第2話



「ありがとう。」


 微かに、声がする。


「君に会えて、よかった。」


 そんなこと言わないで。


「本当に、ありがとうございました。」


 まだ、会えるよね?




 +*+*+*+




 これは、夢だろうか。


 あなたの声がする。

 会いたい。会いたいよ。


 どこかに行ってしまうのに。

 まだ、あなたの声がする。


 まだ、会いたいよ。

 君が笑ってさ。




 +*+*+*+




「残り、一週間も生きられれば良いでしょう。」

  

 そう、告げたのは医師だった。

 ずっと、懸命に治療してくれた医師。


 彼に、秘密にできた一番の理由。



 もう、意味をなさないみたいだけど。



 窓の外の花は、ゆっくりと開き、しぼんでる。


 雨音も、叩きつける。


 少し、眩暈がした。



 +*+*+*+




 言わなきゃダメだなんて、とっくに知っている。


 どこかで、病気を話さないといけないってことも、知っている。


 それでも、やっぱり辛いの。



 +*+*+*+




 君の笑い声が、こだまする。


 くぐもって、はねるように。


 うるさい。

 そう、思ってしまった。


 助けてよ。この、私の影に光を差してよ。



 +*+*+*+



 腕に、あざが見える。

 少し、青くなったあざ。


 自然麻酔。痛みを伴わず死ぬためのものだ。


 これで、私が近く死ぬことがわかる。


 手に取るように、わかる。



 最後に、手紙を書こう。


 最期に。




 +*+*+*+


 00県00市 00区00町00-00

 日野 太陽様





 拝啓


 お手紙。拝読いたしました。


 あなたは、今。お元気でしょうか。


 無事、旅に出て目的地に着ければなと思います。


 一年後。また、会いに来ます。


 元気なあなたでなくとも、少しでも、お話ができればと思います。


 敬具


 00県00市 00区00町00-00


 日野 光留より

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