第148話:帰宅後の独り言(紗枝視点)
葛原君と映画を見に行った日の夜。
「うー……!!」
―― バタバタッ!
私は自分の部屋のベッドにダイブして枕にうずくまりながら足をバタバタとさせていっている所だった。
こんなバタバタとしている姿は両親とかヒロとかには絶対に見られたくない。そう思う程に今の私はかなり子供っぽい態度を取っている所だった。
(でも……しょうがないじゃん……!! だって……だって……!)
だって私は今日生まれて初めて真剣な告白をされたんだもん……!! いや、告白という意味では今までもにも学校でちょくちょく告白はされてきたんだけど。
でも皆別にそこまで本気の気持ちで私に告白をしているわけではないと思っていた。だってそこまで仲の良い男子から告白をされた事がなかったから。多分その場のノリとか雰囲気で告白してきた男子も多かったと思う。
「だから……いつもだったら……すぐに答えを返せたのに……」
だから私は告白を受けた時はいつもすぐその場で全て断っていた。
まぁこういう事を言うと『お前は少女漫画の見過ぎだろ』って馬鹿にされるかもしれないけど……でも私はお付き合いをするならちゃんと相手の事を良く知っている人じゃないと嫌だったんだ。
やっぱりお付き合いするのなら友達として仲が良くて裏表なく何でも話せるようなくらい親しい間柄じゃないと……そういう人じゃないと私はお付き合いをしたいなんて絶対に思えなかった。
そ、それにその……も、もしかしたらお付き合いする人と将来結婚する可能性もあるわけで……だ、だからもしお付き合いをするのであれば、そういう将来の事を考えても良いくらいに“信頼”出来る人じゃないと私は嫌だった。
ちゃんと私の全てをその人に捧げても良いって思えるくらいに信頼出来る人じゃないと私は嫌だったんだ……。
だから私がお付き合いをする可能性があるとしたら、それはヒロだけだとずっと思ってた。だってヒロの事は幼馴染で何でも知ってるし、“信用”はしてる。それにまぁ……ヒロの事はずっと好きだと思ってたわけだしさ……。
という事で私は今までは好きだと思ってたヒロのために告白を受けてもいつも断っていたんだ。でも……。
「うー……」
でも今日は仲の良い友達である葛原君から告白をされた。そしていつもの私なら告白を受けてもすぐに断っていたんだけど……でも今日の告白だけはすぐに答えを出す事は出来なかった。
というかそもそも私は葛原君にそう思われていたなんて知らなくてとてもビックリとしてしまった。なので私は家に帰って来た今でも私の顔は真っ赤になったままの状態だ。
でも私は葛原君に告白をされた事に……少なからず嬉しいという気持ちが私の心の中にあった。そして凄くドキドキとする気持ちが今もずっと続いていた。でも……。
「何なんだろう……このドキドキとする気持ちは……」
でも私にはこれがどういう気持ちなのかよくわからなかった。
だって私は子供の頃はヒロの事が好きだったはずなんだ。でも私はこんなにもドキドキとした気持ちをヒロと一緒にいた時に感じた事はなかった。
「こんな気持ちになったのは……生まれて始めてだよ……」
そしてこのドキドキとした気持ちの事を一般的には何と呼ぶのか……私にはそれがわからなくて非常に困惑としていた。
もしかしたら葛原君の事を考えてるとドキドキとするこの気持ちこそが“本当の好き”っていう気持ちなのかな? それとも好きとは違う別の気持ちなのかな……?
どちらにしても……ヒロには感じた事のないこのドキドキとした気持ちの正体が何なのかしっかりと考えていかないと……葛原君に告白の答えを返すのは無理だよ……。
―― あぁ、いつまでも待つよ……
「……ううん、そんなに待たせる訳にはいかないよね……」
今日葛原君は私にそう言ってくれたけど、でもだからと言って長い間も待たせる訳にはいかない。だってその……葛原君はとてもカッコ良い男の子だから……。
だからもしかしたら私なんかよりも、もっと素敵な女の子の事を好きになるかもしれないよね。いやもしかしたら、これからすぐに素敵で可愛いらしい女の子から告白とかされるかもしれないよね……。
「何だか……それは嫌だな……って、あ、あれ……?」
―― チクリッ……
何だか急に胸の奥がチクリと痛み出した。
そしてさらに葛原君が他の女の子と仲良くしてる所を想像すると……今度は物凄く嫌な気持ちになっていってしまった。
でも訳も分からずこんなにも嫌な感情が芽生えてくるなんて今まで一度もなかったと思う。それほどまでに今日の私は凄く様子がおかしかった……。
「まぁでも……葛原君が言ってくれたように……今は一生懸命に考えてみるしかないわよね……」
だって結局この気持ちに整理をつけられるのは私しかいないんだ。だから今はしっかりと悩むだけ悩んでいこう……。
―― ピコンッ♪
「……?」
するとその時、私のスマホが鳴り出した。どうやらLIMEのメッセージが届いたようだ。
なので私は一旦考えるのをやめてスマホを開いていってみた。すると……。
『今日はありがとう。凄く楽しかった。また一緒に映画見れたら嬉しいよ』
するとそれは葛原君からのメッセージだった。今日のその……で、デートの感想を葛原君はメッセージで伝えてきてくれたんだ。
とても簡潔な文章だったけど、でも葛原君らしいメッセージだと私は思った。
「……ふふ」
私はそんな彼から届いたメッセージを見ていると、さっきまで凄く嫌な気分だったのから一転して今は何だかとてもポカポカとした気持ちに変わっていっていた。
―― パタパタ……
そして私は何だか凄く嬉しくなっていってまた足をパタパタと楽しく叩きながら、私も葛原君にメッセージを送っていく事にした。
『私の方こそありがとう。とても楽しかったわ。また一緒に行きましょうね』
『ピコン♪(お辞儀をするネコのスタンプ)』
「これで良しと……ふふ」
という事で私の方からもしっかりと楽しかったという旨のメッセージを葛原君に伝えていった。うん、今日は本当にすっごく楽しい一日だったわ。だからまた……一緒に遊びに行きたいな……。
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