第5話・誰でも出来る! 壁壊し! 後編
突如現れたご新規さんを前にして、ガンマは思わず息を
今まで見てくれる人もコメントしてくれた人もフィー以外いなかったからだ。
(丁寧に。そしてリアクションは大きく、か)
「ゾル太さんこんにちはー。これは初級ダンジョンの壁の破壊するバグ技を
ゾル太:えぇ! ダンストにバグ技ってあるんだ!?
「結構ありますよ! 面倒なものが多いですが。この技はもうすぐお見せ出来るのでもう少々お待ちください」
骸骨の190回目の攻撃を回避しながら答える。
5秒に1回ペースで振り下ろしが来ることを考えると、残りは50秒後に見せれるだろう。
そして199回目のスケルトンの攻撃をかわしたところで叫ぶ。
「次です!
言って正面のモンスターに集中する。
相手の腕が下がるのと同時に、自身もまた行動に合わせて腰を下ろす。
そうして骸骨の右手とガンマの尻が壁に触れた瞬間、世界は壊れた。
「出来ました! 成功です!」
フィー:88888888888
ゾル太:はえー
ご新規さんも驚いてくれているようだ。
それはそうだろう。
不思議な儀式によってダンジョンにあった壁という壁が全て消え失せたのだから。
「いつ見ても
壁がない。
たかがそれだけ。
しかし、プレイヤーを
「うえっ!?」
まるで「調子に乗るな」と言わんばかりに。
所詮はバーチャルゆえ別段痛みは無いが、ちょっとした衝撃はある。
「え、あ、ちょ!」
思わず態勢を崩してしまうガンマ。
踏ん張ることも出来ず、重力に引っ張られるように後ろに倒れ込んでしまった。
「せ、セーフ」
ブリッジに似た姿勢を取りながらほっと息を吐く。
壁壊しは見た目こそ消えてしまうが、実態はというと存在を酷く不安定にする技だ。
幸いにも、ちょうど腰の部分の壁の判定が残っていたらしい。
そうでなければ永遠に異世界を落ち続ける
ゾル太:どうなってんだこれ!?
「あははは、おバカなところを見せちゃいましたね。これは壁の判定をバグらせてるだけなので、見えない壁が残ってたようです」
ゾル太:やってることが凄すぎて壁を感じるんだが
フィー:考えたら負けですよ!
何故か視聴者が引いていた。
ただ、自分勝手に楽しんでいる少女もこういうところはきちんとフォローを入れてくれるらしい。
「それじゃあこのバグ技を使って面白いことがまた出来るので、そちらの方を試して――って、あれ?」
腹筋に力を入れ、起き上がろうとするが上半身がどうしても壁があったラインを越えていかない。
一旦息を吐き、再度試してみる。
だが、またしても見えない壁を越えられない。
(おやおや?)
どうやら壁の判定が復活してしまったらしい。
その証拠に少し起き上がり、腰付近の空間を擦ってみたが不思議な触り心地があった。
「あらー。詰みましたかね、これは」
古来より、ゲームのバグ技にはよくあることだ。
ダンストも大本はゲームであることを考えると、このようなことが起きてもおかしくはなかった。
ゾル太:あらら
フィー:こんな情けない姿が見れるのはこのチャンネルだけ!
(どういう宣伝だよ!)
どうにか
しかしながらどれだけ粘ったところで体は固定されたままだった。
「っぅ!?」
そろそろ強制ゲーム停止するべきか考えた時である。
何故か
(まさか……?)
慌てて上半身を起こすと、骸骨が攻撃を再開していた。
壁の向こう側に飛び出したことで、見失っていたガンマを再度発見したのだ。
「やめっ!? やめろぉ!?」
ゾル太:うわぁ、悲惨
フィー:配信止めてええええええ!!!!
ゾル太:見た目はかなり面白いからok
フィー:いいぞ、スケルトン。もっとやれ
ゾル太:情緒不安定かな?
かなり言いたい放題だった。
それにしても不味い状況である。
楽しんでもらえているのは何よりだ。
しかし、こうも情けない姿を見せた上に雑魚モンスターにやられたとあっては、今後の配信人生に関わる事態だろう。
(背に腹は代えられんか。強制停止しよう)
人差し指を素早く2回、縦方向にスライドさせコンソールウィンドウを呼び出す。
呼び出す。
が、出てこなかった。
「何で!? こっちもバグったか!?」
ゾル太:コンソール出せないのか……
フィー:バグの申し子ですねぇ
チャット欄から
同時に、リスタートする元気も無い程彼の精神力は削られていた。
結局、この日の最大同時接続数は2人。
動画の内容も結果も満足いくものではなかったことに、ガンマは酷く落胆した。
しかしながら、ジムの休憩室のモニタから見ている人間の存在に彼は気付かなかった。その人間がガンマの
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