第151話:幸村の進路希望について

 まぁでも幸村にそんな意識されてギクシャクとされてしまうのも嫌なので俺は話を反らしていく事にした。


「まぁそれにしても学校でも試験があったばかりなのに、塾でも試験があるって大変だな。それに模試の方が学校の中間試験なんかよりも遥かに難しいんだろ?」

「ん……ま、まぁね。でも模試だって今の私達には凄く大切だから全然良いんだけどね。だって高校三年生に進級したらすぐ大学受験がやってきちゃうわけだしね」

「あぁ、確かにそうだよな。高校三年生になったらすぐに受験戦争が始まるんだよな。でも幸村くらい真面目で成績優秀な生徒なら学校推薦とか貰えるんじゃないのか?」

「うーん、まぁ確かにそういう制度もあるけど、でもそれを使っても必ず合格するわけじゃないしね。だから私は高校生の間は最後までしっかりと勉強を頑張るつもりよ」

「そっか、なるほどな。うん、それじゃあとりあえず幸村が今度の模試で良い点を取れるよう陰ながら応援してるよ」

「う、うん、ありがと」


 という事で塾に通っている生徒達はこれから近い内に模試が控えてるらしい。学校の試験が終わったばかりなのに今度は模試があるなんて本当に大変だよな。


 そして当然だけど俺は塾に通っていないので塾の模試は俺には関係のない話だ。そして今後も俺は塾に行くつもりは全然ない。だって俺は大学進学なんて全然考えてないしさ。


(でもそろそろ俺もちゃんと進路を考えた方が良い頃合いだよな)


 今の所は雑に就職するって事しか考えてなかったけど、でもさっさと就職するよりも専門学校に行って資格取ってから就職した方が良いって場合もあるよな。


 そういうのは今までの綾子を見てるとやっぱり出来るだけ早めに資格を取った方が良いってのは何となく感じるしさ。


(そこら辺に関してはちゃんと綾子と話し合った方が良いよな)


 それにこれからは綾子に何でも気軽に相談するって約束したわけだし、これから近い内に綾子とは俺の進路についての話をちゃんとしようと思っていった。


「……どうしたのよ? 急に黙っちゃって?」

「んー? あぁ、いや、なんでもないよ。ちょっと俺の進路について色々と考えてただけだよ……って、あ、そうだ。そういえば幸村って進学予定なんだよな? それじゃあ志望大学とかはもう決めてるのか?」

「え? 私の志望大学?」


 塾の模試を受けるという事は幸村は進学予定のはずだ。そして幸村はかなり頭の良い女子だから難関大学を志望してたりもするのかな?


 という事で俺は何となく幸村の進路が気になっていったので、軽い気持ちでそう尋ねていってみた。


「うーん、まぁそりゃあザックリとは決めてるわよ。えぇっと、例えばここの大学とか、ここら辺の大学を考えてるわね」

「ほうほう、なるほどなるほど」


 そう言って幸村は鞄の中から大学の赤本を二冊ほど取り出してきた。それは誰もが知っているような超有名な難関大学の赤本だった。


「へぇ、凄いなー! やっぱり幸村はちゃんとそういう上位の大学を目指してるんだな!」

「まぁね。せっかく勉強はそこそこ出来るわけだし、それならちゃんと良い大学に行きたいなって思ってね。それにまぁ……良い大学に入れたら両親も喜んでくれるだろうしね」

「はは、そっかそっか。うん、そうだよな。やっぱり前々から思ってたけど幸村ってさ……すっごく家族思いで優しい女の子だよな」

「えっ!? な、何よ急に!?」

「はは、ごめんごめん。つい思ってた事を口に出しちゃっただけだよ」


 俺がそう言うと幸村の顔はまた真っ赤になっていってしまった。なので俺は笑いながらゴメンと謝っていった。


 でも前々からそう思ってたんだけど、幸村って家族の事が本当に大好きなんだろうな。


 だってちょっと前だけど幸村が髪の毛をお試しで染めてみた時も、一番最初に母親に見せてあげたいって言って急いで帰った事もあったしさ。


 だから俺は幸村が家族の事を本当に大好きに思っているんだろうなって何となくそう感じ取っていたんだ。


(そしてそういう家族思いで優しい所も、俺が幸村の事を好きになったポイントの一つなのかもしれないな)


 俺はそんな事を思いながら、恥ずかしそうに顔を赤らめている幸村の事をじっと見つめながら優しく微笑んでいった。


「そ、そんな冗談言わないでよね。は、はぁ、全くもう……あ、そうだ。そ、そういうアナタはどうなの? アナタは進路とかは決めてるの?」

「んー? いや、俺は具体的な進路はまだ決めてないよ」

「ふ、ふぅん、そうなんだ? でも近い内に二者面談もあるし、ある程度は決めておいた方が良いんじゃないの? 何も進路を決めてないと先生が困ってしまうわよ?」

「あぁ、確かにそうだな。だからそれまでに綾子と話し合ってある程度の進路は決めておこうと思うよ。心配してくれてありがとな、幸村」

「べ、別に心配したとかそういう事じゃないけど……ま、まぁでも、進路について友達目線でも聞きたい事とかあったら私で良ければいつでも相談に乗るからね? だ、だから、まぁその……困ったらいつでも私に言いなさいよ?」

「あぁ、わかった。必ず相談するよ」

「ん……」


 という事で俺は幸村とそんな約束を交わしていった。そしてその後は俺もしっかりと自分の勉強を始めていく事にした。

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