第135話:家族でショッピングモールに出かける
翌日の土曜日。
今日は綾子が休みの日なので家族三人で隣駅にあるショッピングモールに出かける事になっていた。家族三人で外に出かけるなんて本当に久々な気がするな。
という事で俺達は昼頃にショッピングモールに到着し、まずはフードコートで昼飯を食べ始めていった。その後はショッピングモールに併設されている水族館やゲームセンターなどを家族三人で楽しく巡っていった。
そして今は……。
「お母さーん! こっちこっちー!」
「わかったよ、祐奈ー」
祐奈は嬉しそうにしながら母親である綾子の手をぎゅっと握りしめてショッピングモールの中を小走りで進んでいっていた。
俺はそんな二人の光景を後ろから温かく見守りながらゆっくりと歩いていっていた。
「祐奈ー、綾子と一緒にいられて嬉しい気持ちは凄くわかるけどさ、でもあんまり綾子の腕を引っ張り過ぎるなよー?」
「えっ? あ……う、うん、ごめんなさい、お母さん……も、もしかして痛かった?」
「ううん、全然大丈夫だよー! だってお母さんってこう見えて結構頑丈なんだから! でも祐奈のもう片方の手がポッカリと空いてるのはちょっと寂しいよねー? ふふ、だからさ……せっかくだしもう片方の手はお兄ちゃんに握って貰ったらどうかなー?」
「え? い、いや、それはちょっと恥ずかし――」
「あ、うん! お兄ちゃんとも手を繋ぎたい! お兄ちゃん、ほらほら! 手を貸してよー!」
「えっ……あ、あぁ、わかったよ。それじゃあ……ほら」
「うん!」
―― ぎゅっ……
という事で俺達は家族三人で仲良く手をぎゅっと繋ぎ合わせながらショッピングモールの中を歩いていく事になった。
流石に高校生にもなってこれは少し恥ずかしい気持ちもあるけど……まぁでも祐奈が凄く嬉しそうだし別にいっか。
「あ、そうだ。それで祐奈はテストのご褒美に何を買って貰うんだ? もう欲しい物は決めてるんだよな?」
俺は嬉しそうにしている祐奈に向かってそんな事を尋ねていってみた。
ちょっと前にも言ったけど祐奈は小学校のテストで満点を取ったんだ。そしてその事を綾子に伝えると物凄く喜んでくれて、ご褒美に今日は何でも好きな物を買ってあげると綾子は言ってくれたんだ。
という事で今日は家族でショッピングモールに遊びに来ただけじゃなくて、祐奈のご褒美を買いに来た日でもあった。
「うん、お母さんにはちょっと前に発売された新作のゲームをお願いしたんだ! 協力して遊べるゲームだからお兄ちゃんも一緒にやろうね。あ、もちろん紗枝お姉ちゃんも一緒にね!」
「へぇ、そうなんだな。あぁ、わかったよ。それじゃあ今度幸村も呼んで皆で楽しくゲーム大会でもしような?」
「うん!」
そう言って俺達は笑い合いながらショッピングモールにある玩具店を目指して歩いて向かった。
◇◇◇◇
そしてそれから一時間後。
「はい、それじゃあこれ。ちゃんと大切に遊んでね、祐奈」
「うん、ありがとう、お母さん!」
玩具店でお会計を済ませた綾子はゲームの入ったビニール袋を祐奈に手渡していった。
そしてそれを受け取った祐奈は満面の笑みを浮かべながら綾子に感謝を伝えていった。
「あはは、良いよ良いよー。だってこれは祐奈がテストを頑張ったご褒美だもん。だからこれからも勉強を頑張ってね、祐奈」
「うん、わかった!」
綾子はそう言いながら祐奈の頭を優しくぽんぽんと撫でていった。すると祐奈はとても嬉しそうな表情をしながらその行為を受け入れていっていた。
「ふふ、さてと……それじゃあ雅はどうする? 中間テストのご褒美は何が良い?」
「え? もしかして俺にも何か買ってくれるのか?」
「あはは、そりゃあ当たり前でしょー! 雅だってここ最近は勉強を物凄く頑張ってるの知ってるんだからね? それで頑張っている子供達にしっかりとご褒美をあげるのが親の役目ってもんでしょ?」
綾子は明るい笑みを浮かべながら俺に向けてそう言ってきてくれた。
「そっか、綾子にそう言って貰えるのは嬉しいよ。でもご褒美って言われても今は欲しい物は特に無いから、それじゃあ次回までに考えとくよ。まぁだからさ……良かったらこれからもまた家族三人でちょくちょく遊びに出かけようぜ?」
「え……?」
俺は若干気恥ずかしさを覚えながらもそんな提案を綾子にしていった。
すると綾子は一瞬だけビックリとしたような表情をしてきたんだけど、でもそれからすぐに満面の笑みを浮かべながらこう言ってきてくれた。
「……ふふ、そんなのもちろんだよ! うんうん、それじゃあこれからも休みが出来たらまた家族三人で遊びに出かけようね!」
「えっ!? 本当!? 私もこれからもまた皆で遊びに出かけたいよ! 約束だよお母さん!」
「うん、もちろんだよ! それじゃあ約束だよ、祐奈」
「うん、約束!」
そう言って綾子と祐奈は一緒に楽しそうに笑みを浮かべ合っていった。
「よし、それじゃあ雅へのご褒美はまた後日として……この後はどうしよっか? もう今日の用事は全部終わっちゃったけど、まだ夕方前だし晩御飯には流石にちょっと早いよね?」
「ん? あぁ、そうだな。それは流石にちょっと早すぎるよな」
そう言いながら俺はスマホの時計を確認してみた。まだ時刻は午後の4時前だった。流石に晩御飯にはまだ早すぎるよな。
「うーん、そうだよねぇ。流石に今からフードコートに行って晩御飯を食べるには早すぎるし……あ、それじゃあ食品コーナーにでも行って何か美味しそうなお惣菜とかお弁当でも買って帰りましょうか?」
「あぁ、そうだな。それが良さそう……って、あっ」
「うん? どうしたのよ雅?」
綾子の提案に同意しかけたその瞬間に、ふと俺はとある事を思い出した。
(そういえば俺って……まだ綾子に手料理を振舞った事がなかったんだよな……)
俺が今まで一度も綾子に手料理を振舞えなかった理由は当然だけど綾子が毎日滅茶苦茶に忙しいからだ。
綾子は仕事の都合でいつも深夜過ぎに帰ってくるから、綾子と一緒に晩御飯なんて食えないんだよ。
だけどそんな多忙な綾子は今日は一日中休みだから、久々に一緒に晩御飯を食べれるって事で……。
「なぁ、それじゃあさ……ちょっと俺から提案があるんだけどさ」
「雅からの提案? うん、良いよ良いよ? 一体どんな提案よ?」
「あぁ、それじゃあその、良かったら今日の晩御飯はさ……俺が作っても良いか?」
「あぁ、なるほどー。雅が晩御飯を……って、えっ!? ま、雅が晩御飯作る……? い、いや……そ、それってどういう意味よ……?」
「いやそんなの言葉通りの意味に決まってるだろ。俺が手料理を作るって意味だよ」
「え……えっ!? って、えぇえええっ!?」
突然と俺がそんな提案をしていくと、綾子はかなりビックリとしながらそんな大きな声を上げてきた。
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