第139話:祐奈ちゃんと楽しくお喋りしていく(紗枝視点)

 晩御飯を食べ終わってから少し経過した後。


 葛原君は台所に行って洗い物をしていっていた。いつもなら私も葛原君の洗い物の手伝いをしていたんだけど、でもここ最近はその時間を祐奈ちゃんの勉強を見てあげる時間に使っていた。


 葛原君からも祐奈ちゃんの面倒を見てくれると凄く助かるからお願いするって言われたので、私は祐奈ちゃんと一緒に居る事を優先するようにしていた。


「うん、これで全部正解だよ! 凄いね祐奈ちゃん!」

「本当に! やった!」


 という事で私はリビングのテーブルに座りながら祐奈ちゃんがわからないと言っていた問題の解き方を教えてあげていっていた。


 葛原君の時もそうだったんだけど、祐奈ちゃんもわからない所や気になる所は何でも素直に聞いてくれるので、教え甲斐があってとても楽しい時間を過ごせていた。


「うんうん、やっぱり祐奈ちゃんはだいぶ物覚えが良いね。小学生だった頃の私よりも遥かに勉強出来てると思うわよ」

「え、そうかな? でもそれはお姉ちゃんの教え方がすっごく上手だからだよ! いつも本当にわかりやすいもん!」

「ふふ、そっかそっかー。祐奈ちゃんにそういって貰えたら嬉しいな。それじゃあ他にも何かわからない問題とかはあるかしら?」

「ううん、今日のわからなかった問題はこれで全部解決したから大丈夫だよ! あ、ねぇねぇ、それじゃあここからはお姉ちゃんと色んなお話しをしたいな!」

「えぇ、もちろん良いわよ。それじゃあどんなお話をしていこっか?」


 という事で問題を全て解き終えた祐奈ちゃんと私は色々なお話をしていく事にした。


「あ、それじゃあさ、ちょっとだけ待ってて! お姉ちゃんに見せたいモノがあるんだ!」

「え? うん、わかったわ」


 そう言って祐奈ちゃんはテーブルから立ち上がって一旦自分の部屋に戻っていった。そしてそれからすぐに可愛らしいパーカーを着てリビングに戻ってきた。


「お待たせお姉ちゃん!」

「おかえりなさい。ふふ、可愛いらしいパーカーだね。もしかして新しく買って貰ったのかしら?」

「うん、そうなんだ! 昨日お母さんとお兄ちゃんと一緒にショッピングモールに出かけた時にこれ買って貰ったんだー!」


 どうやら昨日は祐奈ちゃん達は家族三人で遊びに出かけていたらしい。本当に家族仲が良くて微笑ましい限りだ。


「そうだったんだね。昨日のお出かけは楽しかったかな?」

「うん、楽しかったよ! それに帰る前にお兄ちゃんがクレープを買って貰ったんだ!」

「そっかそっかー。ふふ、それは優しいお兄ちゃんね。そう言えば祐奈ちゃんはお兄ちゃんと同じで甘い物は好きなのかしらね?」

「うん、甘い物大好きだよ! 昨日食べたクレープも凄く甘くて美味しかったから、お姉ちゃんも良かったら食べてみて欲しいな!」

「そっか。うん、わかったわ。それじゃあいつか食べに行ってみたら感想を言うわね」

「わかった! ちなみにお兄ちゃんのオススメはチョコバナナクリームだよー!」

「へぇ、そうなんだ。うん、それじゃあせっかくだしお兄ちゃんのオススメのクレープを食べてみるわね」

「うん、是非是非!」


 という事で私は祐奈ちゃんから葛原君のオススメのクレープ味を教えて貰った。やっぱりこの兄妹はとても仲が良いのね……って、あっ!


(そ、そっか! 葛原君の事を一番知ってるのってどう考えても妹の祐奈ちゃんでしょ!)


