第146話:そしてついに……

 それから数時間後。


 映画上映が終わったシアターにて、俺は席を立ちあがりながら興奮気味に幸村にこう語りかけていった。


「いやー……すっごく面白かったな! 小説再現度が高すぎてちょっと感動しちゃったよ!」

「うんうん、本当にね! それに小説を忠実に再現してるだけじゃなくて、ちゃんと主人公達の心理描写を追加して内容補完を完璧にしてくれたのも凄く良かったわ!」

「あぁ、それは俺も凄く思ったな! 正直小説を読んでた時は主人公達の心情とか気持ちとかをもう少し書いて欲しいなって思ってたからさ……だから映画でちゃんとそういう心理描写も沢山描かれてくれてて本当に良かったよ!」

「ふふ、そっかそっか。うん、アナタもすっごく楽しんでくれてたようで本当に良かったわ……って、あ、そうだ。それとさ……ブランケットを持ってきてくれて本当にありがとね。確かにちょっとだけ寒かったからブランケットがあって凄く助かったわ」

「ん? あぁ、それなら良かったよ」


 幸村がちょっと顔を赤くしながら感謝の言葉を伝えてきてくれたので、俺は笑いながらそう返事を返していった。


「それじゃあ掃除係のスタッフさんの邪魔になるかもだし、そろそろシアターから出て行こうぜ」

「あ、うん、確かにそうね。それじゃあさっさと受付の方に戻っていきましょうか」

「あぁ、わかった」


 という事で俺達は利用した紙コップとブランケットを映画館スタッフに手渡してシアタールームを後にした。


 そして映画館の受付ホールに戻って来た俺達はまたさっき見た映画についての話を始めていった。


「いやー、本当に面白かったわよね。それに映画館の大スクリーンで見るのって凄く迫力があって良いわよね。あとはやっぱり映画を見るのって小説を読むのとはまた違った感じが味わえるから凄く楽しかったわ!」

「あぁ、確かにそうだよな。俺も映画で見る事によってさらにあの作品を深く理解出来た感じがして本当に良かったよ。それに俳優さんも凄いはまり役だったし再現度がマジで滅茶苦茶に高かったよな。小説原作の作品でこんなにも感動したのは初めてかもしれないな」

「うんうん、私も今まで見てきた映画作品の中で多分トップ3には入るくらいの傑作映画だったわ! ふふ、でもこんなに凄いともう一度見たくなっちゃうわね……あーあ、早くサブスクしてる動画サイトに追加されて欲しいわー」


 幸村はとても嬉しそうな表情をしながらそんな事を言ってきた。


「へぇ、幸村は好きな映画とかは何度も見直したくなるタイプなのか?」

「そうね。まぁでも別に映画だけじゃなくて、ドラマとか小説とか何でも面白いと思ったら何度も見返したくなるタイプかもね。何度も見返してみると新しい発見とかがあって楽しいものなのよ」

「あぁ、なるほどな。そういや確か前にも幸村はそんな事を言ってたよな」


 そういえば前にそんな事を言ってたよな。小説を何度も読み返すと楽しいからオススメだって言われたよな。


「うん、そうなのよ。そういうアナタは好きな映画とかドラマは見返したりとかはしないタイプなの?」

「うーん、そうだなぁ……俺は基本的に映画とかドラマは一回見たら結構満足しちゃうタイプかもしれないな。だからそういうのはあんまり見返したりとかはした事はないかもしれないな」

「ふぅん、そうなんだ? でも映像作品とかも何度も見返してみると色々と新しい発見とかあるから面白いと思うわよ。ま、だから良かったらいつか試してみて欲しいわね」

「はは、そっか。うん、それじゃあ早速俺も試してみたいから……だから良かったらさ、もう一度この映画を一緒に見に行かないか?」

「……えっ? い、いや私としてはもう一度見返したいと思ってたからそう言ってくれるのは嬉しいけど……でもアナタって普段は見返したりするタイプじゃないんでしょ? そんないきなり試したくなる程にこの映画が面白いって思ってくれたの?」

