第133話:こ、これってどう考えてもデートなんじゃないの!?(紗枝視点)
お昼休み。
葛原君と一緒にお昼ご飯を食べ終えて屋上から教室に戻っている時に……。
「あ、そうだ。それじゃあ私……ちょ、ちょっとトイレに行くから、だ、だから先に教室に戻ってて良いわよ」
「ん? あぁ、わかった。それじゃあ先に教室に戻ってるな」
「え、えぇ、わかった。そ、それじゃあ、またね」
「あぁ、それじゃあな」
私はそう言ってトイレ前で葛原君と別れていった。でもすぐトイレには入らずに葛原君が教室に向かって歩いて行くのをじっと後ろから見守り続けていった。
そして葛原君が廊下から見えなくなった所で私はすぐさまトイレの中に駆け込んでいき、私以外にトイレを利用してる生徒がいないかどうかを確認していった。
とりあえずトイレの中には私以外には誰もいなかった。まぁ授業前の予鈴も鳴ったから当たり前だよね。
という事で周りに誰もいない事を確認し終えた私は、そのままトイレの手洗い場に立って……。
「……えっ!? さ、さっきのお誘いって……一体どういう事なの!?」
私は手洗い場の前に立ちながらそんな事を大きな声で叫んでいった。
そのまま私は手洗い場の鏡で自分の顔を確認していった。すると私の顔はみるみるうちに真っ赤になっていっていた。
「ちょ、ちょっと、なんでこんなに顔が赤くなってるのよ!? ど、どうしよう……このままじゃ教室に戻れないじゃないの……」
私は自分の頬に手を当てながらそんな事を呟いていった。それほどまでに私の顔は真っ赤になってしまっていた。
さっき葛原君にそんな提案をされた時にはあまりにもビックリとしちゃったから逆にスンとした表情をしちゃったんだけど……でもやっぱり内心は今でもかなりビックリとしちゃってる状態のままだった。
でもそんなの仕方ないじゃない。だって私は男の子と二人きりで遊びに誘われたなんてヒロ以外では初めての事なんだもの……。
「……あれ? でも何でヒロと葛原君とでこんなにも緊張度合いが全然違うんだろう……?」
ふと私はそんな事が気になった。だっていつもヒロと二人きりで遊ぶ時には絶対に緊張なんてしないんだけど……でも葛原君と二人きりで遊ぶって思うとかなり緊張をしてしまっている自分がいた。
でも普通に考えたらヒロも葛原君も同じ年の男の子だよね? そしてヒロも葛原君も私にとってはそれなりに仲の良い友達だ。だから同い年の男友達という意味ではヒロも葛原君も私にとっては同じはずなんだ。
それなのにヒロと二人きりで遊びに行くのをどんなに想像しても何とも思わないのに、何で葛原君と二人きりで遊ぶと思うとこんなにも緊張しちゃうんだろう……?
「うーん……このヒロと葛原君に対する気持ちの違いは一体……?」
私はその理由をもっとしっかりと考えてみたかったけど、でも早く教室に戻らないと授業が始まってしまうよね。なのでとりあえず今は二人に対する気持ちの違いについて深く考えるのはやめておこう……。
「あ、でも……ど、どうしよう、そういえば着て行く服が……」
でもそれからすぐに私はまた違う悩みを瞬時に思いついてしまった。そう、それは葛原君と一緒に映画に行く時に着る服装についてだ。
葛原君がどういう思惑で私を映画に誘ってくれたのかはわからないけど……でも年頃の男女が二人きりで恋愛映画を見に行くなんて、それは世間一般的には所謂『デート』と呼ばれる行為に近い気がするんだよね……。
そ、それじゃあそうなると……や、やっぱり多少は服装とかも気を使わないといけないような気もするわよね? だってヒロと二人きりでファミレスに行くのとは訳が全然違うんだよ。男の子と二人きりで恋愛映画を見に行くんだよ?
だからいつもヒロと一緒に近くのファミレスに行く時に着るような普段着でなんて行ったら絶対に駄目だって事は私にもわかるわよ。でも……。
「う、うーん……いや、というかそもそも……葛原君ってどんな服装の女の子が好みなのよ……?」
という事で私はそんな事で大きく悩んでいってしまっていた。葛原君が好きな女子の服装って一体どんなのよ……?
いや、まぁほんの少し前に葛原君と綾子さんの前でこれからは自分本位に生きるって宣言した事もあったけど……でもそれはそれ、これはこれというヤツだ。
だってせっかく二人きりで出かけるのであれば私の好きな服を着るんじゃなくて、どうせなら葛原君の好きな服装を着て行きたいんだもん。そう思うのは女心としては当然の事だと思う。でも私は葛原君がどんな服装が好きなのかは知らないんだ……。
ここ最近になって葛原君とは色々な話をしてきた。好きな食べ物の話とか、本の話、家族の話、部活の話とか……本当に色々な話をしてきた。でも好きな服装についての話なんてした事は全然ないんだよね……。
「う、うーん……葛原君はシンプル目な服装の方が好きかな? それともスカートとかゆるふわなワンピースみたいな女の子っぽい感じの方が良いのかな? それともちょっと大人っぽい感じの服とかの方が好きなのかな?」
という事で私はそんな事を次々と考えていった。でも私が幾ら考えていった所で葛原君がどんな服装が好きかまでは本人に聞く以外に判別する方法はない。
あ、でもそういえば以前にちょっと背伸びして少し大人っぽい感じのニットワンピースの服装を見せた時は似合ってるって葛原君は言ってくれたけど……うーん、でもあれは普通に考えたらお世辞だろうしなぁ……。
「うーん……どうにかして葛原君の好きな服装を知れる方法はないかしらね……」
気が付いたら私はそんな事をまた深く考え始めようとしていっていた。うーん、でも本当に何とかして本人に聞く以外に葛原君の好きな女子の服装を知れる方法はないかしらね……。
―― キーンコーンカーンコーン……
と、そんな事を考えていたら突然と二度目のチャイムが鳴ってしまった。このままでは授業が始まってしまう……!
「あ、ま、まずいっ……! もうこれ以上トイレにずっと居るわけにはいかないわね!」
という事でそれらを考えるのは一旦全て中断にして、私は急いで教室に戻っていく事にした。
まぁでも映画が公開されるまでにはまだ少し猶予が残っているし、今はそこまで焦らずにじっくりとそういう所を考えていく事にしましょう。
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