第127話 終結と捉える

 前回までお話したことはひとまず終結と捉えています。進展はあったということ。

 謝罪がなかったとしても、それは仕方のないことだと思う。


 人は悪いと思っているから謝罪する。

 もしくは面倒や争いを避けるために謝罪する生き物。

 悪いと思っていない限り、無理やり謝らせたところで意味はないし満足しないはず。


 自分は苦情処理の講習を受けたことがある。接客系の話なんだけどね。

 その中で「怒っている客が求めているのは直接的な謝罪ではなく、理解だ」という内容のことを教わったのね。

 何故怒っているのか理解して共感して欲しいわけだよ。

 つまり「それでは怒るのも無理はない」という結論が欲しいということ。


 男女関係で起こりがちな喧嘩の中に、これの相違が元で嫌になるケースは多いと思う。理解もせずに謝るから繰り返す。そして別れる。当然だね。

 特に男は謝れば済むと思っている人も多いでしょ?

 それではダメなんだよ。相手が何について、どうして怒っているのか理解をする必要がある。それは人それぞれ違う。理解した人は繰り返さない。ただその場を乗り切るために謝る人は、未来がない。


 だから謝るなら相手が何について怒っているのか理解を示し、「それでは怒るのも無理ない。気づかなくてごめんね。次からは気を付けるよ。許してくれる?」と問うのがナチュラル。その代わり、二度と同じことをしてはいけない。

 繰り返すから相手は理解力のない人だと思い、段々と小言が増えていく。

 話せばわかるという相手には人は怒らなくなるものなんだよ。


 素直に受け止めて改善する人には段々優しくなっていく。だから初めは怒った人も、「これがこうだから、これを止めて欲しいんだ」もしくは「こうして欲しい」と理解を求める言い方になる。


 他人は自分を映す鏡。

 相手にちゃんと向き合わないから、相手もだんだん自分を尊重してくれなくなる。そういうものなんだよ。


 例えば周りを変えることは出来ない。けれども、自分の態度を改めたら人は優しくしてくれるものなの。

 俺の職場では最近また上司が変わったんだけど、それは突然の業務命令だった。

そして以前、研修に来ていた人が担当になった。俺の上司にあたる人の仕事は専門職なので、なかなか代わりが出来る人がいないんだよね。

 その人の専門分野以外は俺でもできるから、前の上司に「サポートをしてあげて」と言われていた。しかしその新任は以前研修に来た時は全然やる気がなかった。

 なので俺はやる気ない人の手伝いはしたくないと言ったわけだが。


 彼は頼る人がいると甘えるタイプなんだろうね。

 引継ぎが慌ただしく終わって、面倒を見てくれる人がいなくなったら自覚が芽生えたのか一所懸命仕事をしている。けれども俺の上司が担当する仕事はよほど優秀でなければすぐに習得できるものではないんだよ。

 前任は中途採用の人だったし、その前の上司も中途採用の人。二人とも凄く優秀な人だった。中途採用の人は正直、別のところで経験を積んでいるから仕事ができる人が多い。

 まあ、強くてニューゲームみたいなものだねw


 簡単でない仕事を新人同然で行うことになった現上司。大変だよ。上手くいかなくて、なかなか進まなくて。俺も管轄外だから教えてあげられないし。

 前の上司は非常にフレンドリーで人に好かれるタイプだった。自分では頼んだりしなくても助けがやってくるくらいに。無口だけどね。彼は最後の最後まで自分が去るこの部署の心配をしてくれていた。


 現上司はどちらかというと環境には甘えるけれど、積極的に人に頼るのが苦手な内気なタイプ。そもそもね、上が無能だからこんな人事なるわけだよ。クソ使えないwww

 流石の俺も同情したよ。本人が行けないんじゃしょうがないと思って、さらに上に相談に行った。

 そしたら俺の判断は妥当だと言われた。相談すべき相手を間違えていないという意味でね。

 上司が変わるたびに新しい仕事と任務が増える。困ったものだね。

 けれども言いたいことはそこではなく、彼が変わったから俺も手を貸すべきだと感じた。これは別に自然とそうなったわけだよ。

「いままでやる気なかったじゃん」

 とはならないの。


「上司に相談したらどうです? ダメなら直属の上司に」 

 と助言したら、

「言ったんだけど……」

 と泣いてしまって。

 何故、ここで泣くのか? 


 たぶんこういった状況で人が泣く時って、頑張ったあげく誰も助けてくれなくれて、そこに突然の援軍が来たからなんだろうなと思う。

 そう感じるのは自分の経験が元。

 あるゲームをやっていた時、敵が強くて「こんなの無理ゲーだよ!」と全滅しかけた辺りで突然第三勢力が来て「なんだ?」と思ったら援軍で、形勢逆転するという演出があったんだよ。俺は感動したね。


 一番無関心で助けてくれないと思っていた相手が突然手を差し伸べてくれたら、そりゃ泣くよ。そんなわけで援軍を呼びに行きましたが。

 つまりだ。自分が変われば周りも変わるっていうのは、そういうことだと思うよ。

 その上司たちも、俺が必死に説明したからすぐに来てくれたわけだしね。

 何事だと。


 だからさ。

 刺々しく生きてはいけない。

 他人に優しく生きよう。

 優しくしたら、その相手ではなくても優しくされるから。

 それは巡り巡って自分が生きやすい環境になるからさ。

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