第9話 完凸は変態

今後を鑑み、頻出になりそうな用語をぶっ込んだ話を挟みます。

潔くスルー推奨です。

もしももしも興味があれば。


――――――――


「あそこで声かけないとか兄ちゃんやばすぎ。あの日はさすがに見損なったわ」

「そんな言わんでも。あ、そこのトランポリン乗ってジャンプして」

「あぁこれ、はいはい。だってさー、兄ちゃん旦那でしょ?何を白けた顔して静観してんのか意味分かんない」

「あ、これこれこの宝箱。これでラストかな」

「多分?どうせステージ追加来たらまたマルチ宝箱出るけど」

「いっそアカウント二個作って一人マルチしようかな」

「それは虚しすぎるから一緒にやろうよ笑」



夕灯は電話越しに笑い混じりに返した。

伽乃には兄弟がいないとさっき聞いたばかりだが、学校でSSSをやっている人なんて、他にわんさかいるだろうに。

夕灯は学校でのそれなりの友人がいるので、この手のマルチに困ったことはない。



夕灯に貰ったフレコを登録した伽乃は夕灯と電話越しマルチをしていた。

部屋に行けば良いだけと言えばそれまでだが、さすがにマズいとのことで電話越しに落ち着いた。


「え、ていうかウェイブの探索度100%はやばい。怖い」

「努力の天才って言ってよ。めちゃくちゃ頑張ったの」


SSSはいくつかのフィールドが設置されているオープンワールドゲームだ。

広大なフィールドにある大量の宝箱やギミックを解けば解くほど、この探索度というやつが上がっていくのだが、探索最難関と言われるウェイブの100%は他地域の100%と難度のレベルが違う。(フィールドが広い且つ複雑すぎて全部の宝箱を見つけることが難しい)


「暇人すぎ」

「そうだよ悪い?」

「一日のプレイ時間何時間だよ」

「平日7、休日13」

「えぐ」

どうやれば平日に7時間もゲームの時間が取れるのか逆に聞きたい。


「あ敵」

「精鋭だ」

フィールドにあるものは、ギミック以外に敵が大多数を占めている。

それぞれにランクがついており、高ランクの敵を倒すほど報酬はうまくなる(※1)


精鋭はレベル帯の中でも高ランクの敵で、現状上から三番目。

精鋭からは、敵の攻撃がかなり高火力かつ回避が難しいものとなるので、かなりの難易度となる。


「え、今ヒーラーもシールダーも(※2)入れてないよ!?行ける?」

一度対敵してしまうと、別地域にワープする以外、退散する方法がないため、最悪操作キャラクター全死の可能性すらもある。

それだけ危険ということだ。


「いけるって。精鋭だよ?」

しかし、夕灯の警告は他所に、伽乃は精鋭に突っ込んでいった。

夕灯も慌ててそれを追う。

しかし、

「よーし、報酬うまうま」


瞬殺であった。



「火力えぐい(※3)」

「気合い」

それは間違いない。

伽乃の動かすキャラクターのビルド(※4)を覗いてみるが、恐ろしい高水準だとすぐに分かる。


完凸、理想値に近い最適補助装備、バフキャラも高水準(※5)

火力が出ない方がおかしい。


「SSSにつぎ込みすぎでしょこれ」

夕灯は呆れを混じらせた冷や汗を垂らすが、電話越しの伽乃はなんら平然とした声だ。

「SSSこそが私の人生の宝物」

「もうちょいマシなもの探せ」

「二次元をマシなんて言うやつは敵だ」

「ごめんて俺もSSSは至宝だから」



伽乃は電話越しに笑った。

先日の夕食の席がまるで嘘のように笑っている。

それだけ二次元の威力はやばいということ。

彼女はもうここから逃れるつもりはない。



――――――――――――――――



※1 報酬がうまい

ゲーム界隈では報酬が沢山もらえた時、「うまい」という動詞を使います。何でかは全く知りません。


※2 ヒーラー・シールダー

どちらもゲームでの役割の名前。

「ヒーラー」は回復師のこと。「シールダー」はシールド(盾)を付与するキャラのこと。

どちらも耐久枠に変わりはないが、ヒーラーは減った自身の体力を回復、

シールダーは敵からの攻撃そのものを防ぐという若干の差あり。

どうでもいいが主はヒーラーを信用していない圧倒的なシールド信者。


※3 火力

「火力」とは言うが、火系パワーのことだけを指さない。

実際は、自身のキャラクターが出すダメージの高さのことを言い、敵の攻撃が強い際も、「火力が高い敵」と表現することあり。

水の攻撃でもダメージが高ければ火力えぐ、とか言ったりするので火には微塵も意味ないです。


※4 ビルド 

キャラクターのステータス〔戦闘に関わる細かいステータス、数値のこと〕のことです。

伽乃ちゃんなら、「優人のビルド」というと、彼女の推しキャラクターの攻撃力とかのステータスを表し、これら以外にも装備する武器などもビルドという呼びに含まれます。


※5 ☆ゲーム専門用語すぎるので割愛を推奨☆

・一旦、「凸」について説明を。

一般的にはキャラクターを重ねるという意味だと認識。

つまりは、“同じ”キャラクターをガチャで何度も引くということです。

勿論、重ねれば重ねるほど(重ねる回数の上限あり)効果は増加していく。

いわゆる「完凸」はこの上限まで重ねた場合を差し、完凸はほんとに馬鹿です。かかる金が尋常じゃない。


・「補助装備」とやらは、武器以外にもキャラクターに装備させるものがSSSには存在する設定なので補助装備と言っています。

伽乃ちゃんが教室で強化してゴミになったのはこの補助装備ってやつです。

ここはもうゲームによって指す内容も変わるし、そもそも装備は武器だけの場合も勿論あると思います。


ちなみに、前にくっついてる「理想値」というワードは、諸々のステータスが、どれも最高の数値でいった場合に生まれるビルドで、SSSの場合、補助装備を全て理想値にするとか不可能なので、この理想値はあくまで「理想」です。


・ゲーム界隈ではそれなりに聞く「バフ」

これはアタッカーキャラ(シールダーなんかはこれに該当しない。つまりはパーティの中で一番の火力出すキャラ)の火力を盛るために効果を上乗せすることです。

これを本職とするキャラは一般的にバッファーと言われます。

バフする内容も色々あったりするんですがそこはもう主のやってるゲームがバレるどころの騒ぎじゃなくなるので自己規制。

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