第3話:いつも通りの朝の出来事(紗枝視点)
とある日の朝。
「もう! さっさと起きなさいよヒロ!」
「ん、んんー……あと5分だけ……」
私は幼馴染の“ヒロ”こと坂上弘樹の家にやってきていた。まぁヒロの家は私の隣だからやってきたという程でもないのだけれど。
「あと5分って……アナタさっきも同じ事言ってたじゃないの! 早くしないと学校遅刻するでしょ!」
「んー、うっさいなぁ……ってか何で紗枝が俺の部屋にいんだよー……」
「うっさいって何よ、全くもう……ヒロのお母さんが私に頼んできたのよ。ぐうたらな息子を躾けてやってほしいってさ。ほら、カーテン開けるわよ!」
―― ビシャッ!
私はそう言いながらヒロの部屋のカーテンをどんどんと開けていった。するとヒロは太陽の光を浴びてようやくベッドからのそのそと起き上がってきた。
「んー、全く……母さんも余計な事を紗枝に言うなよなぁ……」
「こら、自分のお母さんの事をそんな風に言ったら駄目でしょ!」
「あぁ、ごめんって……ふぁあ……」
私がそう言うとヒロは軽く謝りながらもノンビリと欠伸をしてきた。
「全くもう……それじゃあ私は台所で朝ごはんの用意してるから、早く着替えてきなさいよ」
「朝ごはんの用意って……はは、どうせコーンフレークに牛乳かけるだけだろ。料理下手くそなんだから無理に朝ごはんの用意だなんてカッコつけんなよ」
「う……うっさいわね! アンタの分まで用意してあげないわよ!」
「はは、ごめんごめんって。すぐに着替えてそっち向かうから俺の分も頼むよ」
「はぁ、全くもう……えぇ、わかったわ、それじゃあ早く着替えてきなさいよ」
私はそう言ってヒロの部屋から出て行き、そして台所へと向かって朝ごはんの用意を始めていった。
まぁでも……ヒロの言う通り料理下手だからコーンフレークとヨーグルトをテーブルに置いておくだけなんだけどさ……。
「はぁ……私もそろそろ料理の勉強とかしといた方がいいのかもね……」
私はそんな事を思いながらそっと小さく呟いていった。
◇◇◇◇
という事で改めて、私の名前は幸村紗枝という。どこにでもいる17歳の女子高生だ。
そして先ほどの男子の名前は“ヒロ”こと坂上弘樹という。私と同じく17歳の男子高生で、私とヒロはいわゆる幼馴染の関係だった。家もずっとお隣さん同士だしね。
だから私とヒロは子供の頃からずっと一緒に遊ぶ事が多かった。家の中で一緒にゲームをして遊んだり、外でかけっことか鬼ごっことかして遊んだりとか、子供の頃はほぼ毎日ヒロと一緒に遊んでいたっけ。
それに私達の両親もお互いにとても仲が良かったので、長期休みとかには二つの家族で一緒に海や温泉、スキーなどの泊りがけの旅行にもよく出かけたりした。
それからしばらくして、お互いに中学生になったくらいの頃には、思春期特有の異性とはあまり遊びたくないという雰囲気がお互いにあったので、そこら辺の期間はヒロとはちょっと疎遠になったりもした。
でも結局お隣さん同士という事もあり家族間での交流もそれなりにあったので、そんなギスギスとした雰囲気もすぐに解消されていき、ヒロとはまたすぐに一緒に行動するようになっていった。
そして高校生になった今ではお互いに軽口を叩きつつもフランクに接するような感じで割と良好な関係を築いていた。そしてもちろんお互いに信頼し合っている仲でもある。
あと最近ではヒロのお母さんにヒロの面倒を見てほしいと言われたので、今日みたいに朝にヒロの家に行って叩き起こしにいく事も多くなっている。そしてそのままヒロと一緒に登校したり、お昼を一緒にご飯を食べたりもしていた。
まぁそんな感じでほぼ毎日のように一緒の学生生活を送っていたら、周りの友達からは“アツアツな夫婦だなー”とか“今日も夫婦漫才してんなー”などと頻繁に言われるようになってしまった。
で、でも実際に私とヒロは付き合ってるわけじゃなくて、本当にただの仲の良い幼馴染という関係なんだ。だ、だからその、何て言うか……私にとってヒロは生意気な弟みたいな感じかな? うん、きっと多分そんな感じだ。
だから周りの友達にヒロとの関係を“夫婦みたいだな”とからかわれるのはちょっとだけ恥ずかしかったんだけど、まぁでも私はそこまで気にしてはいなかった。だけど……。
(だけど……ヒロはその事をどう思ってるんだろう?)
私は前々からその事が少しだけ気になっていた。ヒロは私との関係を周りの子達から“夫婦みたいだな”って言われているこの状況をどう思っているんだろう?
(もしヒロが周りの子達から“お前達は夫婦みたいだな”って言われているのが嫌だと思ってたら……それはちょっと……悲しいな……)
私はそんな事を思いながらも食器棚から取り出した器にコーンフレークと牛乳を注いでいった。
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