第137話:お昼休みに女子友達と一緒にご飯を食べていく(紗枝視点)
月曜日のお昼休み。
今日のお昼休みは女子テニス部のミーティングがある日だったので、私は葛原君とお昼ご飯は食べずにテニス部の部室にやって来ていた。
「はい、それじゃあ今日のテニス部のミーティングはこれで終わりにします。お疲れ様でしたー」
「「お疲れ様でしたー」」
副部長の号令で本日のミーティングは終了した。すると隣に座っていた同級生の友人である
「紗枝、お疲れ様。それじゃあサクっとお昼食べよっか」
「うん、そうね。それじゃあ午後の授業も始まっちゃうし早く食べちゃいましょう」
今日の朝に雪花とは部室で一緒にお昼を食べる約束をしていたので、私達はそのままお弁当を取り出して二人で仲良く喋りながらお昼を食べ進めていった。
「あ、そうだ。そういえばさ、紗枝って最近……葛原君と仲良いらしいね?」
「え? あ、え、えっと……う、うん。まぁ葛原君とはそれなりに仲は良いと思うけど……でもどうしたのよ急に?」
すると急に雪花は葛原君の話題を振ってきた。私はちょっとだけ動揺しつつも雪花にどういう事かと尋ね返していった。
「あ、やっぱりそうなんだ? いや、何か最近紗枝と葛原君についての噂が女子達の間にチラホラと広がり始めてるんだよねー。ちょっと前だと紗枝と葛原君が図書室で一緒に勉強してたっていう噂を聞いたんだけどさ、それって本当の話なの?」
「あ、あぁ、うん、そうね。ま、まぁ確かに中間テストの時には葛原君と一緒に図書館で勉強をしてたわね……」
「へぇ、そうなんだ! ふぅん、なるほどなるほどー……ふふ、何だかいつの間にか楽しそうな事になってるじゃんー?」
「う……そ、それは……知らないわよ……」
どうやら私と葛原君が図書室で勉強をしていた事を雪花も噂で知っているようだ。私は何だかちょっと恥ずかしくなったのでそっぽを向いていった。
「そんな恥ずかしがらなくてもいいじゃんー。学校の同級生と仲良くするのは全然良い事でしょ。あはは、でもいいなー、私も葛原君みたいなカッコ良い男子と二人きりで一緒に勉強会とかしてみたいなー」
「……えっ? か、カッコ良いって……ど、どうしたのよ急に?」
雪花は笑いながらそんな意味深な事を呟いてきた。なので私はちょっとだけビックリとしながらもその意図を尋ねていった。
「えー? だって葛原君今まで金髪にピアスガンガンに穴開けた怖そうな人だったけどさー……でも今は黒髪にして物凄くイケメンな好青年に生まれ変わったじゃん? だから今の葛原君って周りの女子達の間でかなり人気の男子なんだよ?」
「え……って、えぇっ!? そ、そうなの!?」
どうやら雪花曰く、黒髪にしてから葛原君の好感度は急上昇しているようだ。女子達の間で葛原君がそんなに高評価になっている事を知らなくて私はちょっと驚いてしまった。
「うんうん、そうなんだよー。しかも噂によると最近の葛原君は後輩の事も結構な頻度で助けたりしてるらしいよ。そういう後輩に優しい所も凄く推せるポイントの一つだよね!」
「へ、へぇ……そうなんだ」
雪花は楽しそうにしながらそんな事を言ってきた。何だか想像以上に葛原君の人気が上昇していて私はかなりビックリとしてしまったんだけど、まぁでも……。
(うん、まぁそうだよね……だって葛原君って凄く優しくて魅力のある男の子だもんね……)
私は雪花の話を聞いて改めてそう思っていった。
だって葛原君が優しい人なのはもちろん知っているし、昔と違って凄く真面目になっている事も私は知っている。本当に優しくて素敵な男の子になっていると思う。
だから周りの生徒達の葛原君を見る目がどんどんと変わってきているのは凄く喜ばしい事だと思う。でも……。
(凄く喜ばしい事なんだけど……でも何だろう……ちょっとだけ寂しいような……)
私は嬉しい気持ちを覚えつつも、ちょっとだけ寂しいという気持ちも心の中にちょっとだけ芽生えていた。でも何で私は寂しいって思っているんだろう……?
