第22話
その頃彼女の妹は里下がりした讃岐邸で二番目の子どもを産んだ。彼女は身も心もぼろぼろになって、帳台のなかで死んだように眠っている。屋敷には次々に贈り物が届けられ、贈られた品をあれやこれやと彼女の母親が見せに来てくれるがそれに対応する気力もない。春宮からはまた、どんどんと手紙が届く。早くこどもの顔が見たい、でもそれよりももっとあなたのことが恋しいよ、はやく良くなって僕の元へ戻ってきてください、云々。
彼女はまいにち茵の中で、歯を噛みながら泣いている。こどもは可愛い。かもしれない。産褥で死んでしまわなくてよかった。女房たちが言う。男御子をふたりもご出産遊ばされるなど、これはほとんど奇跡だ、常人では、並の女では成し遂げられるようなものではない、やはり姫様は特別な、前世から決められていた特別な御方だったのだ、云々。彼女は今、その地位、その美貌、その仕事、どれをとってもすべてが素晴らしい。それにもかかわらず、この悔しさは何だ? この、肉体すべてを食いちぎりたくなるような苦痛と憤怒は……
お姉さん、あたしがこれほど苦しんでいるというのに、肝心のあなたは、今一体どこで何をしているの?
その頃の彼女の姉は、まったく血気盛んという様子を遺憾なく発揮して、坊主にばりばり手紙を書き送っている。
「まあ、こんなに立派になって!」
彼から掛けられたその言葉が忘れられず、そしてその言葉に恥じないように、覚えたての知識を披露して何だかんだと手紙を書き立てているが、彼女のそういった好奇心を肯定し、さらにくすぐるような返信を、彼が書き送ってくるのだから始末に負えない。彼女の中の何らかの感情は益々増大し、それを他ならぬ彼が認め、その循環は全く清く行われ続けてしまう。「僕が仏典を読み進めていてずっと疑問だったのは、なぜ女性はブッダには成れず、汚れた存在として捨て置かれているのか、というものです。もちろん、変成男子という考え方は、あるでしょう。そこで書かれているものを肯定的に見れば、男か、女かというのは実はあまり関係がなく、いわゆる「仏性」があるものは報われるし、それがなければ報われないのだと、であるからして仏性さえその人の中に見つけられれば男でも女でもブッダになれる。そしてその仏性を持つもののことを(その対象の本来の性別はどうあれ)男と呼び、そうでないものは(その対象の性別はどうあれ)女と呼ぶ、と。僕などは、いちいち工夫をこらしてご苦労なことですともおもってしまうが……しかしやはり、こんなものは欺瞞に過ぎませんね。ですから、僕と工房が今回試みたのは、そういう女の子が出てくるお話をつくることでした。もっとも、僕だけの案ではなく、みんなと協力して作ったんです。少しでも、主人公の女の子が魅力的に映るようであればいいですけど」
さて、ここで話題に上っている『変成男子』とは何としたものか?
つまり、女も男性という”レヴェル”の高いものに変身すれば、ブッダになれると。これは性転換をして男に変身しろとか意味ではなく、性別はそのまま、外側はそのまま、内面は男心を倣うという意味らしい。いつの時代も、自身よりも小さきものが自身以上の地位や名誉を得てしまうのを不快としてしまう人達がいる。何故このようなことが起こるか? それは、別の性を区別する”彼ら”もまた、小さきものであるからだ。
俺など、実は小虫のようなものだ。しかしそれは実のところではないとして、その小虫の身に様々な衣を着せて、それ以上のものに見せかけている、いじましい生き物たち、そのような者たちは精々着ぶくれして、小さきものたちよりも満ち足りたものとして堂々としているが、しかしそのようなところに、着の身着のままの小さきものたちが、彼らと同じ衣を着ると言い出したら?
