シンイチの2夜目 引きこもりで何が悪い?

「なんでまたなんだろ・・・?」

 僕は本当に情けない奴だ。学校になんていけなくなってしまったんだ。なんでだっけ・・・?・・・そうだ、あの出来事が起こってからなんだ。

           ~三か月前~

 クラスメートA 「おいシン、また調子こいてるだろ?!」

 シンイチ    「なんのこと?」

 クラスメートB 「とぼけてんじゃねーよ、バーカ!」

 クラスメートC 「お前、テストの点数がよくて、女子たちからちやほやされてるじゃねーか!」

 クラスメートA 「俺が告白したあいつにも振られたんだ!お前、頭がいいからって調子のんじゃねー!」

 シンイチ    「・・・で?君たち、テストの点数が悪いから僕にひがんでんの?ひがんでる暇があるんだったら、まじめに勉強しろよ。」

 実は僕のクラスで問題児なこの四人カルテット。こいつら、テストの点数が悪いってひがんできてたくせに、授業クラスでまじめに勉強している姿は一度たりとも見たことがない。こいつらは大抵、授業は寝てる、宿題ホームワークをちゃんとやってない、そもそも、先生ティーチャーへの態度が大問題だ。よくまぁ、それで先生におべっか使ってるよなと正直思う。そして、僕へのいじめはさらにエスカレートしていった。

 僕の筆箱を勝手に盗られるし、うち履きに画びょうを仕込ませられたし、風邪で休んだ時なんか、僕の机いっぱいに

「このがり勉、メガネクズ! バーカ! アーホ! いっそのこと消えちまえ!」

 なんてことが書かれたのだ。あの日以来、僕は「不登校」となりみんなからは心配の手紙が送られてくる。そして因縁のあの四人からもあの日とは別人の仮面をかぶった如く、きれいごとばかりしか書かれてない。手紙をもらうことはもちろんうれしい反面、やっぱりあの生き地獄に誘ってくるようで怖い・・・そして昨日、僕は生き地獄から解放されたいと願ったからなのか、「心のコンパ」の招待状を受け取ったのだ。案外とみんな優しかったから、学校とはまた違う別の居場所ができて肩の荷が抜けたような気がした。

「今日も『心のコンパ』行こうかな・・・」

                  ☾

 僕は今日もベッドに潜って小さな鈴を鳴らした。すると、やっぱり昨日と同じようなドアが出てきてそれを開けると、「心のコンパ」へと通じた。僕はスタッフからの説明で着替え室に行ってみたが僕、そんなにパジャマ姿は恥ずかしくないのでそのままにした。

 そしてスタッフから

 スタッフ 「それではシンイチさま、今回は『前回のグループ』がよろしいですか?それとも『ランダム』がよろしいですか?」

 シンイチ 「どうしようかな・・・?でもできるだけ顔見知りのほうがいいな・・・決めた。『お気に入り』からテオとナズナ、そしてホランで。」

 スタッフ 「承知いたしました。それでは2号室へどうぞ」

 僕は言われた通り、2号室へと向かった。すると、

 ホラン  「お、シンイチじゃ~ん!」

 テオ   「シンイチ、なんか気分悪そうだね。」

 ナズナ  「どうしたの・・・?」

 僕の顔を見て心配してくれてなんかうれしくなった。僕はあの日のことを言ってもいいかもしれないと思った。僕はあの日の出来事を人前で言うのが怖いんだ。僕は一回、不登校の理由を探ろうと心理カウンセラーの人が家に来てくれたが、結局僕は何も言えずにそっぽを向け続けて、呆れて帰って行っちゃった・・・

 シンイチ 「実は、僕、不登校なんだ・・・」

 ホラン  「・・・そうだったんだ・・・」

 テオ   「どうして学校に行けなくなったの?」

 ナズナ  「理由、話せる・・・?無理に言わなくてもいいんだよ。」

 シンイチ 「いいや、ここで話さなかったら一生後悔すると思う。学校に行ってたころ、僕は学年きっての優等生だった僕は3か月前、不良の4人から『点数をかなり稼いでるからっていい気になるんじゃねぇ!』って言われて、あの日は何とか耐えられた。だけど、だんだん僕へのいじめはエスカレートしていったんだ。僕の筆箱をすきを狙っては盗っていくし、僕のうち履きの中に画びょうを仕込まれて。挙句の果てに僕が風邪で休んでるときなんか、病み上がりだって言うのに『がり勉メガネクズ』とか、『消えちまえ』なんて僕の机いっぱいに書かれてた。本当にどっちがクズだよって話だよ。・・・ごめん、何か暗い話しちゃったね・・・」

 ホラン  「そうか・・・辛かったね・・・」

 テオ   「いじめられてて、ずっと言えなかったのは嫌だったよね・・・」

 ナズナ  「私たちに吐けて落ち着いた?」

 シンイチ 「・・・うん。ありがとう。だいぶ落ち着いた。ありがとう。」

 ホラン  「うん。なら良かったよ。」

 ナズナ  「私たちにはそれしかできないし・・・」

 テオ   「それで解決かな?」

 シンイチ 「うん!本当にこんなくだらない話つき合わせちゃってごめんね・・・」

 テオ   「別に謝ることじゃないよ。なんで日本人ってすぐに謝っちゃうの?自分に原因があるわけでもないのにさ。」

 シンイチ 「多分、お国柄だからだと思う。日本っていうのは言い過ぎかもしれないけど、相手の機嫌を伺いがちな文化だから。例えば、近年『多様性』って言うくせにジェンダーギャップ指数が先進国なのに、日本は他の先進国より少ないんだ。つまり、社会の当たり前が自分の考えを押し付けているようなことなんだ。」

 ホラン  「『ジェンダーギャップ指数』って?」

 ナズナ  「簡単に言えば、ジェンダー平等がちゃんとできてるかってことを数値化してグラフ化した値のことなの。」

 ホラン  「へぇ~」

 テオ   「なるほど・・・参考になったよ!ありがとう!」

 そう話していくと鐘が鳴った。もう帰らなくちゃ。お別れは寂しいけど、また会えることを信じるしかないね。

「今日はありがとう!」

 大きな感謝を言葉につめて僕は大きなドアを開けた。

                 ☼

 ・・・うぅ~ん、よく寝たな・・・やっぱり人に話すのって気持ちいいな・・・また夢の中で会いたいな・・・

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