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「マザーの要求は何だ?」
「すべての差別を止めよ、だとさ」答えたあと、劉は
マザーらしいやり方だ。無人の場所でサイキック・パワーを見せつけた。
これで、
安全な場所で指揮をとっていた戦争指導者たちは、はじめて最前線に立つ兵士の気持を味わったのだ。
サイキックにも弱点が有る。大技は命を削る。優勢と判断すれば、
「ワタシと同じことを考えているな。そのとおりだ。当面、サイキックと人類の衝突は先延ばしされた。ついでにキミが喜ぶ話題も提供しよう。ECHIGOYAの横領事件は不起訴になった。誤認捜査だとよ。茶番だな」
「洋上の人工島だ。ここではすべての通信が遮断されている。キミの友人は優秀なハッカーだが、そう簡単には突破できん」
コクマーのしかめっ面が浮かんだ。
「で? オレに何の用がある? 説明しろ」
劉は立ち上がった。「ついて来い」
シュウが出てきた建物の隣、別棟へ向かう。ホールに入ると3基のエレベーターがある。左端の扉を開いた。
劉に付き従う。大型車が一台収まりそうな巨大な箱が二人を地下へ運んだ。
扉が開くと、オレンジの薄明りに照らされた空間が拡がっていた。
そこは奇怪な水族館だった。
ガラス壁で遮られたむこうに、円筒水槽が整列している。
「ラボだよ」劉は呟いた。「水槽に浮いているのは、ワタシの躰を強化する予定の、素材たちだ」
水槽に充たされた黄味がかった液体には、鼻や口にチューブを挿入された裸体が浮いている。
まるで標本だ。標本にしては、あまりに生々しい。
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