俺たちは上等な服を着ている。それゆえにお前たちよりかはよっぽど立派なみのうえだ。その証拠に、おれの身はこれほど綺羅びやかだが、お前の着ている着物というのはみにくく汚れ果てているではないか? しかし、そのような服を着た生き物が、ひとたび彼らと同じような綺羅びやかな着物を着るなら、その差というものが分からなくなるだろう。並び立ったその二人は、まったくもってそっくりの人間同士だから。
しかし彼はおもう。その優位な美しさ、上等さは俺だけに与えられていたものだったのに。違いがなければ人は人を見分けることなど出来ない。谷山浩子が叫ぶ!「だぁってみんなおんなじじゃない!」(谷山浩子『そっくり人形展覧会』!)
彼らにはそれが耐えられない。このおれだけの、おれたちだけの上等な着物。それを着ていたから、その他の小さきものたちはその衣装の豪華さの元に跪いた。でも、その跪いたものたちが、その膝の先にあるものと自身を全く同じものだと気づくようなことがあったら? 同じ小さきもの、ただその身に余分な衣を付けているかいないかの違いが、しかしひとたびその重い着物を脱いでしまったら……
すべての生き物は小さきものであるというのを認められない、差異ばかりを気にしている。それを認められないものは、あらゆる道具を、あらゆる理屈、へりくつをこれでもかと使用して、小さいものと大きいものを区別しようとする。自身が小さきものだと実はこっそり自覚しているものは、そうやってへりくつで定められたものを見て安堵する。「おれは本来くだらなくつまらないものだがしかし、経典にもあるように”仏性”はある。なぜならここに書いてあるじゃないか。
『若人不知是仏性者、則無男相。所以者何。不能自知有仏性故。若有不能知仏性者、我説是等名為女人。若能自知有仏性者。我説是人為丈夫相。若有女人能知自身定有仏性。当知是即為男子』
(もし仏性を知らない人がいたら、その人には男性の特徴がない。理由は彼は自ら仏性があることを知見できないからである。
もし仏性を知見できない人がいたら、わたしはその人を女性と呼ぶ。
もし自分に仏性があるとはっきり知見できたなら、この人は丈夫の特徴を持つ者と云う。
もし女性が自分に仏性があると知見したら、これはすなわち男性になったと云ってよい。(如来性品第四の
私の身は女ではあるが、そのなかには”男性”としての特色を理解できる頭がある。だから世の男性よ、女でもありしかし男である私を、あなたたちの仲間に入れてください。こうしてみていけば、世の中に”父の娘”、”名誉男性”となどいう言葉が生まれ育つ理由も分かるというものだが、しかしこの文章をよく注意して見ていくと、仏性を持たない男というものには男性の特徴がそもそも無い。つまり、男という性別であるというだけでぼんやりしているのでは仏性を得られない(ブッダなれない、解脱できない)としているのだから、ただ男でいるだけで(というより生命として存在しているだけで)大威張りになれるというものでもないというのは見て分かるとおりであり、ここで大切なのは「仏性」であり「男である」というのはその要素に過ぎない……というのもやはり巧妙な仕掛けなのかもしれない……が、ここは措く)。
つまり、仏性のない男というものも存在する。そういうのは「女の腐ったようなやつ」である。男ではないと。
仏性のある女というのもまた存在する。そういうのは「女にしておくにはもったいないやつ」であると。女ではないのだと。
結局、その人の性が男であれ女であれなんであれ、「良い」人は「男のよう」で、「悪い」方は「女のよう」なのだった。あの女は馬鹿だから嫌いだ。これは女性差別とかじゃなくて、俺は馬鹿が嫌いなの。馬鹿がでかい顔して馬鹿みたいな自己主張をして、それが当然の権利みたいに(ほんとうはそんなのわがままに過ぎないって場合もあるのに)通っちゃうってことが我慢ならないの! だから”馬鹿”な男だって、俺は嫌いだよ。だってそういう男って、すごく「女みたい」だからね。
