第164話:紗枝にカーディガンを貸していく
翌日の朝。
「さむっ!?」
俺はあまりの寒さに目を覚ましていった。確実にいつもより数度は温度が下がってる。これはそろそろ本格的な冬がやって来そうな感じだな。
「うーん……これは流石に今日からちゃんと防寒性能を高めていかないと風邪引くかもしれないな……」
という事で俺はタンスの中からワイシャツの中に着る用の暖かい肌着を取り出してさっさと着ていった。
あとは教室の中が寒かった時のためにタンスからカーディガンも取り出して、それも鞄の中にしまいこんでいった。
まぁとりあえず今日の防寒対策はこれくらいで大丈夫かな。あとは帰宅したらコートとかマフラーとか他の防寒着もちゃんと取り出していかなきゃだな。
◇◇◇◇
それから数十分後。
俺はさっさと朝ごはんを食べてすぐに学校へと向かって行った。すると学校に向かうその道中で……。
「あれ? 前の方を歩いているのって……」
学校に向かうその道中で、俺は前方を歩いている紗枝を見つける事が出来た。
(あれ? でもどうしたんだろう?)
いつも紗枝はピシっとした姿勢でキビキビと歩いてるのに、何だか今日はちょっとだけ腰が曲がって遅く歩いているように感じた。
俺はそんないつもと違う紗枝の後ろ姿に違和感を感じつつも、俺はそのまま紗枝に近づいて声をかけていってみた。
「おはよーっす」
「え? あぁ、うん、おはよー……」
「うん、おはよー……って、えっ?」
紗枝に声をかけていくと紗枝はかなりしんどそうな顔をしていた。普通に心配になったので慌ててすぐに紗枝にこう尋ねていった。
「え、えっと……どうしたよ? そんな顔して? 朝飯でも食い忘れたのか?」
「い、いや、そうじゃないわよ。ただ何か今日は思ったよりもかなり寒くて……ちゃんと厚着してくれば良かったなってちょっと思ってね……」
「え? って、あぁ、なるほど。そういう事か」
紗枝の姿をよく見てみると、紗枝はいつもと変わらないブレザー服とスカートのみで、それ以外にコートやカーディガン、マフラーなどの防寒着は一切何も着てなかった。
「確かに今日から一気に気温が寒くなったよな。でも紗枝は防寒対策とか何も用意せずに登校しちゃったのか?」
「う、うん。いや正直こんなにもいきなり寒くなるなんて思わなかったのよ。昨日はまだ全然涼しいくらいに思える気温だったし、今日も同じくらいだろうって思って何も考えずに家を出ちゃったのよ……クチュン」
そんな会話をしていると、急に幸村は可愛らしくクシャミをしてきた。
「おいおい、大丈夫か? 風邪とか引くなよ?」
「ううん、大丈夫。熱は全然ないし、体調も悪い訳じゃないから。でも流石にちょっと寒いし学校に付いたらすぐに部活のジャージを着て一日過ごす事にするわ……」
そう言いながら幸村はティッシュを取り出して鼻をかみだしていった。
「ふぅん、それなら良いんだけど……って、あ、そうだ。それなら良かったら俺のカーディガンを貸してあげようか?」
「え?」
そう言って俺は鞄の中からカーディガンを取り出していった。今日の授業中に寒かったら着ようと思って持ってきたヤツだ。
「え? でもそれって……アナタが着るために持ってきた物でしょ? それを借りちゃうとアナタが寒くなっちゃうでしょ?」
「いやそんなの気にしなくていいよ。大好きな彼女が風邪になる方がよっぽど嫌だしさ」
「う……も、もう……そんな事を堂々と言われると恥ずかしいわよ……」
俺が笑いながらそんな事を言っていくと幸村は顔を赤くしながらちょっとモジモジとしだしてきた。
「はは、本当の事なんだからしょうがないだろ。まぁでも俺は服の中にも重ね着してるしホッカイロも使ってる気にしなくて良いよ。だからほら。良かったらこのカーディガンは紗枝が使ってくれよ」
「も、もう……うん、わかったわよ。それじゃあアナタの言葉に甘えて……せっかくだからアナタのカーディガンを貸してもらうわね」
「おうよ」
という事で俺はそう言って幸村にカーディガンを手渡していった。そして紗枝は一旦自分のブレザーを脱いでそこから俺のカーディガンを着ていった。
そして俺のカーディガンを着終えた紗枝はその恰好を俺に見せながらこう言ってきた。
「ふふ、ちょっとだけぶかぶかね」
そう言って紗枝はカーディガンの袖口から自分の手が出せなくてちょっと笑っていた。それはいわゆる萌え袖というヤツだった。
「そりゃあ俺達は体格差もあるからな。まぁぶかぶかで動きづらいようなら別にカーディガンを着ないでも上から羽織ったりひざ掛けに使う感じでも良いんじゃないか?」
「ううん、ひざ掛けに使うよりもこっちの方が良いわ。ちょっとぶかぶかだけど……ふふ、でも全然大丈夫よ」
「? そっか? まぁ紗枝がそう言うなら全然良いけどさ」
紗枝は何だかとても嬉しそうな表情をしながら俺のぶかぶかなカーディガンを楽しんでいっていた。
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