第36話・敗北へのカウントダウン①

「ガンマ様、逃げてください……」


 執拗しつようなぶられ続け、地面にひれ伏した赤髪の少女がはかない声を上げる。


 彼女のHPは既に0ゼロに近く、あと一撃喰らえば死亡する直前だった。


 そして――、


「ぐぅ!?」

「フィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!」


 彼女の背中に剣が振り下ろされる。

 敵の無慈悲な攻撃は、あっという間に彼女を世界から排除した。


(何でこんなことに)


 チームの動きは悪くなかった。


 ダンジョンへの向き合い方も。

 敵プレイヤーとの戦闘も。


 別にダメな点は見当たらなかった。


 それなら、何故こんな事態におちいっているのだろう。


 今やガンマの周りには誰一人として味方は居なかった。


 フィーだけでなくシータも。

 そして、シグマもまた倒されてしまった。


 信じられない。


 相手チームはプロどころか名のあるプレイヤーですらない。


 日々研鑽を積んできた自分達が負けるなんて想像だにしていなかった。


「ふっ」


 この災厄さいやくを引き起こした悪魔が近付いてくる。


 ガンマは迫りくる恐怖に身を震わせながら、ここまでの過程を再度頭の中で展開した。

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