第2球目 決断
次の日。
「野球部の体験入部行こうぜ」
小学校からの野球仲間である相原から誘われる。
「お、おう」
琢磨の歯切れの悪い返事に追い打ちで
「中学でも一緒に野球できるのが嬉しいな!小学校では監督が合わなくて琢磨はレギュラーになれなかったけど中学ではすぐなれるさ!」
野球部の体験入部にも行ってみたが迷いが生じていた。
ほんとに野球部でいいのか?
琢磨にとっては3年間の野球経験はトラウマに近いものがあった。
一生懸命に練習してもレギュラーになれず、親の目と友達の目を気にして辞めることもできず続けてきた。
それでも中学でも野球を続けなければならないという義務感があったが果たして自分自身それでいいのか?
思い立って卓球部の副顧問に相談に行き、悩んでいる内容を伝えた。
「私は君に卓球部に入ってほしいと思っている。何故だか分かるかい?」
「んー、人が足りないとかですか?」
「違うよ。卓球部が君を必要としているからだよ」
「何で俺みたいな初心者が必要なんですか?」
「初心者は君だけじゃないよ。先輩もこれから入部してくる同級生も皆んな最初は初心者さ。そこから切磋琢磨して強くなる。そしてチームとして高みを目指すんだ」
「俺は卓球で強くなれるんですか?」
「なれる。私が保証する。あとは君の頑張り次第かな」
「ありがとうございます、もう少し家で考えてみます」
帰宅後に1つ上の姉にも相談をした。
「姉ちゃんはソフト部に入るのに悩んだりしなかった?」
「何だよ急に!私は悩まなかったよ。上手かったからね」
はだけた格好で自慢げに言うのが少し腹が立つ
「俺が卓球部に入るって言ったら父さん怒るかな?」
「あんた野球部に入らないの!?まぁ父さんは何を言うか分からないね」
「まだ、ちゃんと決めた訳じゃないんだけど‥どうすればいいか分からなくて」
「今まで優柔不断で何も決めなかった琢磨が自分で選んだ道なら私は応援するけどね。母さんも応援してくれると思うよ」
必要とされる、自分で決める道、体験入部で楽しかった卓球の体験、父の目、友達の目、色々と考えていたらベッドで横になっても眠れずにいた。
12歳には難しい決断を迫られていた。
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