幕間 星河一天(後編)
「いやぁ、君たちは若いのに大したもんだよ。僕も昔はサバイバルゲームをやってたけど、今じゃ身体が付いていかないね」
お祭りで使われるような白いイベントテントの下、パイプ椅子に腰かけながらペットボトルのお茶を飲んでいた二人は、隊長から労いの言葉を掛けられた。
隊長と言っても普段は町内会長だ。鬼が外を闊歩するようになったことから、戦闘用スキルを持つ有志を集めて自警団を結成したのだ。
スキルは必ずしも本人の特性に合致しないが、幸か不幸か銃器を取り扱う能力に目覚めたため、趣味を生かす形で自警団に参加を決めた。
「しかし、あいつら何なんだろうな。ゲームじゃあるまいし、死んでロストしてもまたリスポーンするんじゃキリがなくないか」
隊長が離れたところで当麻がぼやく。ワンショットワンキルが彼の信条だが、いかんせん不毛なことを繰り返しているのではないかと思い始めていた。
「そう言うなよ、俺たちがやらなきゃ誰がやるんだ。この街がどうなってもいいのかよ」
堪らず芹田がなだめる。そこには郷土愛というよりももっと切実な想いが込められているようで、たちまち当麻も感化されるように呟いた。
「そうだな……あいつの帰る場所を守ってやらないとな」
もともと彼らは三人のチームであった。もう一人の幼馴染、紅一点の【
しかし、運命の日、彼らは力を手にする代わりに日常を失った。
「まったく、何でよりにもよって一番へたくそなアイツが……」
今度は芹田がぼやく。銃器に纏わるスキルを手に入れ、意気揚々と肩を組んで喜び合う二人であったが、直後に
【
マスドライバーとは、19世紀にSF作家ジュール・ヴェルヌが考案した衛星軌道上に大量物資を打ち上げる架空技術である。しばしば軍事転用され、SF世界においては宇宙空間から射出される質量兵器として恐れられている。
そして、その名を冠するスキルを少女は保有していた。今はまだ小石程度に限られるが、第一宇宙速度(秒速7.9 km)で打ち出すことを可能とし、その破壊力たるや二人のものが豆鉄砲に思えるほどであった。
なお
そんな空前絶後のレアスキルを政府が放っておくはずもなく、首都防衛の民間人協力者としてスカウトされたのであった。
「ちぇっ、こんなことならお前に気を遣わず告白しておけば良かったよ」
「いやいや、それは俺の台詞なんだけど」
二人とも彼女のことが好きだった。しかし、互いに遠慮して牽制し合っているうちに、この関係が崩れてしまわないかと尻込みしているうちに、彼女はいなくなってしまった。
『いつも二人には守られてばかりだったから、今度は私の番だよ』
別れ際の彼女の言葉に二人は決意した。この街を守ろう。自分たちを守るために旅立った彼女、その帰る場所を守ることこそが自分たちの使命なのだと……。
「みんな悪いなー、もう一仕事頼むよ」
どうやらまたのようだ。二人は隊長の元へと駆け寄ると、気持ちを新たにして愛銃を構え直すのであった。
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