第36話 義妹と偽妹
──子どもの前でハグやキスはありか?
夫婦向けのアンケートによると、どうやら肯定派が多いようである。
教育に悪いという意見もあるが、それ以上に夫婦仲が良いことを見せてあげた方が、子どものメンタルも安定すると考えているようであった。
「ですから、心配はいりませんわよ、兄様」
「そーかそーか、それは良かった……ってなるかいっ!」
俺は再び
俺は恐る恐る背後に佇むハヤちゃんを見た。しばらくフリーズした様子だったが、突然顔を真っ赤にすると、天道を軽蔑した様子で睨みつける。
「お兄ちゃん、その人だれ?」
それを大人の余裕たっぷりで受け止める天道。挑発するような微笑を浮かべながら俺に問う。
「兄様、そのちっこいのは何ですの?
前言撤回、天道も同レベルだった。二人とも初対面なのに、早くもバチバチと火花を飛ばしている。
「とにかく、一旦落ち着こう。ここじゃなんだから、居間でゆっくりと話し合おう」
俺はゴングに割って入るレフリーのように二人を引き離す。右手をハヤちゃんが握り、左手を
「お兄ちゃんが言うなら」
「兄様が言うなら」
そうして俺たちは、崩れた二人三脚のようにして玄関から居間に続く廊下を進んでいった。
……
天道はこれまで外で起きていたことを話してくれた。
あの運命の日から一週間が経つ頃には、私立
もともと葦原市の一次避難所にして、広大な敷地と多数の校舎・体育館、それに備蓄倉庫や田畑、発電所などが整備された学園は、まさにこのような非常事態にはうってつけの場所であった。
理事長や教職員、それに市職員や町内会などが中心となり、市内外問わず幅広く避難民を受け入れていた。
そして、スキルの存在が公になったことで、戦闘系は自警団、生産系は農工業、治癒回復系は医療など、学園の設備も活かしながら自給自足の生活を構築していったようだ。
学園都市葦原の名に違わず、そこには自主独立性に富んだ地域社会が形成され、多種多様な人々の活気で賑わっていた。
初めは学園の
たまに強敵として赤や黒の雷を纏った
外塀も生産系スキルや防衛系スキルで材質、効果ともに強化し、いかなる敵の侵入も許さないと誰もが安心していた。
しかし、その綻びは思わぬところから生じた。なんと学園の敷地内の裏山から敵の大群が押し寄せてきたのである。
運が悪いことに
そして、ただ一人、天道だけが脱出に成功し、俺に助けを求めに来たというわけだ。
「だから兄様、
なんでも、というところをやけに強調された。ハヤちゃんの目つきが再び険しさを帯びたことは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます