03:責任、取ってくれる?
「せ、責任!?」
「だ、だって、しちゃったんだよ⋯⋯?」
「た、たしかに⋯⋯エナジードレインしちゃいました⋯⋯」
「それに⋯⋯で、できちゃったら、大変だし⋯⋯」
「た、確かに⋯⋯」
二人は気付いていないが、実際ハグで子供が出来るなんてことはありえない。それを教えてくれる人はここにはいないのだが⋯⋯
「で、でもいきなり結婚なんて⋯⋯ボク達まだ名前しか知らないと言うか⋯⋯」
「そ、それは確かに⋯⋯」
それを言ってしまえば、そんな相手にハグをした事も問題なのだが、それを突っ込んでくれる人はやはりここにはいない。
「だ、だったらこれから知れば良いんだよ!」
「これから、ですか?」
「うん!だってお見合いだって最初は知らない相手なんだよ!私だって実家から何回もお見合いしろって言われたけど、知らない人と結婚なんて嫌だった」
「それだったらボクとも⋯⋯」
「でも、リンくんは違う!
今までお見合いした人は好みの見た目じゃなかったり、それに、私に対して気を使う人ばかりで、お互いに遠慮がちになっちゃって、逆に気が疲れると言うか!」
「⋯⋯それに、リンくんみたいに可愛いのに、ちょっと強引だったところとか、その、悪くなかったというか」
「お、おねーさん⋯⋯」
「リンくんはそんな、顔しか見てないような人だと嫌かな⋯⋯?」
「いいえ、そんな事ないです。
むしろボクはこの顔と好みのせいで揶揄われたりしてましたから。そんなボクでも受け入れてくれる人がいるんだって、嬉しかったんです」
「⋯⋯こ、言葉にされると恥ずかしいかも」
「ふふっ、照れてるおねーさんも可愛いですね」
「も、もう!」
そんなやり取りをしていると、私はふと大切なことを思い出した。
「あっ、いけない!」
「どうかしましたか?」
「水道とか電気の開通してもらうんだった!」
「えっ!?な、何時からですか!?」
「確か15時には来るって⋯⋯」
「まだ5分ありますよ!早く行かないとですよ!」
「う、うん!」
「せ、せっかくなのでボクも一緒に行っても⋯⋯良いですか?」
「うん!私のお家も紹介してあげる!」
こうして私はリンくんと一緒に家へと戻った。
♢
「ふぅ、間に合って良かった⋯⋯」
「着いた瞬間に人がいたから焦りましたね⋯⋯」
「とりあえずこれで電気も水道もガスも全部来たからちゃんと今日から住める!」
「これでちゃんとお隣さんになりましたね!」
「これで開通忘れてホテルになんてなったら恥ずかしかったよ」
「そ、そうなったらボクの家に来ても良かったんですよ?使ってないベッドくらいはありますし!」
「へー?そう言って、また私とハグする気なんでしょ?」
「⋯⋯そ、そんなことにゃいですよ!?」
「噛んでるから怪しい⋯⋯」
「だ、だって⋯⋯おねーさんとハグしてると、なんか安心出来るんですもん⋯⋯」
もじもじとしながらリンくんはそう言った。なんだこの子、可愛すぎか!?
「⋯⋯リンくん、とりあえずうちの中見てく?」
「そ、そうですね!」
顔を真っ赤にしているリンくんを連れて家の中に入る。すると、私は思わず玄関でリンくんに抱きついてしまった。
「お、おねーさん!?」
「リンくんはこうしたかったんだよね?」
「そ、それは、その⋯⋯」
「私だって恥ずかしいんだからね?」
「⋯⋯したかったです」
「少し寒い時期だからこうしてると暖かくて、気持ち良いよね」
「⋯⋯はい」
人前だと流石に出来ないけど、家の中なら良いよね?
「⋯⋯」
「⋯⋯」
お互いに無言のままハグをし続ける。
さっきとは違ってエナジードレインはされていないから、気持ちよさというのは無い。
ただ、自分の中が幸せで満たされるような、そんな不思議な感覚。
ずっと、こうしていたいと思えるくらい。
「おねーさん」
「どうしたの?」
「ボク、今凄く幸せなんです。
怖いくらいに」
「奇遇だね。私もなんか凄く幸せ」
「⋯⋯おねーさんもですか?」
「うん。リンくんとこうしてるから、かな?」
「⋯⋯ボクも同じ気持ちです」
そう思っていたら。
ピンポーンと、チャイムが鳴る音がした。
「「えっ?」」
二人で顔を見合わせて外の様子を見てみると、そこには私の親友であるうめちゃんがいた。
「ど、どどどどどどどうしよう!?!?」
「だ、誰ですか!?」
「わ、私の友達!」
「おねーさんの!?」
「り、リンくんのことなんて説明しよう!?」
「お、お隣さんって事でいいんじゃないですか!?」
「そ、そうだよね!?嘘は言ってないもんね!?」
一瞬で打ち合わせを終えると、私は玄関を開ける。
「う、うめちゃんいらっしゃい!」
「詩音ちゃんおじゃましまー⋯⋯えっ、この子誰?」
ですよねー!!!!!!
♢
作者の二兎凛です。
初回は3話更新ですが、ここから10万文字まではカクヨムコンの締切まで書けたら即投稿します!
間に合わせることは出来るのか!
多分無理!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます