第3話 新・友達

 雫ちゃんは摩色と同じクラスらしく、1年生の教室がある階まで3人で向かうとそのまま別れた。


 とりあえず摩色は最初から友達関係に困ることは無いだろう。すぐに友達が出来るキャラであるものの、一日目から心を許せる相手が同じクラスにいるのは安心出来る。


 俺は2人が無事教室に入ったのを確認してから2つ隣にある三組の教室に入った。


 教室には約30個程の机が並べられており、10人くらいが席に座っている。今のところ、クラスにいるクラスメイトたちは大人しそうな人が多い気がする。


 黙って本を読んでいる女子や、スマホをいじっているメガネくん。ただぼーっと、黒板の方を見つめている人もいれば、机に突っ伏して眠っている人もいる。


 あのラノベを読んでいる女の子とは仲良くなれそうだな。俺もラノベ好きだし、共通の話題で盛り上がれるかもしれない。


 まだ集合時間まで少し時間あるし、せっかくのチャンスだ。彼女に話しかけてみよう。


 俺は自分の席を確認し荷物を下ろすと、胸をなで下ろしながら彼女の元へと足を運んだ。


 よく見れば彼女は両耳にイヤホンをしており、他者を寄せ付けない雰囲気を纏っている。


 ま、俺はそんなこと気にしないんだけどな。きっと一日目だし恥ずかしがっているんだろう。


 キモがられなければ良いんだけど。


「あの、すみません」


「……」


 反応は無い。そりゃそうだ、彼女はイヤホンをしているのだから。


 机をちょんと叩いて彼女の反応を見てみる。


「ん?」


 良かった、気づいてくれたようだ。


 彼女はイヤホンを外すと怪訝そうな目で俺を見つめた。

 まあ初対面の人、それも男から話しかけられたら怪しがるに決まってるよな。


「なんですか突然?」


「何か面白そうな本読んでるなって思って」


 彼女が呼んでいる本はオタク界隈に知らない人はいないと言われている有名作品の最新巻のようだ。


 俺もその作品は好きだから、既に読んでしまっている。


「はぁ?」


 何故か彼女は機嫌が悪いらしい。そうか、読書の途中に話しかけられたらウザイのも当然か。


 無神経だったな。


「ごめん、無神経だったのは謝る。でもその本、俺も好きな作品だったからさ。同じの読んでる人いて嬉しくなっちゃって」


「あなたもこれ読んでるのですか?」


「もちろん!これは読んでないと損だよね」


「……」


 彼女は俺のことを見定めるように見つめて……しばらくしてため息をついた。


「その意見には同意です。あなた、あまり本とか好きそうな感じじゃないですけど、案外興味あるのですね」


「それいうなら君の方がぽくないと俺は思うけどな」


「そう?」


「うん。偏見だけど君はめっちゃ一軍にいそう」


 率直に言うが彼女はとても可愛らしい容姿をしている。摩色や雫ちゃんとはベクトルの違う可愛さ。


 さぞかし中学生の頃はモテていたのではないだろうか。


「それは気のせいですね。それと君って呼び方やめてもらえますか?私は藍村 奏。苗字でも名前でもいいから君って呼び方はやめてください」


「ああ、ごめん。じゃあ、奏」


「名前選ぶんですね。図々しい人」


「やっぱ仲良くなりたい人は名前で呼んだ方がいいだろ?俺中学の頃はさ、周りにオタクいなかったから同士発見して興奮してんだよ」


「仲良くなりたい、ですか……分かりました。友達になりましょう」


「ありがとう!これからよろしく!」


 あの間はなんだろう。何を考えていたのだろう。


「ちなみに貴方は誰なんですか?」


「え?」


 誰って言われても俺は俺だ。


「あ、すみません。言い方を間違えました。名前を聞きたかったんです」


 なんだ、そういう事か。何か怒られてしまったかと思った。


「ごめん。名乗ってなかったね。俺は羽馬 色那。色那って呼んでくれたら嬉しい」


「わかりました色那さん。改めてこれからよろしくお願いしますね」

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小学生の頃大好きだった幼馴染に黙って引越したことを後悔していた俺。高校になって奇跡的な再会を果たしたけど彼女の態度がキレ甘で戸惑う minachi.湊近 @kaerubo3452

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