第7話 みんな、Twitterに集合よ

Xですが。


今更ですが、ロリとは小さい女の子(幼女)、ショタとは小さい男の子を指します。

が、が!ショタは実は基準がロリより広く、本気の小さい男の子キャラ及び中学生くらいの子もショタに含まれます。(あくまで主の認識)

伽乃が好きなショタは中学生から高校生の小さめの子くらいです。変態ではありません。

(あくまで主の認識)


良く覚えておきましょう。(今作よく出てくる単語ということ)


――――――――



(この作家さんの天才的なところは、書きたい内容を入れるための話題を自然に入れるところだよな)

要は、AとBの初対面というシーンを入れる為に、どのような状況まで持っていくかの技術が素晴らしいということ。


(夕灯くんの推し、これか)

ロリ大活躍回という若干のネタバレを喰らいながら読み始めた今巻だが、確かに作中で現状唯一のロリがこのシーンを作るために奔走するのが今巻メインとなっている。


(ロリコンの感情が分からないわけではないけど、やっぱりショタだよねぇ)

伽乃はベッドに寝そべりながらページをめくった。




妻藤家の子供は二人。

燈夜と夕灯の二人きりだ。

次男にあたる夕灯が寂しい思いをしてきたことは確実だろう。

正直、大企業の子供なら仕方のないことだ。

跡継ぎとなる長男にかかりきりな育児の半面で、次男以降の扱いはどうしても雑になる。


その寂しさを、二次元で埋めていた、否、埋めているのだとしたら、それには酷く同情出来る。


どうでもいい話だが、“ロリコン=妹が欲しい”というわけでもない。

意外にも、二次元と現実を紐付ける読者は少ないのだ。


どれだけ好きで好きでたまらないキャラクターがいたとしても、どこかでこれが二次元だと理解してしまっている。

伽乃だって、ショタが好きだから弟が欲しかったかと聞かれればそうではない。


「推し」という“存在”と、「二次元」という“概念”に求めるものが違うというのが根幹だろうが、二次元に思いを寄せる人間のほとんどが、現実で感じた感情を二次元に浸る間は忘れられる、という理由で二次元を愛している、と思う。


(夕灯くんが二次元に求めているものは何だろう。)

どうしても気になるわけではない。

これほど、プライバシーという用語がはまる事柄はない。


純粋な孤独か、ただ愛でたいだけか、本当に妹が欲しいという可能性も勿論ある。



(私は、感動を頂きに二次元に浸る)

しかし、伽乃の回答は決まっている。


ゲーム然りアニメ然り漫画然り、最近ならラノベも然り。

感動という着眼点であれば、一番の栄養源はアニメのように感じるが、それはともかく二次元という世界に感謝するしかない。


(しっかし今回神作すぎる!!)

夕灯のネタバレも許してやるとしよう。



漫画も堪能したところで、伽乃はとあることに気づき、慌ててスマホからTwitterを開く。

(SSSの情報更新は・・・あった。)

勿論、最推しゲームの公式アカウントはフォロー済み且つ一定時間事に確認する習慣もついている。

そして現在夕方七時ジャスト!!

そう!公式Twitter更新の時間である!!


(っ!!次バージョンのインフォメーション生放送の予定来た!金曜日!!)

今日は水曜日なので、二日後、明後日だ。

(さすがに優人がイベントで来てくれないと私は精神的に死ぬ)


近年、SSSのようなオープンワールドのRPGゲームは増えつつある。

〔ソシャゲという認識で大丈夫です。ソシャゲの意味は下記にて〕

それらに流行で飲まれないようにと近日気にしているが、それを食い止めることは出来なそうだ。

ガチ恋勢生産機筆頭の優人がそろそろ来ないと、SSS女子たちは死に絶えるぞ。



「伽乃様」

伽乃がベッドの上で悶絶しかけていると、扉が数回ノックされた。

爆速で起き上がり髪と服を整える。

「はい」

「ご夕食の支度のお手伝いに参りました。お部屋に入らせていただいてよろしいでしょうか?」

「はい。構いません」


夕灯が言っていたように、夕食には毎度女中さんが呼びに来てくれるれるようだ。


(・・・・・・・ん?夕食の“支度の手伝い”?)


扉が丁寧に開けられるのを作った表情で見守っていると、伽乃は変なことに気がついてしまった。



「妻藤家のご夕食は、ご家族皆様で一斉に召し上がります。その際、夕食の席に相応しい服装に着替えて頂く必要があります」


(めんどくっっっっさ!!)

佐藤家では伽乃は部屋着で夕食くらい食べていた。

これが格差というやつか・・・・。



(妻藤家の当主と奥様、初日に一度だけお目にかかったけど、結構面倒くさそうな人だったんだよな)


家族全員でということはそういうことだ。

伽乃と燈夜の気まずさが半端ないことはこの際一旦置いて、ここの主人らと二度目の対面になる方が面倒くさい。

初日は、付き添った父と妻藤の父親が何やら仲よさげに話していたので、伽乃と妻藤の両親は特に会話をしていない。


(けどあの奥様のなめ回すような視線。絶対、「こんなやつが燈夜の嫁に・・・」とか思ってる顔してた)

失礼極まりないことを想像していると、やってきた女中らは既にいくつかの服を見繕っていた。



「伽乃様は和装と洋装のどちらがお好みですか?」

「別にどっちで――・・・・。えっ和装・・・?」

今20☓☓年だよ??と言ってしまいたくなるようなことが女中から飛び出した。

「はい。旦那様と奥様が和装を好まれるので、こちらには多くの和装も揃っております」

平然と答える女中に、伽乃は内心で白目を剥きたくなる。


「私、家から和装とか持ってきていないの」

「奥様が、伽乃様にと和装をお贈りになっています」

(そんなの聞いてねぇよ・・・!)

聞いてもいないし見たこともない。

それを今口にした女中が、手に沢山の荷物を抱えていることがそれを物語っている。


「ええと、特にこだわりはないので、貴方達で決めて頂けますか?」

「かしこまりました」

和装の知識は浅いので、ここは彼女らに任せる。


和装を頂いた手前、白昼堂々と洋装でも行けない。

つまりは和装着てこいという、奥様からの圧と受け取るのだから、無知を恥じている暇はない。



「袴と着物がございます。好みはございますか?」

「ない」


よくよく考えれば、この館は日本家屋なのだ。

そこ自体にも、主人らの好みが出ていたのなら、もっと早くから和装への知識を蓄えておくべきだった。

(今日は頭の中の7割が二次元に飛んでた。ちゃんと正そう)


今一度、気を正す必要がありそうだ。

脳面積の内、浸食の進む6割の二次元知識を弾き飛ばし、残りの4割を引っ張り出す。



女中らが持ってきたのは、白地に朝顔があしらわれた着物に紺地の袴、同じく白地に紫陽花の着物に薄い紫の袴、あとは・・・

「!」

季節は夏。

月で言えば六月なので、紫陽花の袴や朝顔の袴は季節に相応しいものと言える。

しかし、ここは敢えて意外性を突こう。


「これで」

「!し、しかし・・・・」

女中も勿論慌てる。

しかし、伽乃はにっこりと笑った。



*****




「ごめん。結局今になった」

「いいよ。いつでもいいって言ったの俺だし」

袴に漫画という構図は中々に恐ろしいものだが、部屋を出てすぐに夕灯と会えたのは幸運だった。

周りに見られないようにさっと借りていた漫画を返す。


「・・・どうだった?」

「神作!千里せんりが大活躍するって意味すぐに分かった!ちょっと千里推しになりかけたよ」

「千里は神だからね」

興奮気味に感想を述べる伽乃に、夕灯も自慢げに腕を組んで頷き返す。


「伽乃さんって『京都幽夜』、全巻持ってんの?」

「当たり前。全巻どころかブルーレイも全部揃ってるよ」

「金掛けすぎでしょ」

夕灯がくすりと笑うが、伽乃からしてみればオタクとして当然のことだ。




「夕灯くんも和装なんだ」

今時いまどき時代遅れでしょ?父さんと母さんの趣味」

女性だけが袴なのかと思いもしたが、どうやら一家全員が和装を嗜むらしい。


夕灯が着ているのは伽乃のようにかっちりとした袴ではなくラフな着物のようだ。

初夏らしく薄手で青の着物。

先ほどまで学ランを見ていた身からすると、中々のギャップがある。


「伽乃さん、この季節にそれは勇気ある」

「ちゃんと理由はあるんだよ」

「知ってる。マナー違反にはならない」

伽乃の袴に描かれた柄に目を付けながらも、夕灯はその意味を知っているようだ。


「どっちかと言うと真夏のイメージはあるけど」

「そこはご愛敬」

確かに、真夏の暑さに対抗するための柄という方がイメージはしやすい。

が、そこは奥様の様子を覗くのに丁度いい挑戦だろう。




「伽乃様。ダイニングまでご案内します」

「あ、いい。俺一緒に行く」

「・・・・・・かしこまりました」


女中らが伽乃を案内しようと声をかけてくるが、夕灯は一緒に行くとそれを断った。


「サンキュー・・・・」

「伽乃さん、人生息苦しすぎない?」

「それな」


自らのほぼ全てを隠しながら生きることが、どれほど重いことか、夕灯にはまだ分からない。

この口調も、好きなことも、表情すらも全てを隠してここまで来ているのだと改めて思うと、素直にぞっとする。

もうほとんど、別の人間を演じているに相違ないだろう。


「兄ちゃんは、伽乃さんのそういうの、全く知らないの?」

燈夜と奏に自分のことを口にしないでくれと言ったのだから、そういうことだろうが、改めて聞いてみる。

「そりゃそうだよ。燈夜さんも夕灯くんのご両親だって、佐藤家の上品な令嬢を嫁に迎えたいと思ってきたんだよ。それは私じゃないのにね」


伽乃は暗い表情を落とす。

この表情を拭わないといけないのは、きっと夫となる兄だ。

しかし、あの鈍感自己中に今この瞬間は見えていない。


夕灯は袖元から一つの紙切れを取り出し、伽乃に向けた。


「?」

「SSSのフレコ(※1)」

「え・・・・・」

紙切れには、ついさっき即席で書いたと丸わかりな八桁の数字。

伽乃はその紙を前に硬直した。


「あ、嫌ならいい。俺がなりたかっただけだし・・・」

想定していたよりも長い沈黙を返されたので慌てて弁明する。

恥ずかしいことだが。


「天才・・・」

「は?」

「これであの宝箱を強奪出来る」

「は?強奪?」

「運営様からだよ。マルチ(※2)でしか取れない宝箱。あんなボッチに冷たい対応は二度と許さん」

「・・・あ、あぁあるね・・・・・そういえばそんなの」

伽乃はニヤリと、殺人犯一歩手前にすら感じられる悪役顔を浮かべていた。


「じゃ、マルチで取るあの宝箱共を強奪するの、付き合ってね」

「え、あ、うん」

「じゃ行こ」


フレコの書かれた紙を大事そうに胸元に仕舞うと、伽乃は再び歩き出した。


(案外フッ軽?)

何だか深く心配したことを後悔しそうになった。

(そんだけ、二次元命ってことか。それが良いのかは知らないけど)


弟視点から見ても、顔はいい旦那が出来たというのに、それに一切の興味も示さず二次元の男を愛し倒すというのはどうなのか、まだ青い夕灯には分からなかった。




――――――――


※が全ての雰囲気を玉砕している気がしてきました。

が、この二人のオタク気質を書くのはひたすら楽しいので玉砕を選びます。


ちなみに主のやってる某ゲームには、ハート型の地面にマイキャラとフレンドが操作するキャラと二人で立つことで宝箱がゲット出来るような、悪意しかない仕様もあります。とんでもねぇ。




――――――――


ソシャゲ

主及び伽乃が狂ったようにハマっているものは大抵がソシャゲというゲームジャンルに該当するものです。

略称でなくすと、ソーシャルゲームになると思いますが、実際は課金でガチャを回すゲーム、要は課金ゲーという印象が強いのではないでしょうか。

全く間違っておりません。その通りです。

※主、伽乃共に無課金貫いてます。


※1 フレコ

フレンドコードの略。多くのゲームにはフレンド機能があり、現実の友人然りゲーム内で出会ったユーザーとコードを交換することで、ゲーム内メッセージや一緒にゲームをすることが可能。


※2 マルチ

上記の、フレンドで一緒にゲームをすることをマルチと言う。このマルチ、要はフレンドがいないと成立しないわけだが、ゲームに籠もる人間にコミュ力お化けがそういるはずもなく、マルチをすることで得られる報酬などは暗い海の底に消え、そして我々ユーザーの記憶からも焼却しようと日々奮闘されるのであった。

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