第15話 最古の予言書
古事記とは、712年に
日本書紀とは、720年に編纂された日本最古の正史である。
両者は
ともに
この神代の部分を
これら神話の歴史的意義としては、
天皇家のみならず、古代豪族においては祖先に何かしらの氏神を持ち、それらはニニギに
つまり、自分たちの祖先である神々の段階で序列を定め、その子孫たる一族にまで反映させようとしたわけである。
いわば神とは一族にとっての歴史そのものであり、神話もまたかつて起きた出来事を象徴的に描いたものであると考えることが出来る。
しかし、そのような学説に異議を唱える者がいた。
「
その仮説は神話学会において、失笑あるいは嘲笑により迎えられた。神代を歴史的事実と見なすかについては議論の余地があるが、過去ではなく未来であると主張したら当然の反応だろう。
だが、壇上で発表する彼の姿は鬼気迫るものであった。我々こそが
力説の代償として、彼は学会を追われることとなった。学長の温情により大学に籍を残すことは出来たが、研究者としての将来は閉ざされたといっても過言ではなかった。
しばらくの間、彼の受難は続いた。学会を追放され、研究費は底をつき、助手や教え子たちも彼のもとを去っていった。
しかし、捨てる神あれば拾う神もある。ある日、彼のもとに研究のスポンサーを申し出る人物が現れた。
『
潤沢な資金と手厚いサポートを得た彼は、まさに水を得た魚のように研究に励み、やがていくつかの革新的な発見をするまでに至った。
そして、いつしか二人の間には愛が芽生え、公私ともにパートナーとして二人の子宝に恵まれることとなる。
全ては順風満帆のはずであった。しかし、スポンサー契約において交わされた制約――研究成果の外部への秘匿が、彼の胸に重荷として圧し掛かっていた。
研究者としての顕示欲ではない。危機感と責任感、いずれくる災厄に対して警鐘を鳴らすことが彼の使命だと考えていた。
意を決して仮説の公表を打ち明けた彼に、妻は非情にも契約の破棄と離婚を切り出した。そのときになって初めて、彼は自分が利用されていたことに気付いた。
妻の実家である
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