるしね。
「あれ、そうだったの? それじゃあ紗枝のお付き合いしてる彼氏君って一体誰なのかしら?」
「そ、それはまぁその……学校の一番仲の良い同じクラスの男の子が彼氏よ……」
そしてお母さんに向けて私はちょっとだけ顔を赤くしながらも彼氏についての報告をしていった。
「へぇ、紗枝ってヒロ君以外にも仲の良い男の子の友達がいたのね! それはちょっと気になるわー。ちなみにその彼氏君はどんな子なの? 見た目とか性格とかさ、色々とちょっとお母さんに教えてよー」
「え、えぇっと、まぁその……優しくて、私の話をちゃんと聞いてくれて、困ってたらいつも助けてくれる優しい男の子って感じかな? あ、あとは見た目はその……私にとっては一番カッコ良い男の子だよ……」
「へぇ、そうなんだ? ふふ、紗枝がそんな事を言うなんて……うんうん、きっと紗枝とその彼氏君はすっごく仲良しさんなのねー!」
「う……ま、まぁそれはその……お付き合いしてるんだからある程度はね……」
私は恥ずかしくなりならも雅君についてそう伝えていくと、お母さんは嬉しそうに笑みを浮かべながらそんな事を言ってきた。
「うんうん、それは是非とも私も見てみたいなー! あ、それじゃあ良かったら紗枝の彼氏君を家に招待してあげてよ! 私も是非とも紗枝の彼氏君にご挨拶したいしさ!」
「え……そ、それは……うん、そうだね。私もお母さんに紹介したいし……うん、それじゃあいつか空いてる日とかがあったら家に招待してみるわ」
雅君とは付き合ったばかりだし知らない事もまだまだ沢山あるけど、でも雅君がとても優しくて素敵な男の子だという事を私はちゃんと知っている。
だからお母さんにもそんな優しくて素敵な雅君の事を紹介していきたいな……。
それに私は綾子さんや祐奈ちゃんとも仲良くさせて貰っているし……だから雅君も私の家族と仲良くしてくれたらその……何だか嬉しいなって。
「ありがとう紗枝! それじゃあその日を楽しみにしてるわね! って、あ、そうだ。それとお弁当作りのお手伝いの話だったわよね? うん! それもちゃんと手伝ってあげるわよ! ふふ、一人娘の頼みは断るわけにはいかないものね!」
「うん、ありがとう! お母さん!」
「うん! あ、それじゃあせっかくだしさ……これからは私と一緒に料理の練習でもしましょうか? せっかくだし彼氏君に美味しい手作りのお弁当を作ってあげましょうよ!」
「う、うん、そうだね。それじゃあその……色々と教えてね、お母さん……」
「うん、もちろん! 私に任せてよ!」
という事でお母さんは満面の笑みを浮かべながらそんな頼もしい事を言ってきてくれた。
よし、それじゃあこれから毎日少しずつ料理の勉強をしていって……それで雅君に美味しいお弁当を持っていってあげよう!
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