第1話 制服

 今日から俺も高校生になる。実家から比較的近いところにある進学校でもなく、だからといって底辺校でもない普通の高校に進学した。


 俺は高校生になった今日をもって色々と変わっていきたいと思っている。まずは恋愛面についてである。


 俺は中学を卒業するまで昔の恋に固執していた。小学生の頃に黙って彼女の元を去ってしまったこと。


 その事がずっと胸の奥に刺さり続けて、新たな恋へと進むことが出来なかった。

 もしまた彼女と出会うことが出来たのであれば、その時は必死こいて謝ろうと思う。


 俺も高校生になったのだ。正直に言えば未練なんてタラタラである。


「でもずっとそんなことばっかり言ってられないよな」


「突然何を言ってるの?兄さん」


「あ、ごめん。口に出てたか」


 双子の妹である摩色。俺の双子の妹でこの度俺と同じ高校に進学した女の子だ。


「そういえば摩色ってなんで俺と同じ高校にしたんだ?お前ならもっと上に行けたろうに」


 摩色は俺と比べて優秀だ。学力面では1年次から常に学年上位にランクインしていたし、スポーツでも全国大会に出場していた。


「そ、そんなこと兄さんにはどうでもいいでしょ」


 一応お前の兄なんだから教えてくれてもいいじゃないか、とは口には出さないが秘密にする必要はあったのだろうか。


 優秀な摩色のことだ。きっとあの高校に行くことに何か理由があるのだろう。

 俺はただ近いってだけで選んだのに流石は摩色である。


「まあ頑張れよ。兄さんは陰ながら応援してるからさ」


「うん。…ほんっとこいつ鈍感…」


「ん?なんか言ったか?」


「何も」


「そうか。なら準備してまたリビング集合だな。一緒に登校するだろ?」


「うん、遅れないでね」


「分かってるって」


 それから俺は朝食を済ませると新調した制服に衣替えした。


「我ながら悪くないんじゃないか?」


 鏡を見ながらそういった俺は今の自分に姿に満足していた。

 俺と摩色の通う高校の制服は男女共にブレザーを採用していて結構オシャレで人気だ。


「兄さん結構似合ってるじゃん」


 摩色も姿を確認しに来たのだろう。洗面所に入ってきてまず俺の姿を褒めてくれた。


「ありがとう。摩色も似合ってるぞ」


 男女で制服の色自体はほとんど変わらないがやはり女子の制服は男子のものと比べて可愛くデザインされている。


 摩色に直接言ったことは無いが、彼女の容姿は俺と違って凄く整っている。彼女自身は自覚していないようだが、中学の頃なら色々な男子に妹さんを紹介してくれと言われたものだ。


 念の為全てお断りしていた訳だが…摩色も高校生になるのだし、もし次にその話を持ちかけられたら取り持ってやるとしよう。


 迷惑だろうか。


「兄さん、時間だから行こ?」


「そうだな。行くか」

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