018. 連休明けの学校

 俺がショッピングモールへ行く道で葵と陸哉を見てから三日が経った。

 連休が終わり最初の登校だった。どんな顔をして教室に入ればいいのだろうと考えたら学校に行くことが嫌だった。でも姉ちゃんにそんな顔を見せられない。

 連休中に会ったことを話してしまったら何かいけないのではないかと思っている俺がいた。

 何故そう思っているのかは分からない。

 本当にどうすればいいのだろう。


 また連休前と同じように過ごさなければ葵と陸哉に気づかれてしまうだろう。

 二人はあの日俺が近くにいたことを知らないのだから俺は知らないフリをしなければならない。

 ちょっと俺には難しいかもしれないけど。


 武田の家で過ごしているはずが今日はマンションだった。

 いつものように変わらず姉ちゃんと俺の分の弁当を作り朝食の準備をした。

 武田の家ではいつもトーストとスープだったけれど今日はご飯と味噌汁にした。

 久しぶりの和食で朝食だ。

 好きな物を食べてテンションを上げないと学校へは行きにくい。

 姉ちゃんと顔を合わせ辛くて昨日までずっと俺の部屋に引き籠っていた。

 ご飯を食べて自分の分の食器をシンクに置いた。

 姉ちゃんの分は起きた時に自分でやってもらうように置き手紙を書いた。

 自分の部屋に戻って学校の鞄を持つ。

 玄関に行くついでに姉ちゃんの部屋の扉の前で止まり扉を叩く。


「姉ちゃん起きろよ。俺今日から学校だからもう行くよ」

「う、う~ん。わかった~」

「遅刻しても知らないからね」

「はい、は~い」

 姉ちゃんの返事を聞いてすぐに出た。

 マンションの外に出ると今日も俺の気持ちとは反対の青空が広がっていた。

 青空を見上げて俺は大きな溜息をいた。

 武田の家よりマンションの方が高校に近いから時間に余裕があったので青空を見てしまった。

 俺は学校に向かった。


「おはよう」

「おはよう」

 高校の門に近づいたら友だち同士で挨拶をしていた。

 知らない顔が多かった。上級生なのだろう。

 教室に向かう廊下で知らない顔から同じ学年の生徒になり同じクラスの生徒が増えた。


「おはよう!とーわ」

「真太郎か…おはよう」

「なんだよ、なんだよー。今日もまた更に暗くなってるなー。何かあったのか?俺でよければ相談にのるぞ?」

「あ、あぁ。そのうちにお願いするよ」

「まったくさぁー、なんで叶羽はいつも暗い顔ばかりしているよな…。というより叶羽が笑った顔とかあんまり見たことがない気がする。俺たちが知り合ってまだ一カ月ちょっとだから仕方ないか」

「そうか?」

 真太郎と話していてもやはり相談する気にはなれなかった。

 それが真太郎のことを決して信用していないとかではない。

 これ以上のことを聞いてくることはなかった。

 この後は連休中に何をしていたかを話した。


「席につけ―。出席確認するぞー」

 それぞれのグループで集まっていたが担任が教室に入ってきたのを見て席に着いた。


「よーし、全員いるな?うん。それじゃまずは来週はテストがあるテストの時間割と範囲は後ろの壁に貼っておくから確認するように。それから、来月には衣替えだが、その前段階で準備期間だ。上衣を脱いでもO.K.になるが男子はネクタイ、女子はリボン。夏服になるまでは必ず着用だ。忘れずにな。連絡は以上だ」

 先生は話し終えると教室内を見回して頷いた。


「じゃ、一限目の準備しろなー」

 教室から出て行こうとした先生は小学生か?と思えるようなことを言ってきた。

 確かに準備しないで友だちとおしゃべりを始めようとする人もいるだろうし、連休明けてすぐの登校だから仕方ないのかと思いつつ俺は周りを見ていた。


「叶羽、お前ってもともと変な奴だなと思っていたけど本当にわけわかんない奴だったんだ」

「えー、真太郎って俺のことそんな風に見てたのか」

「まぁまぁ、それは置いといて。連休前より連休後の叶羽の方が顔色悪いっていうか顔に表情なくなっているぞ?」

「いろいろとあったんだよ。単に姉ちゃんの仕事とかで俺も疲れているのかな」

 理由を言わなかった俺を真太郎は心配そうに見ていた。

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