「あ、そうだ。それでさ、私のクラスの女子友達で葛原君のLIMEを知りたいって言う子がチラホラといるんだけどさ、良かったら紗枝の方から葛原君に橋渡し役とかお願いできないかな?」
「……え? い、いや、それは……」
急に雪花にそんな事を言われて私は言葉に詰まってしまった。それは葛原君の連絡先を他の女子達に教えてあげてほしいというお願いだった。
「うん、どうしたの紗枝? そんな暗い顔をしちゃって……って、あっ! もしかしてさ……紗枝って葛原君の事が好きだったりするの?」
「え……って、えぇっ!? い、いや、そ、それは、その……!!」
「へぇ、そうだったんだね! あはは、そっかそっかー! それじゃあそんな事を紗枝にお願いするのは駄目だよねー。うん、わかったよ、それじゃあ今の話は聞かなかった事にしといて! 私も友達には葛原君の事は諦めなさいって言っておくからさ!」
「え? え? な、何を言ってるの雪花? わ、私はまだそんな事は何も言ってないんだけど……?」
「あはは、別に何も言わなくたって良いよー。だって紗枝の顔……物凄く真っ赤になっちゃってるよ?」
「え……? って、熱っ!?」
雪花にそう言われて私はすぐさま頬を触ってみると、確かに私の頬は思いっきり熱くなっていた。
多分鏡で見たら自分の顔が思いっきり真っ赤になってしまっているのは容易に想像出来るわ……。
「ふふ、そんなにも顔を真っ赤にしちゃってさぁ……そんなに葛原君の事が好きなんだねー?」
「えっ!? い、いや、それはその、えっと……い、いや実はその……正直に言うんだけどさ……自分ではまだよくわからないのよ……」
「え? わからないって……どういう事よ?」
私は言葉に詰まりながらも自分の正直な気持ちを雪花に伝えていった。すると雪花はキョトンとしながら私にそう尋ね返してきた。
「い、いやその……確かに私は葛原君とは友達としてはとても仲の良い男の子よ。それは本当にそう。でもそれはただ仲が良いってだけで……これが彼氏になって欲しい程の好きって言う気持ちなのかはまだちょっとわからないというか……」
私は顔を赤くしながら雪花に向かってそう言っていった。だって私はまだ一度も男の子とお付き合いした事がないんだもん……。
だから今私が葛原君に感じているこのドキドキとした気持ちは友達としての好意なのか、それともお付き合いをしたいと思っている気持ちなのかはまだ自分には判別が付かなかった。
(それにさ……)
それに正直な話……私は子供の頃からずっと幼馴染のヒロの事が好きなんだと思っていた。それなのに私は幼馴染のヒロに対して今までこんなにもドキドキとする気持ちは一度もなった事がなかったんだ。
だから今まで好きだと思っていたヒロに感じる事が一度もなかったこのドキドキ感が何を意味するのか……今の私にはまだ判別がついていなかったんだ……。
「ふぅん、なるほどねー? 確かに自分の気持ちが友達としての好きなのか、それともお付き合いしたいって思ってる好きなのかは判断が難しい所だよね。ま、でもそこら辺は焦らずちゃんと考えていってみたら良いんじゃないかな?」
「そ、そうだよね。うん、しっかりと考えてみるよ。色々とアドバイスありがとね、雪花」
「あはは、そんなの全然良いよー。ま、これからも何かあったら相談に乗るから気軽に私に言ってよ? 紗枝のためならいつでも力になるからさ」
「うん、わかった。本当にありがとうね」
という事でそれからも私達は一緒に他愛無い話をしながらお昼ご飯を食べ進めていった。
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