第2話 オタクぅぅ

財閥グループの新妻になったからとて、生活に変化はない。


意外にもプライバシーは守られているため、伽乃かのは部屋で一人。


が、屋敷だけは広いため、用事がない限り伽乃の部屋のドアが開かれることはないし、声が漏れて誰かに聞かれることもない。




「えーと、かれこれこの迷宮にこもり始めて早半年。出ないものだね神装備は。ブツクサブツクサブツクサ・・・・・・」


佐藤家令嬢の口から、呪文が漏れ続けた。(理解する必要なし)


両手でスマホを手にベッドに寝そべっている。


パソコンに乗り換え(※1)てもいいが、慣れ親しんだスマホでの操作が伽乃には合っているため、今もこうしてちまちまとプレイしている。






スマホゲームを。





そうだ。佐藤グループとはゲーム会社として繁盛している。


その娘がゲームをしているなんて、何もおかしいことはない。


――それが自社のゲームならば。



「え、なにこのギミック。いや、いやいや違うんだ。砂漠のギミックなら攻略サイト(※2)なんて頼らずに全部網羅出来るのに。このステージのギミックとはめっぽう相性が悪い。ブツクサブツクサブツクサ・・・・・・・・・・・・・・」



これら、全て独り言、否いな、スマホとの会話とでも濁そうか。





伽乃は幼い頃からゲームに慣れ親しんでいた。


テストプレーヤーとして多くのゲームをプレイしてきたし、PS(※3)もそれなりのものになっている。



が、今やっているのは、自社のゲームではない。


もっと言うなら佐藤のライバル社のゲームである。




抑揚つけて一人で寸劇を繰り広げているように見えようこの光景は、ゲーマー特有の、スマホとのサシ会話である。






佐藤改め妻藤伽乃、16歳。

佐藤グループ令嬢からこの度、妻藤財閥新妻になったFJK。

その素顔は




これが、佐藤グループ絶世の美少女でありお嬢様、妻藤伽乃の本性であった。



※1 パソコンへ乗り換え


心海のプレイしているゲーム、主となる媒体はパソコンであり、スマホでこれをプレイしようものなら、容量と充電が吹っ飛びます。


スマホプレイで始めたため、パソコンでプレイするように変えようか悩んでいるが、慣れているためスマホに悲鳴をあげさせることを選んでいるということです。




※2 攻略サイト


世のだいたいのゲームには攻略サイトが存在しています。ガチャで引けたら嬉しい強キャラ一覧、キャラのおすすめ装備、難しいギミックの解き方、などなどが載っている、いわばその界隈の神です。




※3 PS 


プレイヤースキルの略。要はゲームが上手いか下手かという用語。


ゲーム界隈では基本どこでも出てくるので、覚えておいて損は無し。

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