「あぁ、うん。映画が面白いと思ったのはもちろん事実なんだけど、でも俺は単純にまた幸村とこうやって二人きりで出かけたいって思ったんだよ。そしてそれは映画だけじゃなくてさ……これからは他にももっと色々な所に幸村と二人きりで出かけたいんだ」

「えっ? あ、う……」


 俺が笑いながらそう言うと幸村は途端に顔を赤くしながら俯いてしまった。


「え、えっと、その……そ、そういう恥ずかしい事を面と向かって言うのはどうかと思うわよ? そ、そんなに何度も“二人きり”って言葉を強調するなんてさ……」

「そんなに恥ずかしい事を言ったつもりなんてないんだけどな? だって俺は本心から思った事をそう言っただけだしさ」

「だ、だからその! そ、そういう事を言うと、えっと……か、勘違いとかされちゃうかもだからあんまり言わない方がいいわよ! だ、だから、えっと……そ、そういうのはちゃんと好きな女の子にやってあげなさいよね?」

「ん? あぁ、そっか。そういう事か……」


 幸村は顔を少し赤くしながらそんな事を言ってきた。どうやら俺の言った言葉の意図が伝わっていないようだ。


 まぁ確かに原作の主人公もヒロインも恋愛部分に鈍感な部分があるからな。だから回り道気味な好意の伝え方をしても幸村は気が付いてくれないだろうなぁ……。


(それに俺が思っているこの気持ちをちゃんと真っ正面から幸村に伝えないのは流石にダサ過ぎるよな)


 こういう好きっていう気持ちに嘘を付くのは絶対に良くないし、それに好きなのにその気持ちを真っすぐに伝えないなんていうのも男らしくなくて凄くダサいよな。だから俺は……。


「……って、あ、そ、そうだ! そういえばアナタにお金を返さなきゃね! それじゃあ今日の映画代とさっきのジュース代を払うわね。え、えぇっと……そういえば結局全部で幾らしたんだっけ?」

「ん? あぁ、いや別に良いよ。今日は俺が全部支払っておくから幸村は気にしないで良いよ」

「え? べ、別に良いって……い、いやそんな訳にはいかないでしょ。ちゃんと払うから幾らか教えなさいよ」

「はは、良いって良いって。だって今日はさ……俺としては幸村とデートのつもりで来たんだからさ」

「え……?」

「だから今日の遊び代は俺に全部払わせてくれよ? 最初のデートくらい俺に全部払わせてくれよな」

「え……って、えぇっ!? ふぇっ!? で、でーと!?」


 俺がそう言っていくと、幸村の顔はみるみる内に赤くなっていっていた。


「な、なななな、何言ってんのよ!? アナタ、それ……ど、どういう意味で……そ、そんな事を言ってきてるのよ……?」


 幸村は顔を真っ赤にしながら俺に向かってそう尋ねてきた。今の言葉の真意を教えろと言ってきた。だから俺は……。


「好きだ」

「……え?」

「俺はさ、幸村の事が……好きなんだよ」


 だから俺は幸村に向かって真剣な眼差しでそう伝えていった。


 それはたった数文字しかない言葉だったけど、それでも俺はその少ない言葉に噓偽りのない本当の気持ちを乗せて幸村にそう伝えていった。


―――――――――

・あとがき


ついに文字数が40万文字を越えました。


今まで小説を書いてきてここまでの文字数に到達したのは人生で生まれて初めてです。


そして私がここまで小説を書く事が出来たのはいつも読みに来て頂いてる読者の見様のおかげです。いつも読みに来て頂き本当にありがとうございます!


本作品に関してはおそらく60万文字くらいで完結する予定となっていますので、これからのストーリーも楽しみにして頂ければ幸いに思います。

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