彼らの中には、そのようにこじつけなければ、その性を安心して謳歌できないという悲しい業を背負っている者もいるのだった(これを被害者的である、としても良いが、しかし……)。
で、今回の絵合わせのために作った絵巻物で、彼女はそのように決められた規則に従って自身を男とすることを決めた、ひとりの女性についての巻物をしたためたのだった。
その絵巻物の写本を彼女受け取ったその僧侶からは、後日丁寧な礼状とともに肯定的な言葉の数々が沢山届いた。彼女はそれらに謙遜しつつも勝手に彼女の中で師匠筋としている男から褒められて嬉しかったが、しかし肝心の新作の絵巻物の世間一般での評判はあまり芳しくはないようだった。
「まあどうなんですかね。よく分かりませんが」
「良く言えば自己満足。悪く言えば退屈、不快」
「それ、良く言ってますか?」
「変成男子などという下らない理屈付に簡単に与した下らない女が……」
「おっとお、剣呑、剣呑」
ばたばたと扇子を動かす。「それに比べてやはり梨壺サロンのものはさすがは東宮妃であらせられるというべきか、面目躍如の結果でございましたな」
「いじらしくてね。夢の中で想い人に逢う」
「しとやかで、芯があって、しかし、母性というんですか、そういうものもありながら、一途にひとりの男だけを頼みにしてね」
「そうですね。われわれの見たいものというものは、そういうものになってしまうというかな。結局、様々に趣向を凝らしてみたところで、男の求めるものなんて古来から決まってしまっているんですよね。それを、変にいじくり回さず、そのまま提示してくれることの有り難さに泣けてくるといいますか」
「分かるな、それ。素材の良いものはそのまま余計な調味料をつけずにそのまま食べるのが一番美味というかね」
「こせこせ、余計なことを考えず、うつくしいものをうつくしいままで提示してみせる。たったそれだけのことですが、なかなか難しいようですね」
「しかし、結局絵巻物は絵巻物です」
紳士は優雅に扇を扇ぐ。「所詮は女子供のなぐさみもの。そういうものに、いちいち、こうして大の大人が侃々諤々やりあっているほうが、間違いなのですから」
「まあそれはそうですが」もう一方の紳士はそれに同意して見せつつも、「しかし、すでにして、絵巻物というのは従来の考え方よりも遥かに高度なものになりつつあるというのも本当のところだとおもいますよ。語るに値する、というよりも、もはやそれについて話すことが一種の快楽になりつつあるんだな」
「それがおかしいと言うのです」紳士は不愉快そうに眉根を寄せ、「本当に、すべてのものというのは一度快楽を知ったら、分かりやすい方、分かりやすい方へと流れていきますね。絵があって、色があって、墨の流れがあって、文字があり、意味がある。ここまで想像力のお爨どんをしてあげなければ、もう人というのは物事に対して感想を持つことすらできなくなってしまった」
「ははあ」紳士はいくらか感心したように顎を撫で、「なるほどね。こちらであちらの貧弱な想像力を補ってあげてしまっているわけだ」
「それだけならばいいですけどね」紳士は苛立たしげに、「補っていったものこそが最上なものだと勘違いを始める……こっちのほうがよっぽど本物らしい、現実に近づいている、とね。そして漢詩や和歌や歴史書を、想像力の及ばないものとして箱の中に閉じ込めてしまう。それで、分かりやすく快楽を提供するものばかりに掛かりきりになる。その証拠に、最近の情勢はどうですか。どこの家でも歌会を催していたものが、それぞれが下手な絵巻物を持ち寄って、絵合わせなどを。それを、名のある公達たちが、年甲斐もなく喧々囂々たるありさまでやりあっているのですからね。僕などは、とてもじゃないけど……」
「価値基準がおかしくなっていますね。何が一番に優先されるべきものか格上とされているのか。時代が違ってきているのかもしれませんが」
「幼稚化、低俗化に過ぎませんよ。このような……何も考えちゃいないんだ」
「ああ、危ないなあ」紳士は声を潜めて、「穏便に、抑えめにお願いしますよ。どこで誰が聞き耳を立てているのだかわからないのだから」
「あの男が来てから何もかもがおかしくなった。お主上はどうなされたのだろう。物狂いのように……おなり遊ばされて……」
「ああ、それは駄目だ。それを言っちゃあお終いですよ」
などと…………
とにかく噂が全体を支配するような世の中だ。人の口に戸は立てられない。壁に耳あり障子に目あり。というわけで深夜の宿直所での、二人のそうした会話も誰かがどこかで聞き耳を立てていたに違いがない。その証拠に、その不適切な発言をした公達は次の日から人に会うたびにヒソヒソコソコソと噂を立てられ、出仕しづらくなった彼らは、その日より忌籠りと称してしばらく宮中に出てこなくなった……らしい。
「やはり、女の身でこのような言葉の集合体に構いつける事自体を避けるべきだったのかもしれません」夜居の僧として出仕してきている彼を相手にしている彼女に対し、僧は篤い同情を込めた声で言った。「誰かがあなたの何かをぶえんりょに阻んだり、価値をぶつけてきたり、断罪しようとしていると感じるのならば、そんなものの相手をするのは止めてしまいなさいよ。あなたもそういった人の”正しさ”に正されてやるべきではない。それらに対する無理な書き換えなども面倒です。そもそもがこじつけ、無理矢理に様々な無理矢理な設定を「正史」として扱ってやる必要なんて無いじゃないですか。放っておけばいいんですよ。相手をしないことです。つまり……」僧は視線を落として言った。「むりやり穴から蛇を引っ張り出して、自身の身にその牙を食い込ませなくても良いということです」
しかし、そう言われても彼女は「なるほどもう余計なことで頭を悩ませなくても良いのだ」とはならず、ただまったく混乱してしまった。
だってそうだろう、彼女の今現在の全ては、「なぜ?」という、すべてのものに対する疑問から始まっているのだ。呼吸をするのはなぜか? それを繰り返さなければならないのはなぜか? なぜそれを一時的にでも止めると苦しくなるのか? その”なぜ”に、それらしい答えを用意してくれたのが彼だった。それによって、彼女は知ることの快楽というものを知った。それにもかかわらず、その”知る”という快楽に溺れるうちに、彼女は”知る”ということについてのやっかいさに付きまとわれることになった。つまり、何らかの疑問に対する何らかの”答え”というものは、それを不思議がる疑問者が考え出し回答したものではなく、他ならぬ「回答者」が考え出し提出したものであるという、”答え”というものそのものが持つ、圧倒的な他者性についてだ。
疑問者である「彼女」の中には、疑問そのものに対する答えはない。答えがないから、彼女はその不思議なもの(まだ回答を見つけられない物)について、疑問を持ったのだ。
手のひらの上に一つのりんごがある。しかしそれを持つものには、それが一体食べ物であるのか、何のために存在するのかが分からない。だから他者からの認証が求められる。これは何か? それに対して、回答を持つ他者は、だから答えて言う、「それは食べ物で、りんごだよ。齧って食べると美味しいよ」
その時になってようやく、疑問を晴らした疑問者はその疑問に対する回答者足る資格を得るようになり、また新しい疑問者が「りんご」についての疑問を”他者”から投げかけられた時、”他者”である回答者であるところの元疑問者としての彼女は、こうやって回答してやることが出来る。「それは食べ物で、りんごだよ。齧って食べると美味しいよ」……
彼女にとって知るというのはそういう循環の連続だったのだ。
