第14話 ユビキタス
突然、頭の中に響いた大音声に俺は顔をしかめる。しかし、相手はまるでそれを意に介さぬように言葉を続けた。
『良かった、電話が通じないから心配してたんだよ! 私、兄さんが無事なのかって、ずっと不安でたまらなかったんだからっ!』
そのまま
来年からは高校生になるというのに、いい加減に兄離れをした方が良いと思うのだが、いわゆるブラコン気質が抜けないでいた。
いや、それよりもナチュラルに受け流していたが、なんで俺は恵理香と通話しているんだ。スマホはソファ正面のテーブルに置いたままで、そもそも通信制限がされているはずだ。
「なあ、本当に
『兄さん、私のことを疑っているの!? 私たちはいつだって心で繋がっているじゃない!』
やばい、変な方向にヒートアップさせてしまった。うーん、実の妹に慕われていることは喜ぶべきものなのだが、なんか若干の引け目を感じてしまう。
俺はふとハヤちゃんに視線を移した。心なしか、
どうしよう、このまま続けるべきか。しかし、恵理香の様子が気になるのも確かである。少し悩んだ末に、俺はある可能性に思い至った。
『アーアー、聞こえるかぁー』
『どうしたの、兄さん。聞こえるに決まっているじゃない』
どうやら上手くいったようだ。これは
MMORPGでいうところの
そして、そう認識した瞬間、俺の目の前にもう一つの
【
直感的に、これが俺のスキル名であると確信した。
原典はあの宮本武蔵が
一方、ユビキタスとは、いつでもどこでも存在するという遍在性を表す言葉である。こちらも転じて、場所を選ばずネットにアクセスできるといったIT用語として用いられている。
つまり、世界中どこでも好きなときに通信ができる……と解すればいいのだろうか。ただし、あのリストにある名前に限るのだろうが。
『それでね……なんだから。ねぇ、兄さん、聞いてるの?』
『おっとごめん、ところで恵理香たちの方は無事なのか?』
ああ、考え込んでいて全く話を聞いていなかった。俺は慌てて向こうの近況を尋ねるが、それでも未だ頭の半分は自分のスキルのことで占められていた。
『東京はまだ無事よ。でも、状況は目まぐるしく変化している。今は極秘裏に首都防衛の準備が進められているわ。自衛隊、警察庁、在日米軍、それにレアスキルの保有者を中心としてね。そして、
まるで冷や水を浴びせられたように、俺は絶句してしまった。話の規模があまりにも大きく、そして速すぎて付いていけない。
『既に九州の半分近くが制圧されたわ。佐世保基地から最後に送られてきた情報では、全部で十柱の神々を確認したそうよ。
なんだろう、全く話が頭に入ってこない。これではさっきと同じじゃないか。そんな俺の心中を知ってか知らでか、恵理香は一瞬だけ
『西日本にいたら助からないわ。兄さん……私が必ず迎えに行くから待ってて』
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