第147話:一旦保留という事で
という事で俺は意を決して幸村に告白をしていってみた。でも幸村は俺の言葉を聞いて一瞬で固まってしまった。
とりあえず俺は幸村が正気に戻るまでノンビリと待ち続けていってみた。
「え……って、えっ!? え、えぇっ!?」
「あ、おかえり」
「えっ!? あ、う、うん、ただいま……って、違う違う! え、えっと、その……ほ、本気なの?」
それから程なくして正気に戻った幸村は滅茶苦茶にビックリとした表情をしながらも俺にそう言ってきた。
「本気に見えなかったか?」
「えっ!? い、いや、それはその……ほ、本気に見えなかったとかそんな訳じゃないんだけど……でも一応確認というかその……」
俺は真剣な表情でそう聞いていくと、途端に幸村は顔を赤くしながらモジモジとしだしていった。
「え、えっと、その……こ、こんな事をアナタに聞くのもアレなんだけどさ……そもそも私の何処が良いのよ?」
「うん? それってどういう意味だよ?」
「い、いや、その……だって私……自分で言うのもアレだけど……凄く頑固だし、怒りっぽいし……そ、それに身体付きだって別にそこまで良いわけじゃないし……だからそんなに男の子に好かれる要素なんて全然無いというか……」
幸村は顔を赤くしながらもそんな悲観的な事を言ってきた。
(あぁ、そっか……そういえば幸村って自己肯定感の低い女の子だったよな……)
幸村は自分に自信がないと思っている事は前々から知っていた。そしてそういう自信のない部分を俺が幾らそんな事はないと否定しても、幸村は中々に認めようとしてくれない事も知っている。
だから俺はそれを十分に理解した上で、しっかりと幸村が好きな理由を伝えていく事にした。
「俺が幸村の事が好きな理由か。うーん、まぁそりゃあ色々と理由はあるけど……うん。でもやっぱり一番の理由はさ、幸村と一緒に居るのが凄く楽しいからだよ」
「……え? 私と一緒に居るのが楽しい?」
「あぁ、そうだよ。幸村と一緒に勉強会を開いたり、一緒に晩飯を食ったり、祐奈と三人で遊んだり、そして今日みたいに一緒にデートしたりさ、今まで幸村と一緒に色々な事をしてきたけどどれも凄く楽しかったんだ。それで幸村はどうだった? 今まで俺と一緒に過ごしてきて幸村は楽しかったか? それとも嫌だったか?」
「え? そ、それは……まぁ……私も楽しかったとは思うけど……」
「はは、それなら良かった。って事で俺が幸村の事を好きな一番の理由はそれなんだよ。俺は今までずっとさ……幸村と一緒に過ごす毎日が凄く楽しかったんだ。そしてこれからも俺はずっと幸村の隣で一緒に過ごしていきたいって本気で思ったんだ。だからさ……俺と付き合わないか?」
「……っ」
俺は真剣な表情のままそう伝えていくと、幸村の顔はまるでトマトのようなレベルにまで真っ赤になっていった。そしてそのまま幸村は顔を真っ赤にしたまま黙りこくってしまった。
そしてそれから長い沈黙の後、ようやく幸村は俺に向けて静かにこう口を開いてきた。
「え、えっと……その……い、一旦……ほ、保留にさせて貰っても……いい?」
幸村は顔を真っ赤にしたまま全力を振り絞って俺にそう言ってきた。とりあえず一旦保留にして欲しいという回答だった。
「あぁ、そんなの全然構わないさ。でも何か俺の告白に問題でもあったか?」
「えっ? って、あ、い、いや! そ、そういうわけじゃなくて、その……! あ、アナタと一緒に居ると私も楽しいって思うし……これからもずっと一緒に過ごしたいって言われて凄く嬉しかったんだけど……で、でもその……こ、こういう事はその場の雰囲気に流されて適当に答えるんじゃなくて、ちゃんとしっかりと考えなきゃ駄目だと思って……だ、だからその……少しだけ考える時間が欲しいなって思って……」
幸村は恥ずかしそうにしつつ声も思いっきり震わせていたんだけど、でも保留にしたい理由や今の幸村の考えなどをしっかりと言葉にして俺に伝えてきてくれた。
(はは、流石は幸村だな)
俺の告白をその場の雰囲気に流されて決めるんじゃなくて、ちゃんと自分でしっかりと考えて答えたいと言ってきたのは何とも幸村らしい回答だなと思った。
そしてやっぱり幸村は俺に対していつも誠実で居てくれようとしてるんだなって改めてそう感じていった。
「あぁ、わかったよ。それじゃあ俺の告白の回答についてはいつでも良いよ。幸村の思いが決まるまで待ってるからさ、だからしっかりと考えていってくれよ」
「う、うん。ご、ごめんなさい……本当はすぐに答えるべきなんだろうけど、でも……私、告白をされた事なんて始めてだから、ちゃんと考えたくて……だ、だからもしもアナタが他の女の子に心変わりする事があったら……私はそれを咎めたりなんてしないから……だからその時は私に気にせず他の女の子とお付き合いして貰ってもいいからね……」
「ん? あぁ、大丈夫だよ。俺は幸村一筋だからさ。他の女子に心変わりする事なんて無いから心配しなくていいよ」
「え……って、えぇっ!? あ……う……っ……」
「俺は幸村の答えが決まるまでずっと待ってるよ。だからさ……俺の告白について納得いくまで一生懸命に考えていってくれよ?」
俺がそう言ってくと幸村は恥ずかしそうにしながらさらに顔を真っ赤にしていった。
「う……そ、そういう……恥ずかしい事言うの禁止よ……」
そして幸村は顔を真っ赤にしながらもジトっとした目つきで睨んできた。何だかいつも通りの幸村を見れた気がして俺はついつい笑みを浮かべていった。
「はは、本当の事なんだからしょうがないだろ。よし、それじゃあ今日はいつも通り仲の良い友達同士として楽しく過ごしていこうぜ。あ、そうだ。それじゃあもし良かったら何か軽く飯でも食ってから帰らないか? ほら、せっかくだしさ、飯でも食いながらさっきの映画の感想でも沢山語っていこうぜ?」
「えっ? あ、う、うん……私もそれは是非ともしたいわね」
俺がそんな提案をしていくと、幸村は顔を赤くしたままだったけど、いつも通りの口調でそう言ってきてくれた。
まぁ俺達って恥ずかしい事や怒ったりするような事が起きたとしても、結局すぐにいつも通りの関係に戻れるのは凄く良い所だよな。
「よし、それじゃあ確か駅前にファミレスがあったはずだし、とりあえずそこに向かおうぜ」
「うん、そうね。わかったわ」
という事で俺達はそう言って早速駅前にあるファミレスに向かって歩いて行った。
そしてそのまま俺達はファミレスで先ほどの映画の感想を楽しく語り合ってから今日は解散をしていった。うん、今日は一日中とても楽しかったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます