第138話:幸村と祐奈と一緒に晩御飯を食べていく

 その日の夜。


「よし、晩御飯出来たぞー!」

「うん! わかった!」

「えぇ、それじゃあご飯をテーブルに並べていくわね」

「あぁ、頼むよ」


 今日は幸村が部活や塾の無い日だったので、俺は幸村を誘って一緒に俺の家で晩御飯を食べる事になっていた。


 そして今晩御飯を作り終えたので、俺達はテーブルの上にご飯を並べていってそのまま三人でテーブルに座っていった。


 ちなみに今日の綾子はいつも通り仕事なので家にはまだ帰ってきてはいない。でも帰ってきたらご飯は食べたいと言ってたので、綾子の分は冷蔵庫にちゃんと保管している。


「よし、それじゃあ温かい内に食べちゃおうぜ」

「えぇ、そうね。もうお腹も空いちゃったし早く食べましょう」

「うん、そうだね! それじゃあ……」


「「「いただきます!」」」


 そう言って俺達はテーブルに座ってしっかりと手を合わせてから晩御飯を食べ始めていった。


「あ、ねぇねぇ、聞いてよお姉ちゃん! ちょっと前のテストで全教科満点を取る事が出来たんだ! 紗枝お姉ちゃんが勉強を教えてくれたおかげだよ、本当にありがとう!」

「へぇ、それは凄いわね! でもそれは私のおかげじゃなくて祐奈ちゃんが一生懸命に頑張ったから取れたのよ。だからこれからも勉強を頑張っていってね」

「うん、これからも頑張るよ!」


 祐奈は満面の笑みを浮かべながら幸村にテストの結果報告を伝えていっていた。そんな祐奈の報告を聞いて幸村もしっかりと笑みを浮かべながら祐奈の事を褒めていってくれていた。


「あ、それでね! 今回のテストでね、実は私……始めて音楽のテストで満点を取れたんだー!」

「へぇ、音楽のテストもあったんだ。それは凄いわね。ふふ、それにしても祐奈ちゃんって色々と多彩なのね。祐奈ちゃんは音楽の授業は大好きなの?」

「うん、大好きだよ! 学校の授業の中では一番好きなんだー。リコーダーで神域の騎士のOP曲のサビ部分も吹けるからね!」

「へぇ、そうなん……えっ!? いやそれは本当に凄いわねっ!?」


 祐奈のそんな特技を聞いて幸村は驚いた顔をしていった。実は祐奈って音楽とかめっちゃ好きなんだよな。


「あはは、だってすっごく練習したもんー! あ、そういうお姉ちゃんはどうなのかな? 音楽の授業とかは好きなのかな?」

「えっ? う、うーん……いや実は私、ちょっと音痴気味だから音楽全般が苦手なのよね……」

「そうなの? それは何だか意外だね……って、あ、そうだ! それじゃあ私がお姉ちゃんに音楽の勉強を教えてあげるよ! ほら、いつもお姉ちゃんには私の勉強を見て貰ってるからさ!」

「あら、いいの? ふふ、それじゃあ今度は祐奈ちゃんに音楽の勉強を教えて貰おうかしら」

「いいよいいよー! それじゃあ今度は私が先生で紗枝お姉ちゃんが生徒だね!」

「ふふ、確かにそうね。それじゃあこれからご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますね、祐奈先生?」

「うん、私に任せてね、お姉ちゃん!」


 幸村と祐奈はそんな会話で盛り上がっていっていた。そして俺はそんな二人のやり取りを微笑ましく見守っていった。


(いやそれにしても幸村には沢山の恩があるよなぁ)


 俺は中間テストの勉強の面倒をしっかりと見て貰ってたし、祐奈も勉強面を沢山見て貰ってるもんな。幸村には兄妹共々かなり助けて貰っているよな。この恩はしっかりと返さなきゃなんないよなぁ……。


 という事で俺はそんな事を改めて思いつつも、それからも俺は幸村と祐奈の会話を見守り続けていった。


「あ、そうだ。それじゃあさ、お姉ちゃんは学校の授業で一番好きなのは何の授業なの?」

「私の好きな授業? うーん、何だろうなぁ……あ、でもやっぱり私は体育が一番好きかもしれないわね」

「へぇ、そうなんだ! 体育の授業も楽しいよね!」

「……えっ!? そうなのか?」

「うん、そうなのよ……って、何でアナタが思いっきりビックリとしてるのよ?」


 幸村の一番好きな授業は体育だと言ってきたのはちょっと意外だったので、俺は思わずビックリとしてしまった。


 すると幸村は俺のそんな態度を見てキョトンとした表情になりながらそう尋ねてきた。


「い、いやだってさ、幸村って学年テストいつも上位にいるじゃん? 全国模試とかも常に上位にいるんだろ? だから普通の科目の方が好きなのかなーって思ってたからちょっと意外な答えだったというかさ」

「んーあぁ、そういう事? いやそれ友達にもよく言われるんだけど……別に私って好きだから毎日勉強をしてるわけじゃないからね? 将来の夢とか別に何も決めてないけど、まぁとりあえずどんな進路に行きたいと思っても大丈夫なように勉強してるだけだからね?」

「え、そうだったのか? へぇ、なるほどな」


 何だかそれはちょっと意外な回答だった。


「まぁでも今しっかりと勉強をして良い大学に入っておけば、将来やりたい仕事が見つかった時にその就職先に就ける可能性は上がるもんな。うん、そう考えると幸村の考え方って凄く合理的だよな」

「えぇ、そうでしょ? まぁ本当は今の内にやりたい仕事を見つけておきたいんだけど……でも今の自分に合う職業がどんなのかなんてまだまだわからないしね」

「いやそれは仕方ないだろ。だってまだ16歳なんだしさ、やりたい仕事なんてまだ見つからなくても良いんじゃねぇか? だから今は将来のためにしっかりと勉強をしてるってだけで十分に偉いし、とても素晴らしい事だと思うよ」

「そ、そうかな? ま、まぁ、そう言ってくれるのは嬉しいけど」


 俺は素直な気持ちで幸村の事をそう褒めていくと、幸村はちょっとだけ恥ずかしそうに照れていった。


「まぁでも、そんな幸村の話を聞いた上でも体育の授業が一番好きっていうのは普通にビックリなんだけどさ。そんなに体育が好きになるエピソードでもあったのか?」

「そうね、まぁ体育の授業というよりも運動全般が好きってだけよ。私は子供の頃から身体を動かす事が大好きだったの。小学生の頃は放課後になると友達と一緒にサッカーとか色々な運動を毎日のようにやってたしね」

「へぇ、そうなんだ。毎日サッカーとか色々な運動をしてたってのは中々に活発な小学生時代だったんだなー」


 その友達というのはおそらくは主人公の事なんだろうな。だって主人公はサッカー部に入ってるわけだし。


(まぁそりゃあ幼馴染同士だから小学生の頃からずっと遊んでたってのは当たり前なんだけど、でもやっぱり子供の頃から毎日ずっと一緒に居たってのは純粋に羨ましいよなー)


 俺も子供時代の幸村と一緒にスポーツとかゲームとか色々な事をして遊んだりしたかったなぁ……。


「ふふ、そうね。でも小学生の頃は活発を通り越してちょっとだけお転婆だったかもしれないわね。だって放課後に遊んでてしょっちゅう転んだりとかして怪我とかも沢山しちゃったりしてたからね」

「……えっ!? 当時はそんなにしょっちゅう怪我をしてたのか? それって当時は大丈夫だったのか? 痛かったりとか辛かったりとかしなかったか?」

「いやもう全然痛かったし辛かったわよ。しょっちゅう転んで怪我して泣いてたわよ。だから怪我を防止するために柔軟体操とかストレッチをちゃんとやり始めたのはその頃ね。外で毎日遊んでも怪我をしないようにって事で毎日しっかりと柔軟体操とかストレッチを始めていったのよ」

「な、なるほど、その頃から柔軟体操を始めていったんだな。そんな昔から柔軟体操をやってたからこそ今の幸村の身体はあんなにも柔らかいんだな」

「えぇ、そうよ。日々の訓練の賜物ってやつね。ふふ、せっかくだし良かったらアナタも今からストレッチを初めてみる? 祐奈ちゃんと一緒に全力でアナタの背中を押してあげるわよ?」

「お兄ちゃんも一緒に柔軟体操やるの!? うんうん、一緒にやろうよー! 全力でお兄ちゃんの背中を押してあげるよ!!」

「え……えっ!?」


 幸村がニヤニヤと小悪魔めいた笑みを浮かべながらそんな事を言っていくと、祐奈もそれに同調して楽しそうに笑ってきた。


 ここ最近の幸村と祐奈は一緒に柔軟体操とかストレッチをやっている事が多く、その都度俺も一緒に柔軟体操とかストレッチをやろうって何度も誘ってくるんだ。でも……。


「い、いや、それは……さ、流石にちょっと痛そうだから遠慮しておくわ……」


 でもそんな二人の柔軟体操とかストレッチの様子を見てたら、身体の固い俺には絶対に無理だと思っていつも断っていた。だって開脚とか絶対に痛いもん。


「いやいや、そんなに痛くないから大丈夫よー。それに私がちゃんと丁寧に優しく指導してあげるんだから絶対に大丈夫よ。ね、祐奈ちゃん?」

「うんうん、そうだよそうだよ! お姉ちゃんはすっごく優しい先生だから安心出来るよお兄ちゃん!」

「う……い、いや、まぁ、考えとくわ……あ、あはは」


 という事で今日もそんな怖い提案をこの二人にされていったんだけど、俺は何とか笑いながら誤魔化していった。い、いやというかさ……。


(何だかこの二人……やっぱり本当に姉妹なんじゃないかってくらい息ピッタリ過ぎじゃないか?)


 何だか最近は幸村と祐奈が結託して俺の事をからかう場面もだいぶ増えてきてる気がするな。まぁ仲が良いのは良い事なんだけどさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る