第12話 氷河珠
「小雪。人を騙すにはどうしたらいいと思う」
真っ赤にした顔を、ふるふると小雪は横にふった。
「真実を混ぜるんだ。嘘の中に。事実と出切るだけちかくして」
「う、嘘ですっ!」
「嘘じゃない。真冬ならいざ知らず、お前のような子供にどうしてこんな指示が出る」
「だって。あたしは姉様のお目付け役で。他の銀の子達だって……」
「ならば、この書状を持ってきたのは誰だ?」
「あ」
それを手渡してくれたのは真冬だった。
「小雪。では聞こう。氷河珠とは何だ?」
「そ、それは」
返らない返答を雷は待った。
「白金の子供は偶然でしか生まれてこない。だが、白金どうしの子供は必ず黄金色の髪を持つ子供になる」
一泊おいて雷が続ける。
「白金をも超える力を内在した子供の心臓。それこそが氷河珠だ」
「そんな」
「小雪っ! 雷から離れてっ」
「姉様!」
「帰ったら小雪も殺される! 氷河珠が手にはいるまでの繋ぎに」
子供が生まれるまで溶ける大地は待ってくれない。里の銀の髪の子供がいなくなったのは、心臓を抉られ大地に捧げられていたからだった。
「くっ」
☆★☆
真冬視点。
真冬から放たれた薄氷が雷の腕を傷つける。雷が放った風を掻い潜って、真冬は小雪の傍へ行くと雷へと手刀を繰り出した。雷の表情から余裕が消える。同じ位の力を持つとは言え、戦った事などなかったからだろう。自身の子供を守る為、そして小雪を守る為に真冬は必至だった。
「真冬。お願いだ。人間界では黒髪の雪の精は生きていけないんだ。頼む」
真冬の攻撃を避けながら、雷が懇願してきた。それでも、真冬にとって一番大切だったのは我が子だったのだ。お腹の中にいるまだ生まれていない子供。雪羅との子だ。
雷はまだ迷っているのだろうか? 本格的に攻撃を仕掛けてこない。
氷の塊が真冬の前に隆起する。真冬が放った攻撃だった。瞬間とびすさった雷の後ろに回り込み、背中から大量の薄氷を放っていた。
「ぐっ」
流石の雷も膝をついて蹲っていた。振り返られる間もなく胸を真冬の手刀が貫く。
ゆっくりと抜かれる腕。青い血が噴き出し周囲を染める。
話す事でなんとかなると思っていた訳ではないだろう。だが、雷の性格から真冬を力でねじ伏せる事は出来なかったのかもしれない。
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