第4話:いつも通りだと思ったのに何か違う!(紗枝視点)

 それから数十分後。


 朝ごはんを食べ終えた私とヒロは一緒に学校に到着していった。


 でも今日はヒロが起きるのが遅かったというせいもあり、私達はギリギリの登校となってしまった。なので私達は学校に到着した後も早歩きをしながら自分達の教室へと向かって行っていた。


「もう、ヒロのせいで遅刻しそうになったじゃないの!」

「いや本当に悪かったって、紗枝。だから朝からそんなに怒んないでくれよ」

「全くもう……どうせ私が起こしに行かなかったら今もヒロはずっと寝たままだったなんでしょ? これからはちゃんと早めに夜は寝るようにしなさいよ?」

「あぁ、わかったわかったって……はぁ、全く、本当に口煩い幼馴染だなぁ」

「はぁ? いや何言ってんのよ! こんなお小言を貰いたくないならヒロがちゃんとすれば良いだけでしょ!」

「って、いてて! わかったから頬を引っ張んないでくれよ!」


 そんな感じで私とヒロはいつも通りのやり取りをしていっていた。するとそんな私達のやり取りを見ていた周りの生徒達は笑いながらこんな事を言ってきていた。


「あはは、いつもの夫婦漫才だなー」

「ふふ、相変わらず二人は仲が良いわね」

「そんな朝っぱらから夫婦喧嘩するなよなー」


「「いや夫婦じゃないから!」」


 という事で周りにいた生徒達からもいつも通りの茶化しが入ってきたので、私達は大きな声で否定していった。


「はぁ、全くもう……それじゃあ私は自分の教室に行くからね。ヒロも授業くらいは真面目に受けるのよ?」

「あぁ、わかったって。お前は俺のお母さんかよ……そんじゃあな」

「一言余計よ、全く……えぇ、それじゃあね」


 そう言ってヒロとは私の教室前で別れる事にした。ヒロの教室は私の教室よりも一階上なのだ。


 という事で私はヒロが階段の方へと向かって廊下を歩いて行くのを見届けてから私も自分の教室へと入って行った。ふぅ、それにしても……。


(本当にもう……ヒロには私がいないと駄目なんだから)


 今日も朝を起こしてあげなかったらヒロは遅刻してしまっただろう。それにヒロのお母さんにもお願いされているし、これからもヒロの事はちゃんと躾けてあげなきゃならないわね。ちゃんとヒロを真面目な大人になれるようにしてあげないとだ。


「あ、紗枝! おはよー」

「うん、おはようー」


 という事で私はそんな事を考えつつ自分の教室の中へと入って行き、そして私は友達に軽く挨拶をしていきながら自分の席へと向かって歩いた。すると……。


「……えっ?」

「……ん?」


 すると私の後ろの席にとある男子生徒が座っていた。


「……アナタがこんな早い時間に登校してるだなんて……珍しい事もあるものね」


 その男子生徒とはクラスメイトの葛原雅人だ。校則違反の金髪ヘアにピアスとか色々な物を身に着けているいわゆる不良というヤツだ。


 葛原雅人は普段から学校に全然来ない男子で、来たとしても2限の授業終わりとかになってようやく来るような典型的な不良だった。しかも学校に来たとしても授業はちっとも受けずにいつも保健室とか体育館裏とかで昼寝をしてるような本当にどうしようもない男子生徒だった。


 それに葛原雅人の悪い噂はそれ以外にも沢山聞いている。例えば繁華街を毎日うろついているとか、女の子を片っ端からナンパしてホテルに連れ込んでいるとか、後輩の女の子にもちょっかいをかけて無理矢理エッチな事をしたっていう黒い噂までも聞いた事がある。


(まぁ一言で言えば……女の敵ってやつね)


 だから私はこの葛原雅人という男子生徒の事をかなり嫌っていた。いや女の子達の事を自分の性欲解消をするための道具か何かだと思っているようなクズな男を嫌いになるなって言う方が難しいだろう。


「まぁ、たまには真面目に生活しようと思っただけさ」

「……ふぅん。ま、別にどうでもいいけど」


 という事でそんな葛原に私は一応クラスメイトかつ学級委員として声をかけたわけなんだけど……でもそんな葛原の口からはあまりにも意外過ぎる言葉が放たれてきたのだ。


(……真面目に? 何を言ってるのかしら??)


 いやそんなの絶対に嘘でしょ。こんな最低なクズ男が真面目になるだなんて誰が信じれるのよ。


「……まぁ、何でアナタが久々に学校に来たのかは知らないけど、でも授業の邪魔だけはしないでよね」

「あぁ、わかってるよ。周りには絶対に迷惑かけないから心配するな。ちゃんと真面目に授業を受けるだけだからさ」

「……え? そ、そう……まぁそれなら良いのだけれど……」


 私は訝しんだ表情をしながら私達の授業の邪魔をするなと釘を差したんだけど、それなのにまさかこのクズ男が素直に了承してくるとは思わなかったので私はビックリとしてしまった。


 ちなみに普段だったら私が葛原に注意をすると……。


『はぁ!? うっせぇよ、このブス! 俺に指図してくんじゃねぇよ!』


 というような感じでとても強い言葉を並べられてブチギレられる事が非常に多かった。


 私はこのクラスの学級委員なので、今までにも葛原の事を注意する事は何度もあった訳なんだけど……でも正直に言ってしまうともう彼に対しては嫌悪感しかない。


(はぁ、だからもう私としては一刻も早くクラス替えがきてほしいわ……)


 出来れば次のクラスではヒロと同じクラスがいいんだけど、でも葛原とクラスが別れられるのであればもうそれだけでもいいわ。

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