裏警察に目を付けられました
人間どんな状況でも可愛い女の子が出てきたら毒気が抜けて緊張感がほぐれるだろう。日々斗はそう信じていた。だからyoubuteを開いたら可愛い
「先ホドノ人? 小サイ物? チョットヨクワカラナイノデスガ、何ノオ話ヲサレテイルノデショカー?」
「とぼけないで、私の目は誤魔化せないわよ」
秒で看破され、美少女の眼差しに懐疑の感情が宿る。しかし日々斗は(……あれ?)と、ある疑問が頭をよぎった。
(警察のような、スーツの上からトレンチコートを着ているオッサンならまだ分かるのに、こんな美少女が先ほどのやり取りを問い詰めるって、なんでだ?)
冷静な判断能力が僅かながら戻り、改めて目の前の美少女を見やる。
シックな黒いロングコートの中に真っ赤なワンピースをまとい、タイトなニーハイブーツを履いていた。彼女の姿はまるでファッション雑誌から抜け出したようで、周囲にお客さんがもっといたならば通りかかる人たちも振り返ってしまうほど。
だが、そんな女性、というか背丈や顔の幼さからして少女が、何故そのようなことを、初対面である日々斗に窺うのかが、気がかりでならなかった。
「あの、一つ良いですか?」
「あら、私の美しさに見惚れて感想でも述べてくれるのかしら? もしそうなら聞くだけ時間の無駄ね、知ってるもの」
自慢げに肩まで伸びた黒髪をたくし上げて、ちょっと嬉しそうに美少女は余裕をもって微笑んだ。そこにおずおずと、猫背になりながら、椅子に座った下から目線で日々斗が口を開いた。
「女性に対して失礼を承知でお尋ねするのですが、成人されては、ないですよね? 多分俺と同じ高二くらいじゃないですか、なのになんで聞いてきたのかな……と、思いまして」
電車の通る道から、僅かな風が通り彼女のキラキラとした黒髪を揺らした。しかし彼女の体はピクリともしない、髪をかき上げた右腕が静止している。
しばらくの沈黙の後、うわづった声で返した。
「ふふふ、なるほど、貴方良い目をしているわね」
「視力は最近悪くなった方です。眼鏡にしようと検討中ですが」
「眼鏡ならかけてるでしょ、とびっきりカラフルな眼鏡を。見た目で人の、特に女性の年齢を断定するのが失礼だって道徳の授業で習わなかったかしら? さわやか三組は見なかったの?」
「おじさんが見たとか見なかったとか言ってた気がしますが俺は世代じゃないですね、ってやっぱり成人されて――」
「……常識なんて押し付けられずとも学ぶものでしょう? 」
「え、あ、そうですね、失礼しました……?」
美少女が物凄い剣幕で睨んでくるので質問の内容が何だったのかを忘れてしまった日々斗は(成人の女性であることって美人だっていう形容だと思っていたんだけれど、そもそも女性に対して年齢の話題そのものが失礼に当たる、のか? 女心はそういうものなのかもしれない)と一人で納得する。
そしてふぅ、と、美少女は一息ついた。
(確かに突然事情聴取するのは勇み足過ぎたわね、
冷や汗をワンピースににじませる美少女。
それもそのはず、彼女、
外国人観光客が狙われる犯罪が横行し、対外問題を意識してかそちらにリソースを多く回している警察は、他の犯罪に手が回らずおろそかになっていた。それもそのはずで、警察は動こうにも何かしら被害が
しかし裏警察は違う。警察が秘密裏に組織している裏警察は非合法に日本の悪事を取り締まるため、そこらへんの手続きをすっ飛ばして解決することができるのだ。
だがリスクも当然ある。先述の通り非合法なため、表の警察に見られたら普通に逮捕される。なので飽くまで表立たず、秘密裏に事件解決を目指す必要があるのだった。
おほん、と百合音は気を取り直す。だが先ほどのミスを念頭に置き、表面上はできるだけ高校生らしい会話をするようにして、先ほどの男とのやり取り、そして狙いを聞き出さなければならなかった。平静を装って百合音は言葉を絞り出した。
「それにしてもこの時間は人通りが少なくて怖いですね、こんな時間に高校生が一人って危なくないでしょうか?」
(一介の高校生が夜に出歩く方が不自然、このアプローチから攻める!)
「え、それを言うなら貴女の方が危なくないですか? 最近物騒じゃないですか、誘拐とかあるらしいですし」
「ふむ、なるほど、そういう考えもあるわね」
(案外頭が回る男の子ね、確かに私のような超かわいい女の子が人通りないところにいないわけがない、目に留まった瞬間世の男性はメロメロでしょうから。パパも言ってたし)
※百合音は裏警察として一般社会に離れて警察官に育てられたので、まだまだ俗世に疎いのだ。
「って私は良いのよ、貴方は何故こんな夜遅くにいらっしゃるのかしら?」
むっとした表情で、腰を折り日々斗に顔を近づける。サラサラと揺れる髪の毛から良い匂いがするのを感じつつ、しかし自身の真の目的を思い返すことで意識を再度覚醒させる。歯噛みし、諸悪の根源を頭に浮かべながら、腰を浮かして怒りを込めて呟く。
「……俺だって、こんな時間までここにいたくはなかったですよ」
日々斗からあふれ出る圧が、百合音の警戒レベルを一段階上げさせた。
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