 そして瞬間に私はちょっと前から悩んでいるある事をすぐに思い出した。なので私はそれについて祐奈ちゃんに尋ねてみる事にした。


「あ、ね、ねぇ、そういえばさ……」

「うん? どうしたのお姉ちゃん?」

「う、うん、あのさ、祐奈ちゃんのお兄さんについて聞きたい事があるんだけど……」

「えっ、お兄ちゃんについて!? うんうん、いいよ! 何でも聞いてよー!」


 私が葛原君について聞きたい事があるというと、祐奈ちゃんは目を輝かせながら何でも聞いてと言ってきてくれた。


 その嬉しそうな祐奈ちゃんの様子からしてお兄さんの事が大好きなんだというのがとても伝わってくる。


「え、えぇ、ありがとう。そ、それじゃあ、その……お兄さんの好きな女性の服装とかファッションとかって祐奈ちゃんは知ってたりしないかな?」

「え? お兄ちゃんの好きな女の人の服装?」


 という事で私は前々からちょっと悩んでいたその悩みを祐奈ちゃんに尋ねていってみる事にした。


 まぁ流石に祐奈ちゃんもお兄さんの好きな女性の服装なんてわからないと思うけど、でも葛原君の妹だからこそ知っているとっておきの情報とかもあるかもしれないしね。


 だから私の知る事の出来ない身内情報を少しでも貰えたら嬉しいんだけど……。


「うーん、そうだねぇ、好きな女の人の服装ってのはあんまりわからないけど……あ、でもお兄ちゃんって昔からちょっと怖い虎とか龍とかの絵柄が入ったジャンパーをよく着てたから、多分そういう服装の女の人が好きなんじゃないかな?」

「怖い絵柄の入ったジャンパー? あぁ、もしかしてスカジャンの事かしらね?」


 祐奈ちゃんの話からしてどうやら葛原君はド派手な刺繍の入ったスカジャンを好んで着る事が多いらしい。まぁ確かにド派手な金髪ピアス時代の葛原君にはバッチリと似合っているだろうな。


(うーん、スカジャンかぁ……いや流石に私はスカジャンなんて一着も持ってないし、そういうのを上手く着こなせるオシャレ女子が良いって言われても困ってしまうんだけど……)


「どうしたのお姉ちゃん? 何だか難しそうな顔をしてるけど?」

「え? あ、あぁ、いや、何でも無いわよ。凄く参考になる情報だったわ。ありがとね、祐奈ちゃん」

「うん、お姉ちゃんの役に立ったのなら本当に良かったよ。それじゃあ他に何かお兄ちゃんについて聞きたい事はあるかな?」

「えっと、うーん、そうねぇ……あ、それじゃあせっかくだし、お兄さんの好きな芸能人とかアイドルとか居たりするようなら知りたいかなぁ」

「お兄ちゃんの好きな芸能人? えぇっと……それってテレビの人って事だよね?」

「うん、そうそう。もし知っているようだったら是非とも教えて欲しいわ」


 とりあえず葛原君がスカジャン好きという情報は手に入れたけど、他にも好きな女優さんとか芸能人とかアイドルの女の子とかがいれば、是非とも知りたいと思った。


 だって葛原君の好きな芸能人とかがわかれば、そういう人達の画像を調べれば何となく葛原君の好きな女性の服装とかファッションがわかるかもしれないしね。


「うーん、えぇっとね……確かお兄ちゃんってあまりテレビを見ないからそういう好きな芸能人とかは全然いないって言ってた気がするよ」

「あ、そっか。よく考えたら葛原君はずっとバイトとかしてたしテレビなんて見てないはずよね。うん、わかった。ありがとう祐奈ちゃん。私のために色々と思い出してくれて本当にありがとね」

「ううん、私の方こそお姉ちゃんの力になれなくてごめんなさい……あ、でもそうだ! そういえばね!」

「え、でもって……もしかして何か思い出したのかしら?」

「うん、えっとね、テレビの人ではないんだけど、でもお兄ちゃんはね……紗枝お姉ちゃんの笑顔が大好きだっていつも言ってるよ!」

「え……って、えっ!? ふ、ふぇぇっ!?」


 私はほんの軽い気持ちで祐奈ちゃんから葛原君の好きな芸能人を聞こうと思っただけなのに……それなのにとてつもなくビックリとするような発言を祐奈ちゃんから聞き出してしまい、私は思いっきり大きな声を出しながら後ろにのけぞっていってしまった。


「んー? どうかしたかー?」


 そしてそんな私の大きな声を聞いて葛原君が台所からリビングの方へとやってきてしまった。そしてキョトンとした表情を浮かべながら私にそう尋ねてきた。


「え……えっ!? う、ううん! 何でもないわよ!」

「ん? そ、そうか? それならまぁ良いんだけど」


 なので私はかなり慌てながらも咄嗟にそう言って誤魔化していった。でもおそらく私の顔はかなり真っ赤になってしまっている事だろうな……。

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