第5話 義兄妹の誓い(前編)
「惜しいな、地上であれば倒れていたのは逆であったやも知れぬ」
力尽きて地に
敵地にて消耗戦を強いられた彼女は、まるで蜘蛛の糸に絡めとられた蝶のようであった。
「この
そうして、彼女の首飾りの紐を千切ると、翡翠に輝く勾玉を持ち去ってしまう。
「さあ、我が黄泉の軍勢よ。既に
女王の宣言を受けて、
俺は慌てて柱の陰へと隠れる。
しかし、これはとんでもないことになったな。イザナミの言葉が本当であれば、俺たちがいた地上は黄泉国と繋がってしまったことになる。
生者と死者の境が消えた、原初の世界への回帰……まるで悪い夢でも見ているかのようだ。
一方で、俺もまた地上に帰ることが出来るかも知れない。やつらが出て行った後をこっそり着けていけば良いのだ。
総勢1,500からなる
そして、最後に
「お前はここに残り、あの者に
一瞬、それが自分に向けられたものかと思い、にわかに心臓が早鐘を打つ。しかし、醜女は踵を返すと祭壇に向けて階層を降りていった。
どうやら俺ではなく、あの子への指示であったようだ。それもそのはず、俺の存在は誰にも察知されていない。
闘技場を埋め尽くしていた軍勢は既に消え、先ほど指令を受けた醜女の他に姿は見えない。今が脱出の絶好の好機である。
俺はまだ
……
……
そう、
同じ釜の飯を食った仲という言葉があるように、これで晴れて死者の国の一員となる。
あんなにも強く輝いていたあの子が、策略にはまって敗れ、勾玉を奪われて力を失い、そして虚ろな亡者へと堕ちてしまう。
そんなこと……そんなこと、見過ごせるわけがないじゃないか!
俺は駆け出していた。闘技場の観客席を落下同然に走り抜け、
不意を突かれた身体が5メートルくらい先へと吹き飛んでいく。当たり所が良かったのか、衝撃がキレイに相手に伝わり、俺の体勢はほとんど崩れていない。
しかし、油断してはならない。
俺は気絶したままの幼女を背負うと、今度は観客席を一目散に駆け上がっていった。
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