第16話 アーカーシャ
『お前は何を言っているんだ?』
首都防衛、九州制圧、
恵理香から繰り出される信じがたい言葉に、俺は往年の格闘家の名台詞で返す。それが功を奏したのか、恵理香も少し冷静さを取り戻したようだ。
『ごめんなさい、兄さんと話せるのが嬉しくて……。
そして、なぜか俺のスキル名を口走る。まだ恵理香には教えていないはずだが、一体どういうことなのだろう。
不思議に思った俺は傍らにいるハヤちゃんに視線を向ける。しかし、いつの間にか姿を消していた。トイレにでも行ったのだろうか。
『あぁ、まずは私のスキルの紹介からね。本当は
一方、アーカーシャとはサンスクリット語で『
『スキル効果は……そうね、アカシックレコードの閲覧といったところかしら』
アカシックレコードとは宇宙誕生から現在まで、ありとあらゆる情報が蓄えられている精神世界の記録層のことだ。そこには文字どおり、全ての真実が存在すると言われている。
……いや、凄まじいな。そんなの反則だろう。兄妹なのに、俺の通信スキルと格差があり過ぎない?
『でも、実際はそこまで容易ではないわ。あまりにも情報過多だし、閲覧と理解には大きな隔たりがある。例えるならば、琵琶湖ほどの大きさの図書館で数学の専門書を読むみたいなものね』
【次のステートメントを証明、もしくは反例を挙げよ】
3次元空間と(1次元の)時間の中で、初期速度を与えると、ナビエ-ストークス方程式の解となる速度ベクトル場と圧力のスカラー場が存在して、双方とも滑らかで大域的に定義されるか。
これはかの有名な数学のミレニアム懸賞問題の一つ『ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ』であるが、日本語で書いてあっても問題文すら理解できない。
『何か特定のキーワードがあれば、それに関連付けて検索することも出来るのだけどね。さっきはこの通信を利用して兄さんのスキルを解析したってわけ』
恵理香の理解力に俺は舌を巻いた。さすがは
『スキル自体にも熟練度があって、使う毎に洗練されていくみたいね。だから私の場合も閲覧制限のようなものがあるわ。どのみち知識がなければ読み解けないから、専門のサポートチームを付けてもらっているけれど』
どうやら恵理香は……いや
『そうね、ここからが本題よ。私たちは以前からこの事態を予見していたの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます