017. 連休の後半も楽しみましょ?!
連休も残り三日となったところでやっと社長と私の仕事が終わって休みを過ごせる状態になった。
いつも寂しい思いをさせていた叶羽に今更だけどたくさん甘えさせてあげたいと思った。
小学五年生になると授業で家庭科が増えた時に家でも基本的なことができるようにしてきたこともあって普通の小学生、中学生よりも子どもらしくない子どもだった。
感情が表にうまく出せないのか殆んど反抗することがなかった。
もともと武田の家に居ることで邪魔者扱いされてきた。
叶羽は私がいない時間に虐げられていたことが多かったみたいで私もいろいろ考えた。
それが家に帰らず習い事をさせて私が迎えに行ってそこから一緒に帰るようにした。
その理由で塾に通うよりも習い事の方がいいだろうと思った。
そんな叶羽が黙って社長と私の近くを同じ目的地に向かっていると思っていたのに気づいたらいなくなっていた。
私は何があったのかは判らなかったからRYMEには冗談を入れて送った。
―叶羽~、どこ行っちゃったの~?―
―迷子の叶羽ちゃ~ん、連絡くれないと捜索あ~んど警察に連絡しちゃうよ?―
冷めた表情で叶羽はスマホの画面を見つめ溜息を
―ごめん、姉ちゃん。俺マンションに戻る―
その一言が返ってきた。
いつもの叶羽の返信じゃなかった。
―えー?なんで~―
―何も話したくない…じゃ―
大抵のことだったら女である私でも話してくれるのに今日の出来事は何も言ってくれなかった。
「どうしよ~、叶羽の様子がおかしいの」
「ん?何があった?」
「それがわからないの」
「わからないって…」
「今RYMEで叶羽に話を聞こうとしたら言いたくないってマンション戻っちゃったみたい」
叶羽はあまり自分のことを話したがらないけれど聞けば話してくれていた。
それが一切“話したくない”と言って一番身近にいたはずの私まで拒絶されてしまった。
「ショッピングモールに行こうとした道の途中で叶羽が何かを見たんだろう。もしかしたら今ショッピングモール周辺に叶羽の知り合いがいないか
私が不安になっているのが社長に解ったみたいで私とマンションに戻ってくれた。
歩き回るつもりでマンションから出たのでスニーカーだったことが良かったらしく、すぐに部屋に戻ることができた。
鍵を開けて中に入ると玄関には叶羽の靴が乱雑に置かれていた。
いつもの叶羽であればこんな脱ぎ方はしない。
私は靴を脱ぎバタバタと叶羽の部屋の前まで行った。
「叶羽~、いるの~?ねぇ、どうしたの」
扉の前で叶羽に話しかけてみたけれど何も反応はなかった。
社長からも話しかけてくれたけれどやっぱり反応はなかった。
先刻、リビングに入ってきた時に何かがぶつかる音だけが部屋の中からしてきた。
それだって叶羽らしからぬ音だったので余計に心配になってしまった。
突然こんなことになってしまって私自身が不甲斐ないと思った。
私一人だったら何もできなくてそのまま叶羽と話せなくなってしまうのかもと考えた。
社長がいろいろと手助けしてくれているだけでも違っていたのだと思う。
どこかで叶羽がどんな状況になっているのかが判れば打開できるのかもしれない。
ただ今の状況が私たちにいい方に行くか悪い方に行くかはわからない。
でもしばらくは静かに見守っているしかないのかもしれない。
今は情報がほとんどないから怜士くんと奈月さんからの情報が集まるまでは待っている方がいいと判断したらしく社長から宥められた。
これ以上は叶羽から話してくれないとどうにもならない。
叶羽からが生まれてから一年は母さんから育児について教えてもらうことができたけれど、父さんと母さんが交通事故で亡くなってからは何もわからない私は保育園の先生に相談したり図書館で育児書を読んだりした。
なかなか本に書いてある通りにはならないことが多かった。
それでもここまでこれたのは無表情な叶羽が偶に私の前で見せてくれる少し緩んだ顔がすごく好きだった。
笑った顔はやっぱりあの人に似ている。
私はそんな叶羽の顔を見たい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます