第163話:黒木に報告していく
その日の放課後。
「あ、それじゃあ私、今日は部活だから」
「あぁ、わかった。それじゃあ今日は先に帰るわ。また明日な」
「うん、また明日ね」
そう言って俺は紗枝がテニス部に行くのを見送っていった。そしてそれから俺もすぐに帰宅する準備を始めていった。すると今度は……。
「おっす、葛原ー」
「ん? あぁ、おっす、黒木」
鞄の中に今日使った教科書やノートを詰め込んでいると、今度は後ろから黒木に声をかけられていった。
「葛原も今から帰る所か? それなら良かったら一緒に帰らないか?」
「あぁ、もちろん良いぜ。それじゃあすぐに帰る準備を済ますからちょっと待ってくれ」
「あぁ、わかった」
という事で俺は急いで帰宅する準備を終わらせていき、そのまま黒木と一緒に教室を出て駅の方に向かって歩き出した。
そしてその帰り道の途中で俺は黒木にあの件についての報告をしていった。
「あ、そうだ。そういえばさ」
「うん? どうしたよ? 何かあったか?」
「あぁ、いや実は俺……幸村と付き合う事になったわ」
「え……えぇっ!? それは良かったじゃん! マジでおめでとう!」
俺は黒木に彼女が出来た事を報告をしていくと、黒木は満面の笑みを浮かべながらおめでとうと言ってきてくれた。
「でも幸村さんと付き合ったんだったらもっと早くに報告してくれよなー! 一体いつ頃から付き合い始めたんだよ?」
「いやこれでも超特急で黒木に報告したつもりなんだぜ? だって幸村と付き合い始めたのは一昨日の土曜日からなんだからさ」
「あ、そうだったんだ? はは、それは本当に超特急で俺に報告してくれた感じだな! うん、とにかくおめでとう葛原! そんな幸せ過ぎる報告を聞けて俺もめっちゃ嬉しいよ!」
「はは、そんな全力で祝われるとちょっと恥ずかしいな。でも黒木は今まで色々と相談に乗って貰ってたもんな。幸村と遊ぶ時の服装とか一緒に考えてくれて本当にありがとう。今まで黒木には沢山お世話になったよ」
「そんなの全然良いよ。俺も葛原の力になれたようなら嬉しいからさ。だからこれからも何か悩み事とかあったら言ってくれよ? 葛原と幸村さんのためならいつでも相談に乗るからな」
「あぁ、本当にありがとう。それじゃあこれからも頼りにさせてもらうよ」
「おう!」
俺は笑みを浮かべながらそう言っていくと、黒木も俺と同じように笑みを浮かべてそう返事を返してきてくれた。本当に気の良いヤツだよな、黒木ってさ。
「って、あ、そうだ。そういえば今更な気もするんだけど、黒木は好きな子とか気になる子みたいなのはいないのか?」
「いや俺は今はそういうのはいないな。部活とか塾とか忙しくて中々出会いもないしさ。まぁでももしも誰か好きな子とかが出来たら今度は俺が葛原に相談させて貰うからな。だからその時はよろしく頼むぜ?」
「そんなのもちろんだよ。黒木の頼みならいつでも聞くから気軽に相談してくれよ?」
「あぁ、ありがとな。いやそれにしても葛原と幸村さんが付き合う事になるなんてマジでめでたいなー。って、あ、そうだっ! それじゃあさ……えぇっと……あ、見つけた! ほら、良かったら葛原にこれやるよ!」
「え?」
そう言って黒木は鞄の中から何か小さい紙を取り出してきて俺の顔に近づけてきた。その小さな紙とは……。
「これって……もしかして遊園地のチケットか?」
「そうそう。少し前に地元の福引でこの遊園地のペアチケットを当てたんだけどさ、でも俺は一緒に行くような彼女もいないし、だから良かったらこのペアチケットは葛原と幸村さんにやるよ」
そう言って黒木は遊園地のペアチケットを俺に手渡そうとしてきた。
「え、ま、マジかよ!? でも遊園地のペアチケットって普通に買ったら結構高いだろ? 流石にこれを貰っちゃうのは申し訳なさが勝つんだけど……」
「いやいや、そんなの全然気にしなくて良いよ。ってかそのチケットの期限って今年中までなんだよ。だからこれ以上放置しておいてもどうせ無駄になっちまうし、無駄にするくらいだったら葛原達に有効活用して貰った方が俺にとっても嬉しいんだよ」
「く、黒木……」
そう言って黒木はニコっと笑ってきてくれた。マジでコイツ性格イケメン過ぎるって。本当に良いヤツ過ぎるよな。
「あぁ、わかった! それじゃあこのチケットはありがたく頂戴する事にするよ! そしてこのチケットのお礼は必ずさせて貰うからな!」
「あぁ、幸村さんと思いっきり楽しんできてくれよ。お礼に関しては遊園地に売ってる甘いお菓子系で良いからな」
「はは、わかったよ! それじゃあ大量にお菓子を買ってきてやるからな」
「おう、それは凄く楽しみだ」
という事で俺は黒木にしっかりと感謝の気持ちを伝えていきながら遊園地のペアチケットを貰っていった。
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