ところが、それを教えてくれた他ならぬ彼が、そのようなことはもう止してしまえと言う。りんごであるはずのものをりんごであると他者によって決められ、それを共通認識としてしまったことによって得られたもの以上に、それに伴って生じた苦痛、つまり「りんごであるはずのもの」を、絶対的に「りんごである」と一つのものに定めてしまわなければいけなくなるという窮屈な認識、他者に”正解”を「押し付けられた」ことによって、その正解のみで世界を見なくてはならなくなってしまったということ……もはやそれを正解としてしまえば、彼女は「何だかよく分からなかったもの」を「りんご」という言葉以外の認識では見ることができなくなってしまった。もはや「りんごはりんごである」。りんごはみかんでもトマトでもきゅうりでもりすでもクマでもないのだった。なぜなら他者が、「それはりんごはみかんでもトマトでもきゅうりでもりすでもクマでもなくてりんごだよ」と言うからである。
僧はそんなことを気にするのは止めてしまえと言った。先人が決めたものを正しいものとして、それを前提として自分のえらびやすい何かを新しく作り出す必要などないと。
それならば知識とは何なのか? 他者との共通認識のすり合わせとは何だったのか? 今まで、私が求めてきたこと、手に入れたいと願ってきた先人の知恵の一つひとつ……それらはただ単に、他人が勝手に決めたことに自分は当てはまっていないとメソメソし、自身という体をひとつの箱のなかに押し込めることが難しいとして、そこから飛び出し足りなかったりする手足をどうちょん切ったり伸ばしたりするかというような無駄な動作に過ぎなかったとでもいうのだろうか? このように、彼女は今までに信じてきたものを、その信じることのきっかけになった張本人にくるりとひっくり返されてしまったかのような錯覚に陥って、まったく混乱してしまった。
「仏教というものは総合的に見れば矛盾したもの、その様々な教えはあみだくじのようなものです。自分の性分にあったものをそのあみだくじの中からえらびとれば良い。個人が既存の思想にまず自身を沿わせ、既存の思想に個人が合わなければ、その個人がより良いとおもう思想を各人で勝手に作っていけば良い。そうやって仏教というものは大きく広がっていった……だからあなたの言うように、たった一つの思考について我が身をむりやり当てはめようとすることは、それらの教えに反しているのですよ。もっとも、それを”個人の”最善とするのなら、誰もそれを咎め立てる権利などはないわけです」
「しかし私はあなたに縛ってほしいのです! 私のことを縫い止めてほしい、そのために今までお話してきました……」
結局……
結局、彼女という生き物は、その考えを真とするものからの、ああしなさいこうしなさいという束縛を得られないですねている、自らその足首に鎖をはめられたがっている奴隷志願者に過ぎないのだろうか?
しかし、彼はキリストではない。日蓮でも親鸞でもなかった。だから彼女に、ああしろこうしろ、あれするなこれするなとは言わなかった。
それを信じる者は救われ、信じないものは地獄に落ちる。
それほどの安寧を、ただ一方を信じさえすればすべてがむくわれるかのような錯覚を与えてくれるものを求めることに、大した理由があるわけでもない……
人には大きな口を叩いても、高尚な思想を持っている素振りをいくら見せたとしても、そしてそれがある一定の他人にはよく作用し、実物以上のものとして仰ぎ見られるようなことがあっても、結局個人は個人でしかない。その内部には個人なりの欺瞞やごまかし、こじつけ、矛盾、隠し立て、その他様々な雑物が混じって当然ではある、しかし彼女は、奴隷志願の彼女は、彼女が信物とするその他人の中には、そうした夾雑物が一切無いと”信じた”。
だから彼女の言葉を聞いた彼は、苦々しく微笑した。「あなたは困った人ですね」
彼女は僧を睨んだ。多少の沈黙ののち、僧は答えた。「みんなそれぞれが自身の都合の良いように現実の方での認識をねじまげて、好き勝手言ってそれを正解だ正解だと騒いでいるだけなんですから、それらを丸ごとすべて真実と捉えて深刻にならず、話半分に聞いていればいいというだけの話ですよ」と、彼は結局深刻な彼女の心配を、ごく軽いものとして扱ってしまったので、その場での思考はそれ以上深まらず、そのままになった。
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