第四章:クリスマスの約束

第160話:紗枝と付き合ってから初めての登校日

 翌週の月曜日の朝。


 学校に到着してそのまま教室の中に入っていくと、既に紗枝は自分の席に座って勉強をしていっていた。


「おはよーっす」

「あ、うん、おはよ」


 なので俺はいつも通り気さくな感じで紗枝に挨拶をしていった。すると紗枝も同じような感じで挨拶を返してきてくれた。


 まぁやっぱり恋人同士になったからといっても、今までの仲の良い友達な関係性からガラっと変わったりするような事はなさそうだ。個人的にはそっちの方が嬉しいからそれで良かった。


 という事で俺は自分の席に座りながらいつも通り紗枝に他愛無い話を振っていった。


「それにしても最近は一気に寒くなってきたよなー。ここ最近は朝起きるのがマジで辛いよ」

「えぇ、確かに寒くなってきたわよね。風邪とか引かないように気を付けなさいよ?」

「もちろんわかってるよ。でも紗枝こそ気を付けろよ? 塾とか部活とかで忙しいだろうしさ」

「えっ? あ、う、うん……」

「……?」


 俺はいつも通り他愛無い話を振っていったつもりなんだけど、でも何故か途端に紗枝の様子がちょっとだけおかしくなった。


「どうしたよ? 紗枝?」

「え……って、えっ? あ、あぁ、いや、その……まだアナタの名前呼びに慣れてなくてちょっとビックリとしちゃっただけよ」

「あぁ、なんだ。そういう事かよ。はは、まぁそればっかりは慣れて貰うしかないな」

「う、うん、わかってるわよ。す、すぐに慣れると思うからアナタはそんな気にしなくていいからね!」


 紗枝は顔を赤くしながらそう言ってきた。どうやら俺の紗枝呼びにまだ慣れてなくて少し照れてるだけのようだ。


 そしてそんな照れてる紗枝の顔もめっちゃ可愛かった。うん、やっぱり俺の彼女って世界一可愛いよな。


「はは、わかったよ。って、あぁ、そうだ。そういえば俺達が付き合ってる事って誰かに言っても良いのか? それとも全員に秘密にしといた方が良いか?」

「え? えぇっと、まぁ別にそれくらいなら秘密にしなくて全然良いと思うけど、でも注目とか浴びるのはちょっと恥ずかしいから……だから私達が付き合ってる事を教えるのは仲の良い友達くらいに留めておきましょうよ」

「あぁ、そうだな。わかったよ」


 という事で俺達が付き合ってる事を報告する相手についてはそんな感じで落ち着いた。まぁ俺が友達に報告するのは黒木だけだな。


 黒木には今まで色々とアドバイスを貰ったし、ちゃんと今回の結果を報告していかなきゃだよな。黒木のような良いヤツと友達になれて本当に良かったよ。


「……って、あ、そうだ。そ、それじゃあさ、私からも言いたかった事があるんだけど……今日は良かったら教室じゃなくて、どこか別の所で一緒に食べない?」

「教室じゃない場所で? そんなの全然構わないけど、でもどうしたんだよいきなり? 教室で食べるの嫌になったのか?」

「ち、違うわよ。嫌になったとかそういう訳じゃなくて……た、ただ、彼氏と二人きりでご飯を食べるっていうのが……昔からちょっと憧れていたシチュエーションだったというか、その……」


 紗枝は顔を赤くしながらモジモジとした態度でそんな事を言ってきた。もしかしたら青春物の本とかドラマを見てそんなシチュエーションに憧れてたのかもしれないな。


「はは、そっかそっか。なるほどなー」

「な、何よその顔は? 今私の事を子供っぽい事を考えてるなーって思ったんでしょ? ふん、どうせ私は少女漫画の見過ぎよ……」

「いやいや、そんな事は一切思ってないよ。というか俺だって紗枝と二人きりで飯食いたいって思ってるに決まってるだろ?」

「え? あ、そ、そうなの……?」

「あぁ、そうだよ。だから今日からは二人きりでご飯を食べようぜ? それでせっかく俺達は恋人同士になれたんだからさ、だからこれからは今まで以上にお互いについての話をお昼休みに沢山話し合っていこうぜ」

「あ……う、うん! わかったわ! ふふ、それじゃあアナタの子供の頃とかの話もいっぱい聞かせてよね?」

「あぁ、もちろん良いよ」


 という事で俺がそう言っていくと紗枝は嬉しそうに笑みを浮かべながら頷いてきてくれた。


「よし、それじゃあ今日の昼飯は何処で食べようか? 流石に屋上とかの外はもう寒いよな?」

「えぇ、そうね。もうここ最近は一気に肌寒くなってきたし……って、あ、そうだ!」

「うん? そうだって?」


 紗枝はすぐに何かを思いついたようで大きな声を出してきた。なので俺は紗枝に向かって何を思いついたのか尋ねていった。


「うん。あのさ……良かったらテニス部の部室でお昼ご飯を食べない?」

「えっ? テニス部の部室? いやそれってつまり“女子テニス部”の部室って事だろ? 男の俺が入ったらマズイんじゃねぇの?」

「いや、そんなの全然大丈夫よ。だって部室って言うけど役割はミーティングをする時に使うだけの部屋だし、更衣室もちゃんと別の場所に用意されてるからね。だから男子が入って来たとしても何も問題ないのよ。というか男子テニス部の部員も合同で部室でミーティングとかするしね」

「なるほどな。それじゃあ俺が入っても特に問題は無さそうだな」

「えぇ、何も問題ないわ。それにお昼休みは基本的に部室には誰も来ないから二人きりで食べられるはずよ。だからその……良かったら今日はテニス部の部室で二人きりで食べましょ?」

「あぁ、わかったよ。それじゃあ今日はテニス部の部室で二人きりでお昼を食べような」

「うん、わかったわ。ふふ、それじゃあ約束ね」

「あぁ、わかった。約束だよ」


 という事で今日は紗枝と二人きりで女子テニス部の部室で昼飯を食べる事になった。これは今からお昼休みに入るのがとても楽しみだな。

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