第158話:幸村と一緒にお昼ご飯を食べていく
「あ、そうだ! それで今回のお弁当は幸村のリクエスト通りさ、ちゃんとお肉料理をメインにしてあげたよ」
「え? ほ、本当に? というか私が言ったリクエストを覚えててくれたんだ?」
「はは、そんなの当たり前だろ? まぁそんなわけで肉料理をしっかり食べて午後からも部活頑張ってくれよ」
「うん、ありがとう。それじゃあ早速お弁当を開けさせて貰うわね……って、わあっ!」
幸村はお弁当の蓋を開けていくとすぐに感嘆の声を漏らしていった。
今日の弁当のメニューはハンバーグにほうれん草のお浸しとミニサラダ、それと幸村が好きだって言ってくれた甘めの玉子焼きもちょこんと入れておいた。
「これって……」
「あぁ、もしかして覚えてるのか?」
「ふふ、もちろん覚えてるわよ。これって……アナタが私に初めて作ってくれた晩御飯とほぼ同じじゃないの」
幸村は嬉しそうに笑みを浮かべながらそう言ってきてくれた。幸村がその事に気づいてくれたのが嬉しくて、俺も一緒に笑みを浮かべていった。
実は今回のお弁当のメニューは俺が幸村に初めてご馳走した晩御飯を参考にしたんだ。
「これまで幸村にはちょくちょく晩御飯を作ってきたけどさ、でも何だかんだ言って初回に作ったハンバーグと玉子焼きが一番美味しそうに食べてくれてたからさ。だから今回も美味しく食べて欲しいなって思って初回の献立を思い出して作ってきたんだよ」
「うん、そうね。本当に美味しかったもん。アナタのハンバーグ。それにあの甘い卵焼きもすっごく美味しかったから……うん、これは本当にすっごく嬉しいわ」
「そっかそっか。幸村が喜んでくれたのなら俺も嬉しいよ。それとほら、暖かいお茶もあるから良かったら飲んでくれよ」
「あ、うん、ありがとう。ふふ、アナタって本当に用意周到ね」
「そりゃあ今日は幸村の応援に来たんだから用意周到になるに決まってるだろ。さ、それじゃあさっさと食べちゃおうぜ」
「うん、そうね。それじゃあ……いただきます!」
「いただきます」
そう言って俺達は一緒に手を合わせていってからお弁当を食べ始めていった。
「うん、やっぱりアナタの作るご飯ってすっごく美味しいわね! このハンバーグも卵焼きも凄く美味しいわ! ふふ、でもこんなにも美味しいお弁当を作れるのならさ、菓子パンばかり食べてないで毎日お弁当を作って来ればいいのにね?」
「はは、そんなにも美味しいって言ってくれて本当にありがとな。でも前にも言ったけど自分のお弁当を作るのは毎日早起きしないといけないからメンドクサイんだよ。今日は幸村に食べて貰えるから本気で頑張ったってだけさ」
「え? えっと、そう言って貰えるのは凄く嬉しいけど……でもそれじゃあ今日はもしかして朝はすっごく早起きして作ってくれたの?」
「あぁ、もちろん。いつも頑張ってる幸村を応援するために俺も朝早くに起きて頑張って作ったんだよ。だから幸村が凄く美味しいって笑顔で言ってくれて本当に嬉しいよ」
「そ、そっか。うん……私もすっごく嬉しいよ。本当にありがと……葛原君」
「あぁ、こちらこそだよ」
幸村はちょっとだけ顔を赤くしながら嬉しそうにありがとうと言ってきてくれた。なので俺も笑みを浮かべながらちゃんと返事を返していった。
そしてその後も俺は幸村と一緒にさっきの試合の感想を話しながら楽しくお昼ご飯を食べ進めていった。
◇◇◇◇
それから程なくして。
「ごちそうさまでした」
「あぁ、お粗末様」
お弁当を食べ終えた幸村は手を合わせながらそう言ってきた。そしてそのまま俺に向かって笑みを浮かべながらこう言ってきた。
「すっごく美味しかったわ。本当にありがとう。これで午後からの部活もしっかりと頑張れそうよ」
「それなら良かったよ。あ、そうだ。実はお弁当以外にも食後のオヤツを作ってきたんだけどさ……良かったら食べるか?」
「あ、そうなの? うん、もちろん。運動したばかりだからまだまだ全然食べられるわよ」
「そっかそっか。それじゃあ……ほらこれ。良かったら食後にどうぞ」
「え? って、あ、これって……」
俺はそう言って小さな小包みを幸村に渡していった。その小包みの中には今日の朝に家で作った手作りのクッキーが入ってた。
「ほら、幸村は最近甘いものをついつい食べちゃってるんだろ? だから良かったら食後にも甘い物も食べたいかなーって思って作ってきたんだ。それにクッキーってさ……何だか俺達にとっては思い出の味じゃん? だからお弁当の献立を考えてた時にふとこれも作りたくなったんだよな」
「うん……そうね……本当にそうね……」
幸村は俺が作ってきたクッキーをじっと眺めながら嬉しそうにそう呟いてきた。
「ま、だから良かったら食べてくれよ」
「うん。それじゃあ早速……いただきます」
―― さくっ……
幸村はそう言って早速クッキーを一口食べ進めていった。
「うん。やっぱり……アナタの作るクッキーってすっごく美味しいわね」
「そっかそっか。幸村の口に合ったようで本当に良かったよ。それじゃあ沢山作ってきたし良かったらいっぱい食べていってくれよ」
「うん、ありがとう。でもアナタの家ってオーブンが無いんじゃないかったっけ? それなのにどうやってクッキーなんて作ったのよ?」
「あぁ、クッキーってフライパンでも作れるレシピとかがあるんだよ。まぁオーブンが無い家庭でも簡単に作れる小テクってやつさ」
「へぇ、そんなテクニックまで知ってるんだ? ふふ、やっぱりアナタって料理に関しての知識は凄いのね。それにしてもアナタの作るクッキーって本当に美味し過ぎるわね……これだとクッキーを食べる手が全然止まらなくなっちゃうわ」
「はは、そりゃあどうも。でもクッキーに関しては俺が作るよりももっと美味しいクッキーを知ってるんだけどな」
「え? そうなの? それってどんなクッキーなの?」
「そんなの決まってるだろ? 俺が一番美味しいって思ってるのはさ……もちろん幸村が作ってくれた手作りのクッキーだよ」
「……え?」
俺がそう言っていくと幸村はキョトンとした表情で俺の事を見てきた。どうやらそんな回答が飛んでくるとは思ってもいなかったようだ。
だから俺は満面の笑みを浮かべながら幸村に続けてこう言っていった。
「はは、何でそんなキョトンとした表情してるんだよ? 普通に考えてみてくれよ。俺にとって一番美味しいクッキーってのはさ……そんなの大好きな女の子の作るクッキーに決まってるだろ」
「……葛原君……」
俺は満面の笑みを浮かべながらそう言っていくと、幸村は顔を赤くしながらも少し嬉しそうに俺の事をじっと見つめてきてくれた。
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