第140話:うーん、俺の着て行く服どうしようかな?

 とある日の放課後。


 俺は教室の中で幸村と一緒にとある話をしていた。


「そ、それじゃあ映画に行く日にちは再来週の土曜日で良いのね?」

「あぁ、それで大丈夫だよ。時間帯については昼過ぎで良いよな?」

「え、えぇ、私はお昼過ぎで大丈夫よ」


 とある話とは幸村と見に行く約束をしている映画についての話だった。もうすぐ映画が公開されるので、俺達は一緒に映画に行く日を決めていってる所だった。


「わかったよ。それじゃあ予約受付が始まったら俺の方で事前に予約しとくな」

「え、えぇ、わかったわ。それじゃあそういう事でよろしくね。あ、えっと、私今から部活だから……そ、それじゃあまたね!」

「ん? あぁ、またな」


 映画に行く日にちと時間帯が無事に決まったので、幸村はそう言いながら急いでテニス部の部活に行っていった。俺はそんな急いで走っていく幸村の背中を静かに見送っていった。


「うーん? 何だか最近ずっと挙動不審気味なんだよなぁ……」


 幸村を見送りながら俺はそんな事を呟いていった。ちょっと前に俺の家に遊びに来てから幸村の様子が少しおかしい気がするんだよな。


 まぁでも幸村から距離を置かれてる訳じゃないし、普通に話したりとか昼飯を食ったりとかしてるから全然良いんだけど……でも何でいきなり挙動不審気味になってるんだろう?


「うーん、ま、とりあえず今はそんな気にしないで良いか。そんな事よりも今は幸村と遊びに行く時の服装をどうするか考えないとマズイよなぁ……」


 俺は腕を組みながらそんな悩みを呟いていった。


 実はちょっと前から幸村と二人きりで遊びに行くための服装をどうするかという問題をずっと悩んでいたんだ。


(だって俺の持ってる服って……派手な服装ばっかりなんだよなぁ……)


 家の服棚にはシンプルな服だってもちろん多少は置いてある。でも大半はイカついスカジャンやらライダースジャケットやら、まぁそういう派手目な服ばっかりだった。


(いや確かに金髪ピアス時代の俺だったらそういうイカつい服装がめっちゃ似合ってただろうけどさ……)


 そしてもちろん今の真面目スタイルな俺にだって似合うかもしれないけど……でも流石に幸村と二人きりで遊びに行く時の服装には全く適してないからな。


 という事で改めて俺は幸村と二人きりで遊びに行くための服装をどうするかを悩んでいっていたというわけだ。


「うーん、どうしたもんかなー……」

「おつかれーっす、葛原ー」

「ん? あぁ、黒木か。おつかれっす」


 そんな感じで俺は腕を組みながら物凄く悩んでいると、唐突に後ろから黒木が声をかけてきた。


「あぁ、おつかれーっす。って、あれ、どうしたよ? めっちゃ眉間にしわが寄ってるけど何か問題でもあったか?」

「んー? あぁ、いや、ちょっとなぁ……って、あっ」


 俺は黒木の顔を見たその時、ふいに少し前に黒木が俺に言ってきてくれた言葉を思い出していった。


―― 何か俺に力になれる事があればいつでも頼ってくれよな?


 そうだった。そういえば今の俺には気軽に相談する事が出来る友人がいるんだったよな。なので俺は思い切って黒木にこんな事を尋ねていった。


「えっと、いや実はさ……今度幸村と二人きりで遊びに行くんだ」

「えっ!? そうなのか! はは、それはめっちゃ良いじゃん! 全力で楽しんで来いよー!」

「あぁ、そう言ってくれてありがとな。でもちょっとだけ問題があってさ……俺、女の子と二人きりで遊びに行くための服を持ってねぇんだよ」

「え? そうなのか? って、いや流石にそんな事はないだろー? 何着かはデート用に使える服くらいあるだろ??」

「いや、全然そんな事があるんだよ。だって今までは金髪ピアス姿に合うようなド派手な服ばっかり買ってたからさ……だから今の俺に合いそうな服って何も持ってないというか、そもそも今の俺に似合いそうな服ってどんなんがあるかわかんねぇなーって思ってさ……」

「あー、なるほどな。確かにそう言われたら昔と今の葛原って全然姿が違うもんな。うん、葛原の悩んでる事は理解出来たわ」


 黒木は俺の話をしっかりと聞きながら何度もうんうんと頷いていってくれた。


「うーん、でも幸村さんと遊びに行く日がもう決まってるのなら、それは早急に解決しないとならない悩みだよなー……って、あ、そうだ! それじゃあさ、今日この後暇なようなら駅前の服屋にでも行って服を見てから帰るか? 今の葛原に合いそうな服を俺が何着か見繕ってやるよ」

「え? マジで? 良いのか?」

「あぁ、全然良いよ。ってか友達が悩んでる時はいつでも助けるに決まってるだろ?」

「黒木……いやマジでお前って最高に良い奴だよな! 顔も性格もイケメン過ぎるだろ!」

「はは、ありがとな」


 俺がそんな事を言っていくと黒木は明るく笑みを浮かべていってくれた。


(いや、マジで黒木って良いヤツ過ぎるよなー。俺が女だったら絶対に黒木みたいな男に惚れるだろうな)


 俺がそう思うくらいに黒木は凄く気配り上手なイケメン男だった。そしてこんな良い奴と友達になれて本当に良かったと改めてそう実感していった。


「うん、でも本当に良かったよ」

「ん? 良かったって何がだよ?」

「いや、ちょっと前に幸村さんの事が好きだって俺に教えてくれただろ? それで、それから何か進展があったのかなってちょっと気になってたんだけどさ、でもちゃんと二人の距離が縮まっているようで本当に良かったなって思ってさ」

「あぁ、まぁそりゃあな。だって黒木にこれから頑張るって宣言したばかりだし、何も行動しなかったらちょっとダサ過ぎるだろ?」

「そっかそっか。はは、やっぱり葛原ってめっちゃカッコ良いよなー。あんまりウジウジとしないっていうか、決めたらすぐに行動する所が男らしくて本当に良いと思うよ」

「はは、そう言ってくれてありがとな。まぁという事でさ、今日は俺の服を買うのを手伝って貰っても良いかな? お礼はまた今度しっかりとするからさ」

「あぁ、もちろんだよ。それじゃあ早速駅前を目指していこうぜ!」

「了解!」


 そう言って俺達はそれからすぐに駅前の服屋さんへと向かって行った。そしてそこで黒木の力を借りながら俺に合いそうな服を買っていったのであった。

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