第165話:その日のお昼休み(紗枝視点)

 その日のお昼休み。


 今日は友達の雪子と一緒にお昼を食べる約束をしていたので、私は雪子と一緒に食堂でご飯を食べていっていた。そして……。


「えっ!? 紗枝って葛原君と付き合い始めたの!?」

「う、うん……」


 そして私は雪子に雅君とお付き合いを始めた事の報告をしていった。


 まぁ雪子には前々から私の話を聞いて貰っていたし、ちゃんと報告するのが筋だなって思ってね。


「そっかそっか! うん、おめでとう! いやー、それは本当におめでたい事だね!」

「う、うん、その、ありがとう。雪子」


 私がそう言うと雪子は自分の事のように嬉しそうな笑みを浮かべて私の事を祝福してきてくれた。


 まぁ普段の雪子は結構冗談とか軽口めいた事を叩いてくる子なんだけど、でもこういう時は全力で祝ってくれるから本当に優しい子よね。


「あ、それじゃあもしかしてさ……今日紗枝が着てるそのカーディガンって葛原君のだったりする?」

「え? あ、あぁ、うん、そうだけど……もしかして私の物じゃないってわかるの?」

「あはは、そりゃあね。だってそのカーディガンは紗枝の身体よりも一回り大きいでしょ? だから多分男子のかなーって何となく思ったから、とりあえず葛原君の名前を出してみたけど本当にその通りだったとはねー」


 雪子は楽しげに笑いながらそう言ってきた。そしてそのまま続けて私にこう言ってきた。


「ふふ、まぁでも彼氏からカーディガンを貸してもらうなんてすっごく仲が良さそうな感じが伝わってくるよー。それじゃあこれからは紗枝の熱々なカップル話を沢山聞かせて貰うからね? 親友の私には秘密なんて無しだよー??」

「そ、それは、まぁ別に雪子に秘密とかするつもりはないけど……いやでもさ、その……そもそもカップルらしい事ってどんな事をすれば良いと思う?」

「え? どういう事?」

「えっと、いや、だってさ……私、男の事とお付き合いをするのはこれが初めてだから……だから彼氏にどういう事をしたら喜んで貰えるかとか全然わからないというか……」


 私はそんな事を雪子に尋ねていってみた。やっぱりこういう時は仲の良い友人から意見を聞くべきよね。


「あぁ、なるほどー。確かに初めてお付き合いをするとなるとそういうのは色々と悩んじゃうよね。うん、それじゃあ私も何か良さそうな案が無いか一緒に考えてあげるよ!」

「え、本当に? ありがとう、雪子!」

「ううん、いいよいいよー。まぁでもやっぱり……カップルらしい事って言ったら定番だけどデート一択じゃないかな?」

「あ、うん、確かにそうよね。定番といえばデートよね」

「うんうん。それで葛原君の好きな所とか遊びに行きたい所とかに一緒に行ってあげれば葛原君も喜ぶんじゃない? あ、でもそういえば葛原君って何処か好きな所とかってあるのかな?」

「え……あ、そういえば……」


 そういえば私は雅君の好きな場所とか遊ぶ場所とかは全然知らないわ。料理が趣味なのと家族が好きな事くらいしかしらない。ま、まぁでも雅君の一番好きモノは知ってるけど……。


―― 紗枝の事が一番好きだよ。


「……~~~っ!!」

「え、ちょ、ちょっと、どうしたのよ紗枝?」

「えっ!? い、いや何でもないよ!」


 私は葛原君に言われたその言葉を思い出して顔を赤くしながら悶え始めていった。


 でもそんな私の様子を見ていた雪子は思いっきり心配そうな顔をしながらそう尋ねてきたので、私は慌てながら咄嗟にそう言って誤魔化していった。


(も、もう……雅君が真顔であんな事を言うからついつい思い出しちゃったじゃないの……)


 私は心の中で雅君に対してそんな風にツッコミを入れていっていた。


 ま、まぁでも……やっぱり私の事が好きだって……そういうのをしっかりと口に出していってくれるのは本当に嬉しい事だよね。ふふ。


「? まぁ紗枝がそう言うなら気にしないけど……それで? 葛原君が好きな所とか行きたい所とかに心当たりとかはあるの?」

「う、うーん……今はちょっと思いつかないわね。でもせっかくだし後で何処か行きたい所とかがないか聞いてみるわ」

「そっかそっか! それじゃあデートの場所に関しては紗枝次第って感じだねー。って、あ、そうだ! それならデートをする時には葛原君に手作りのご飯を振舞ってあげるとかはどうよ? それも結構カップルらしい事の王道じゃない?」

「え……あ、うん。それは実はちょっとね……前々から雅君……じゃなくて! 葛原君にお弁当を作ってあげようっていう計画は考えてる所なのよ」


 私は雅君にお弁当を作ってあげる計画を立てている事を雪子に伝えていった。


 まぁ料理下手な私ではあるんだけど……でも私は雅君にお弁当を作ってあげたいんだ。だって……。

 

(だって……雅君君は……私の作るご飯が食べたいって言ってくれたしね)


 だからその……だ、大好きな彼氏のお願いを聞いてあげるのも……彼女の務めというものだものね……!


「へぇ、そうなんだ! うんうん、それすっごく良いじゃん! あ、そうだ! それじゃあ紗枝が葛原君に弁当を作ってあげてさー、それでせっかくだから葛原君にあーんとかしてあげたら喜ぶんじゃないかな?」

「え……って、あ、あーんっ!? い、いや、流石にそれは恥ずかしいわよ!?」

「あはは、別に良いじゃん。カップル同士なんだからそんなに恥ずかしがらなくてもさー」


 雪子にそんな提案をされた私は恥ずかしくなって顔を思いっきり赤くしていった。でも……。


(で、でも……確かにそういうやり取りもちょっと……やってみたいかも……)


 何だかそういうのってバカップルみたいな感じもするけど……でもやっぱり好きな男の子にはそういう事もやってみたいなって思ったりするのよね。


 うーん、今度お弁当を作る機会があったらやってあげようかしら……?

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